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黄泉の森の魔女 作者:もちもちみたらし
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1話

気がついたら森にいた。

鈴木(すずき) (こよみ)には玄関のドアを開けた直後からの記憶がなかった。

「ここ…どこよ?」

森だけあって空気は清々しいが、パーカーに膝丈のスカート、スニーカーという軽装ではやや肌寒かった。そして生足に草丈の長い植物がチクチクする。

先ほどの自分の行動をいくら思い返しても、大学に向かうため玄関のドアを開けてからのことがすっぽりと抜けている。
辺りを見渡して状況を把握しようとしたが、うっそりと覆い茂った森以上の形容ができなかった。光が差し込んで来ないため初夏であるにも関わらずこんなにも涼しいのだろう。樹とはこんなに大きく成長するものだったかと不思議に思うが、そういうものかとも思う。私に植物の植生に興味はなかったことが悔やまれる。

「とりあえず歩くか…歩いて他の人を探そう」

今後の方針を口に出して決めると、不思議と心が落ち着いた。独り言が多いのは私の悪癖であるが、こんな異常事態に心を落ち着けるためには仕方あるまい。
あてもなくふらふらと歩き出したはいいものの、足が痒くてうんざりする。こんな調子で人里まで歩いて行けるのだろうか。

と、思ったその時。

目の前に突然家が現れた。
いや、家というより小洒落たカフェのようだ。くすんだ朱色の屋根の上に風見鶏がいるのは可愛らしいし、落ち着いた木目調の外観にも好感が持てる。
私はこの家のドアを探した。
なかった。
外をぐるっと一周したが、窓はあったもののドアはどこにもない。行儀悪く窓から覗いた内装はアンティークな家具が揃えられていたが人の気配はなかった。

「あのー、すいませーん」

声を張り上げてみる。ついでにノックもしてみた。
返事はない。
困った。やはりこんな森の中には人は住んでいないのだろうか。朽ち果てている様子はなかったが、空き家なのかもしれない。
しかしようやく見つけた家屋である、もしこのチャンスを逃したら森で彷徨って野垂れ死ぬかもしれないのだ。私は意を決して窓からあがり込むことにした。
もし誰かいたとしてもこんな状況であることを説明すれば許してもらえるはずだ。……たぶん。

ところが窓すら開かなかった。というか開けようとした途端弾かれた。

「わわっ!え?何事?」

尻餅をつきながら窓を見あげる。すると人影が見えたが

「……魔女?」

魔女のように真っ黒な帽子をかぶり真っ黒なドレスに身を包んだ彼女は、私と目が合うとぱちんと指を鳴らした。
可愛らしい家が音もなく変形し、みるみるうちにただの壁にドアが現れた。ハリー○ッターでこんなの見た。

「どこから迷い込んだか知らないけど、早く入りなさい。暇だしもてなしてあげる」

美女は声まで美しいんだなあと現実逃避した私は、ともかくその家に入ることにした。
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