第二十二話 あっけない終わり
かなり短め
空間を歪ませながら飛び出してきたそれはそのままウルソスに迫り、当たるかという所でウルソスが静馬を放り投げながら避ける。
「うぬ、何者だ!!」
『へぇ、喋る事が出来るなんて珍しいね』
警戒するようにその方向を見たウルソスの言葉に答えるように一人の男が歪んだ空間から出てくる。
ウルソスを警戒する素振りも見せずに周りを見渡して静馬たちが倒れているのを見ると軽く目を見開きながらも言葉を紡ぐ。
『中ご……、いや、日本人の子供か……』
明らかに自分の事を気にしていない男の様子にウルソスは苛立ちを覚え、男に対して威圧するように睨んだが、男は一瞥するだけだった。
『ふーん、早く保護するなら出てきたら?』
「何を言っている?」
そんなウルソスを無視するように再び視線を背後に有る入口に向けた男に更に苛立つウルソスだったが、直ぐに入口から一人の女性――橘が中に入ってきて静馬を抱きかかえる姿に一瞬だけ警戒を解いてしまう。
『あーあ、その程度か』
「グハッ!!」
一瞬にしてウルソスに近づいた男は驚きの表情で見た橘やウルソスを気にせずに持っていた剣でそのままウルソスを壁まで斬り飛ばし、防ぐ事も出来ずにその一撃を受けたウルソスは胸元に大きな傷を作りながら壁にぶつかり、土煙の中にその姿を消す。
『あーあー、こんな感じか? で、大丈夫だったか?』
「えっ、あっ、ありがとうございます?」
唐突に喉を触りながらエヴォルオ因子を操ると直ぐに橘でも分かる言葉がその口から紡がれる。
見た目からして何か引っかかるものを感じるがどう考えても日本人に見えない風貌の男の口から流暢な日本語が紡がれたことに橘が驚いていると土煙からウルソスがその傷ついた身体を晒しながら出てくた。
「よくもやってくれたな!!」
その言葉が早いか一瞬で姿を消し、その姿を探す橘の耳と目に金属がぶつかり合う音と共に飛び込んできたのは持っていた剣でウルソスの鋭い爪を防ぐ男の姿だった。
一瞬の均衡も直ぐに終わり、互いに動きながら剣と爪をぶつけ合う二人の姿に唖然としていた橘だったが、直ぐに今の状況を思い出す。
そして、抱えていた静馬の様子を確認しながらも他の二人の生徒たちの方へと動き始める。
「大丈夫、貴方たち!?」
「せ、先生?」
橘の姿を見て安心したのか泣き始めてしまう陽と息を吐く和也。そんな姿に橘は和也の怪我を見て焦りながらも応急処置を施していく。
『まだ、やるつもりか?』
「五月蠅い!!」
未だに続く戦いは男には余裕が有るのか笑いながらも簡単にウルソスの攻撃を防いでいく。
そして、応急処置を終えた橘の姿を確認したのか、今までよりも大きくウルソスの攻撃を弾いて距離を取る男。
『ちょうど良いし、終わらそうか』
「何を言っていっる!!」
男が構えた剣にエヴォルオ因子を纏わりつかせ、そのままウルソスに向かって振り下ろす。
少し離れた距離にいたウルソスはその行動に何を血迷ったかと思ったのか直ぐに距離を詰めようと動く。
しかし、それをあざ笑うかのようにウルソスの目の前の空間が歪み、そこから何かが襲い掛かる。
そして、その一撃を予想できなかったウルソスはそのままそれに身体を切り裂かれてしまう。
『はぁ、やっぱりな……』
二つに割かれたウルソスだった物を眺めながら佇む男はつまらなさそうにしながらもその手に持っていた剣をクリスタルに戻すのだった。
そして、その姿とウルソスを切り裂いたものがそのまま壁を切り裂いていくのを見ていた橘は男にどうして引っかかりを覚えたのかを思い出して口にする。
「≪剣聖≫、ウォルター・R・ピゴット……」
『んっ? あぁ、そうか。気が付いてもおかしくは無いか』
「どうして、こんな、所に……?」
『ふっ、ただ、剣を振るった先がここだっただけさ。それよりも良いのかよ?』
橘がその言葉に首を傾げると同時にどうやら傷が痛みだしたのか和也が苦しそうに呻く。
その事に気が付いた橘がウォルターから目を背け、和也の様子を確認していると遠くの方から誰か数人が焦りながら走ってくる音と何か風を切るような音が聞こえた。
そして、その音に橘が顔を上げるとそこには誰も立っていなかった。




