第二十話 追いついた先で
投稿予約したと思ってたら、予約し忘れてました。
橘は焦っていた。
予定通りに生徒たちが迷宮に入ってから暫くして追いかけた橘は何も起こらずに迷宮内を進んでいた。
道中で何人かの生徒と会って一緒に行動し始める事になったのは事前に予想できた事態だったが、迷宮の最深部に到着した時にそれは訪れる。
一緒に来た生徒たちと共に自衛隊員に話しかけ、現在の生徒たちの状況を確認していた時に先に進む通路から慌てた様子の生徒たちが戻ってきたのだ。
その様子に気が付いた橘は直ぐに自衛隊員との会話を止め、生徒たちに駆け寄るが人数が足りない事に気が付く。
「貴方たち、慌ててどうしたの?」
「せ、先生、大変です!!」
「あの、その!!」
「取りあえず、落ち着いて。見た限りだと三人いないけど、その子たちはどうしたの?」
そう言って橘が聞いた時、また慌ただしく何かが先に進む通路から部屋に飛び込んできた事に気が付く。
まるで道を塞ぐように現れたEVEの姿に引っかかるものを覚えながらも生徒たちを下がらせて自衛隊員に視線で合図する。
それに反応して一匹のEVEが橘に向かって走り出し、その姿をしっかりと見せたそれは元は犬か狼だっただろう姿を残していた。
「新種かしか? まぁ、そんな事は後で良いわね」
疑問に思いながらも因牙武装を展開して構えた橘は近寄ってくるEVEの姿をしっかりと確認しながらその動きを見る。
そして、一瞬止まったEVEの姿を見た橘は勢いよくそれに向かって走り出す。
直ぐにEVEに近づいた橘はその勢いそのままに因牙武装――氷輪を突き出し、唐突な事に戸惑っていたEVEは何も抵抗できずに氷輪に貫かれた。
そうしている内に残っていたEVEも橘を倒そうと襲い掛かるが、既にその動きに慣れた橘の敵ではなく、直ぐにその姿を消す事となった。
「ふぅ、これで良いわね。それでどうしてこんな事になったのかしら?」
そう言って振り返った橘は自衛隊員二人の後ろに守られるように立っていた生徒たちに話しかける。
「じ、実は……」
そう言って生徒――金村は前に出は話始めた。
話を聞き終わった橘はため息をしんがらも自衛隊員たちに目をやり、この後の事を考え始める。
まさか迷宮の一部が崩落、それに生徒が巻き込まれて落ちた場所が迷宮の未発見地区だとは思わなかったが、取りあえずは救出のために向かわなければいけないのは事実だ。
そして、そこで気になってくるのが今さっき倒したEVEの存在だ。
去年も含め事前の調査で出てくるEVEにあのようなモノがいないのは確認済みだった。それはここの警備を担当している自衛隊に確認までしているので間違いない。
なのに、目の前に現れた。どうしてか、未発見地区に生息していたのか、調査の輪を掻い潜って生息していたのか、はたまたここ最近で迷宮に住み始めて進化していたのかは分からないけど、どのような理由だったとしても今の状況は非常にまずい。
「橘さん、地上との連絡が着きました。それで応援が直ぐに来るようで我々は一人待機、もう一人が橘さんの指揮下に入ります」
「そう。なら、生徒たちをこのまま地上へ連れて行くのをお願いするわ」
そう言いながら金村たちから受け取った地図を差し出して崩落した場所をメモするよう伝え、生徒たちを送り終わったら跡を追ってきて欲しいと伝える。
「先生……、俺たちも!!」
「ダメよ」
叫ぶように言ってくる金村たちに鋭い視線を一度送る。
一度、怯むような素振りを見せるもやはり心配なのか再度橘に話しかけてくる金村たちだったがその声を無視するように橘は自衛隊員に目を向ける。
「じゃあ、送り届けたら他にもこの事を伝えて貰って、その後は私の跡に続いて追ってきてほしいわ」
「分かりました。恐らく、私以外の者も跡を追いますので安心してお進みください」
そういうとメモを片手に待っていたもう一人の方へと歩いて行った自衛隊員と入れ替わるように近づいてきた金村たちが騒ぎ立てるが、それを無視して自衛隊員たちの準備が終わるのを待つ橘。
暫く二人で話し合っていた自衛隊員たちは互いに頷くと橘と話していた方が戻ってきて生徒たちに移動する事話始めた。
「それじゃあ、君たちは私に着いてきて」
「先生!!」
金村たちは抵抗するように大声で橘を呼ぶが、橘は首を横に振って強く睨みつけた。
少しの間耐えるように橘とにらみ合った金村たちだったが、変わらない橘の様子に最終的には折れて渋々と自衛隊員に促されて歩き始めた。
そんな姿の金村たちを見送った橘は無事に迷宮から出れる事を祈りつつ、自分も未発見地区に行った生徒――静馬たちを救助する為に動き出した。
地図を片手に進んだ橘は目の前に広がる穴から試しに覗き込んでみる。そして、それと同時に近くに落ちていた石をそこに向かって落とした。
微かに聞こえてくる音からなかなかの深さが有ると判断した橘は持っていたロープを何処かに括りつけれないかと辺りを見渡してみる。
しかし、そんな都合のいい所が有る訳もなく、悩んだ橘だったが直ぐに一つの案が思い浮かぶ。
どれだけ支えれるかは分からないが、取りあえずの方法として近くの地面に氷輪で斜めに交差するように穴を開けてそこにロープを通す。
そして、後に来るはずの自衛隊員たちがしっかりした救助用の準備を持ち込んでくれる事を祈りながらロープを持って穴に飛び込んだ。
入った瞬間は暗く、持っているロープを不安に思った橘は時より氷輪を壁に突き刺す事で少しでも負担を減らそうとしてみるが実際に効果が有るのかよく分からない。
そして、近づいてきた底にに警戒しながらも降りた橘。辺りを見渡すも特に変わった様子は見られずにそのまま着地する。
「確か神居君たちは……」
地図を取り出しながら伸びている道を確認するがぱっと見ではどっちに進んだのかが分からない。また、降りる前から分かっていたが周りにもいないし、戻ってくる様子もない。
これは先にかなり進んでいるのか何か有ったのか……。
一度、地図に目を落として方向を確認して橘は静馬たちが進んだ道へと足を進めた。
今まで通ってきた迷宮の通路と変わらなかったが何かが先に有る事を告げるように現れるEVEを倒しながら進んだ橘の前に通路よりも明かる部屋が近づいてきた事に気が付く。
漸くたどり着いた場所だけに警戒しながらもその入り口を近づき、中の様子を探ろうとする。
そして、その眼に飛び込んできたのは片手で静馬の首を掴み、持ち上げている異形の姿だった。
その光景に慌てて飛び出そうとした橘だったが、直ぐに他の二人の生徒の事を思い出してそれを思い留める。
見つからないように警戒しながら再び中の様子を窺うと壁際に座り込んだ男子生徒とその女子生徒を心配そうに見ている生徒を見つける事が出来た。
どうやら男子生徒の方はかなりの傷を負っているようで着ている服が破れ、血が流れだしているのが分かる。
その時、この状況にどうにかして助け出したいと思った橘の味方をするように異形の左斜め後ろに空間が歪み、そこから何かかが異形に向かって飛び出したのが見えた。




