出会い
いつか夢で見た友達との冒険っぽいなにかを文章化してみました。既にある非日常的日常と平行して書いていくつもりです。
遠くの空に大きな影が落ちてきた。
燻ったような雲を突き破って、ダム壁の向こう側へと消える。
少し間を置いてから、大きな水柱が上がる。
俺は近くに置いといた今日の戦利品を掴み、家の方へと走り出した。
「あれ?どしたの?そんなに急いで」
家の前には、電極の繋がった自転車を漕いでいるクラが居た。
メッキが剥がれ、茶色に錆びた籠に倒れこみ、緑色の眼をこちらに向ける。
「ダムになんか落ちた」
「なんかって?」
「なんか、大きなやつ。機械っぽい」
そこまで言うと、家の上からセイが降りてくる。
黒髪を後ろで括っている彼女は、黒縁メガネをくいっとあげた。
「私も見たよ。隕石ではなかった。多分宇宙船」
「なに、なんの話?」
今度は家の中からヤトか出てきた。
ボサついた銀の髪といつもの半分ほどしか開いていない眼から、今さっき起きたばかりであることがわかる。
「どっかの誰かが墜落したって」
「ダムにね」
状況を確認したヤトは、眠気覚ましに大きく伸びをする。
「他の二人は?」
.......あっ
「水汲み、だね...」
907号は水汲み組が使っているので、俺たちは1215号に乗ってダムに向かった。運転はセイだ。
すると、さっき俺がいた場所を過ぎた辺りで、ダムの方から一台のトラックが走ってくるのが見える。1215号だ。
窓から身をのりだし眼を凝らす。運転席には長くたなびく青色が、頭の上から忙しく動く橙色が見える。
「ヒロとノブだ」
「多分笑ってるよね?あれ」
「とりあえず無事っぽいね」
「へいへーい!なんかやっべぇの落ちてきたぜ!」
「すっげー水柱があがったぜ!」
ずぶ濡れの二人は興奮が冷めないのか、矢継ぎ早に騒ぐ。
二人の相手はヤトに任せ、残った三人で今後の方針を考える。
「で、どうする?」
「とりあえず見に行くか?」
「人が出てきたら?友好的とは限らないよ」
「敵対的とも限らない」
「無人って可能性は?」
「探索機?」
「ありえる。あの二人が溺れている人達を無視するとは思えないし」
「じゃ、行くか」
「了解」
「これどうやって開けんだろ」
「なんとかの原理!」
「てこな。まあまずは入り口探さないとな」
とりあえず六人がかりで陸地にあげられた。
サイズは1215号の2、3倍程か。六角柱の下の面を大きくしたような形のボディに、二枚のパネルが対で側面に付いている。また丸窓のようなモノも二つ付いているが、中は覗けない。
「あそこかな」
ヤトが上の方を呼び指す。よく見ると、上の面には蓋のような溝がある。
「あそこだね」
「じゃあクラ、頼むわ」
「えっ!?」
「まあ一番軽いし」
なんかおきそー、とブツブツ言いながらも、パネルを踏み台に天井へとよじ登る。
「ん、ちょっと固い」
「一人で大丈夫か?」
「だい、じょ~ぶ~~~うっ!」
勢いよく蓋が開き、クラが探索器から落ちて消える。そして小さな水柱。
「大丈夫かー!!」
即座にヒロが水に飛び込む。綺麗なフォームだ。
「あ~、鼻に水が入った。痛~い」
「寒くはないか?風邪引かないと良いんだが」
「うん、まだ大丈夫」
「ていうか俺らの心配しろよ!さっきからずぶ濡れじゃん!」
「あっほんとだ!」
「ごめんごめん、二人ならなんとかなるかなーって」
「まあ三人とも一旦休んどけ」
「あとはヤトがやるよ」
「今せっかく会話に入らなかったのに」
「だってクラの次に軽いし」
「本人の意思を尊重すべきだと思いまーす」
「私の時から言ってよ」
「はいギルティ」
「ですよねー」
しぶしぶと登り始める。パネルがそろそろ壊れそうだな。
クラが開けた蓋の中を覗くと、ヤトは両手で何かを掴む。ここからだと見えにくいな。
そして掴んだ何かを持ち、こちらに大きくジャンプする。
当然危ないのでキャッチする。ほんと軽いなコイツ。
「ナイスキャッチ」
「ナイスジャンプ」
「で、なによそれ」
ヤトを降ろすと、持っていた白い板状のモノを地面に置く。
板には液晶画面があり、端の方にはボタンが付いていた。
「ポチッとな」
「あ!私が押したかったのに!」
迷いなくヒロがボタンを押す。
すると画面に小さな円が映り、しばらくして多くの文字が書かれていき、上へと消えていく。
「テレビ?」
「速くて読めないな」
そして全ての文字が消えると、0627の数字が出てきた。
「...終わり?」
「結局なんなんだよこれ」
『誰?』
ん?
「今の声誰だ?ノブ?」
「違う。クラ?」
「ううん。ユウ?」
「いいや。セイ?」
「多分これ」
「あれ?私は?」
これって、これか?
セイの一言で視線が一つに集まる。するとそれから声が出てきた。
『えっと、今どういう状況なんですかねー...』
「おいマジかよコイツ話せるぜ!」
「えっ!人間!?これ人間なの!?」
「すげええええええええええええええええ!!!!」
「ちょっ!?落ち着いて!」
「スピーカーどこだろ」
「お前は落ち着きすぎじゃね?」
ちなみに異性の友人はいません。
そういう人種です。