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第6話 東西の乱


 西には、本来の西の護り手、2人の白虎が急行した。

 こちらの敵は力自慢の大男で、背に剣を背負っている。

 最初は相手の力をはかりきれず、苦戦を強いられていた白虎2人だが、しばらくすると、お互いの連携が取れるようになっていった。左右から大男に浴びせかける攻撃で、今や2人は押せ押せムード。

 だが、「うおおー」と叫んだ男が、とうとう背に担いだ剣を抜いた。

 ドオーン!

 ものすごい地響きがする。近くにいた雑魚が怖がってバラバラと逃げていったほどだ。

「わあお」

「あれに当たったら、タダじゃすまなさそうー」

 冗談ぽく言うが、2人とも顔はいつもより真剣だ。

 ブゥン!

 と、振り回される剣を避けていると、雑魚が隙を突いて襲ってくる。

「O……」

 それを抑えるように玄武・兄と弟の声が響き。

 キャー、と、もんどり打つ雑魚たち。

 それでも果敢にフラフラと立ち上がるヤツらには。

 ビシィ! ビシィ!

 万象が操作する超小型ドローンが容赦なく襲いかかっていた。

「ありがとう、万象!」

「どうってことない、頑張ろうぜ!」

「「うん!」」

 ミスターは、「バンちゃんやるじゃーん」とか言いつつ、振り回される剣から決して目を離さない。白虎もその大柄からは想像もつかないような早い動きで剣をかわす。

「逃げてばっかじゃ、らちがあかないね」

「そろそろ反撃、行きますか」

 西の護り2人は、そう言うと、自分たちも剣を抜いたのだった。



 東には朱雀と飛火野、そして青龍と龍古のふたり。

 こちらの敵は剣の使い手が2人と、多数の手練れがいる。

「剣術使いの方は、私が」

 飛火野がスルリと刀を抜いて、2人の前に立った。

「ええー? ひとりなの?」

「わお、チャレンジャーだね、命知らずー」

 2人の使い手は、見た目は一乗寺と同じ年頃の少年だ。顔立ちもまだ幼さの残るかわいさだ。

「命知らずはどちらでしょうかね」

 そう言って飛火野は2人に飛びかかって行った。


「頑張ってねー、とは言え、こっちの手練れもやるわね」

 他の手練れは雑魚と同じく武器は持っていない。朱雀は万年筆型武器を駆使するが、雑魚にはあたっても、手練れにはなかなかだ。そのうち息を切らせはじめる朱雀。

 そこへ青龍が飛び出す。

「朱雀さん、一度休んで!」

 そう言うと、青龍がギュッと閉じた目を見開く。

 キャー!

 閃光が走って、雑魚は散り散りに逃げていった。だが、さすがに手練れはその場に踏みとどまっている。

 そこへ。

 ビシィ! と、超小型ドローンの弾が炸裂する。

「あ! 当たった、当たったわよお、バンちゃん」

 どこからか雀の嬉しそうな声がした。

「止まってる敵に当たるのはあたりまえです。ほら、今のうちに早く」

「よーし」

 ビシィ!

 なんと、雀が万象から手ほどきを受けて、ドローンシューティングをしているのだ。

「間違って、私たちを撃たないでよねー」

 用意周到にもサングラスをかけた朱雀が、動かない敵を次々倒していく。

「だいじょうぶ。動き出したら撃つのやめるー」

「それが正解、よ」

 なんとも息の合った朱雀と雀の2人だ。


 ところで。

 飛火野は、かなり苦戦していた。

「うぐ!」

「やーっぱり、1人じゃ大変そう。ちょっと手加減してあげようよー」

「うん、おじさんだもんね」

「!」

 彼らの腕は相当なものらしい。

 桜花の話では、飛火野もかなりの使い手なのだが、やはり2対1ではあちらに有利なのは当然だ。それでも飛火野は、炎のような殺気をたぎらせて2人に向かっていく。

「わあーお」

「もうあきらめなよ、おじさん」

 キッとそっちを睨んで、飛火野は、

「さっきから、おじさんおじさんと、失礼ですね」

 ガッシン! と刀をはじく。

 少し驚いた様子の片割れは、ギリリ、と歯がみして怒り出す。

「ちょっと手加減しちゃったかな」

 そして、また押して押して、押しまくって行く。合間に雑魚や手練れがちょっかいを出してくるので、それも倒さねばならない。


「鞍馬さんがいれば」

 ぽつりとつぶやく龍古に、

「そうだわ! 鞍馬が来られないのが悪い」

 雀はシューティングのせいか、少々テンション高めだ。

「雀おばさん、そりゃ鞍馬のせいじゃないし。でも、本当だな、鞍馬がいればあんなヤツら」

 と、万象も言う。

 そんな会話を冷静に聞いていた2人の少年は、不思議そうに言う。

「なに、鞍馬って」

「ほーんと、ここにいないヤツの事なんか言ったって、ね」

 飛火野も「鞍馬? 誰ですかそれは」と、不審そうに言う。


 そんな言葉の合間にも、2人は飛火野に容赦なく襲いかかっている。必死に防ぎながらも、飛火野はガンガン!、と応戦して1人が攻撃を受けきれずに飛び退いた。

「わ、やるじゃん」

 だが、次の瞬間、すっともう1人が襲いかかってきた。

「う!」

 さすがに足の運びが遅れて、「しまった」と言う声とともに飛火野は腕に刀を受けていた。鮮血があたりに飛び散った。

「飛火野! なんだってんだよもう! ちょっと俺、こっちに加勢する」

 万象は雀からシューティングマシンを受け取ると、攻撃をし始める。

「わ」

「飛び道具なんて卑怯だねー」

「うるさい!」

 だが、超小型ドローンも2人にかかるとどんどん斬られていき、しまいには数えるほどになった。

 朱雀は手練れと雑魚にかかり切りで手が出せない。青龍も、一度能力を使うと、しばらくは発揮できないのだ。

 正面から、ガツンと刃を合わされ動きが止まった飛火野の後ろに、もう1人が回り込んで飛びかかる。

「これでさーいご」


「飛火野!」

「飛火野さん!」

 飛び上がった1人は、狙いを外す事なく刀を振り下ろした。


 そのとき。

 ガシン! 

 ドサァーーー!

 後方にいた敵が、すごい勢いではじき飛ばされた。

 驚く飛火野の横をすり抜けた誰かが、ガシン! と、正面の1人もまた遠くへとはじき飛ばす。


 噴煙が収まると、その中に立っていた男の姿がハッキリと浮かび上がる。

「鞍馬さん!」

 龍古が叫ぶ。続いて万象の声。

「鞍馬! なんでぇ?!」

 鞍馬が2人の敵を吹っ飛ばしていたのだ。

「間に合いましたか。遅くなって申し訳ありません」

「なんで? なんで?」

 涙を流して喜ぶ龍古に、「誰?」と青龍。

 飛火野は、その名前を聞いてかなり驚いていたが、次にシニカルな笑みを浮かべて言う。

「貴方が鞍馬?」

「? はい」

「ハハ、なんだ。皆、鞍馬、鞍馬って言うから、どんな筋骨隆々な大男かと思えば、こんな華奢な方だったとは」

 飛火野は自分と同じくらいの背丈で、自分よりスリムな(どう見ても同じくらいだが)男に、万象や四神が期待を掛けているのが解せなかった。

 すると、首をかしげながら鞍馬が言う。

「貴方も同じくらい華奢かと」

 鞍馬は見たままを言ったのだが、飛火野はちょっとカチンときたみたいで、不機嫌そうに言う。

「いえ、私の方がよほど筋肉質ですよ」

「そうですか」


「なに語り合ってんだよ! 隙だらけだぜ!」

 すると、吹っ飛ばされたと思っていた後ろの敵が、躍りかかってきた。

 ガシン!

 ガン、ガン! ドッサアーーー!

 鞍馬は、攻撃をよけもせずに受けると、2つ太刀を浴びせかけて、さっきの倍ほども遠くへとはじき飛ばした。

「どうやら、剣術と筋肉は関係ないようですね」

 ニッコリ笑って言う鞍馬に、飛火野のこめかみがまたカチンと鳴る。

「言ってくれますね」

 と、ここで飛火野のケガに気がついた鞍馬が、ハンカチを取り出して、器用に腕に巻き付ける。

「帰ったら、すぐ手当てしますね。今はこれで」

 ポカンとしていた飛火野は、感心した様子で、慇懃に頭を下げて言った。

「ありがとうございます」


「「くっそおー」」

 すると、前後にはじき飛ばされていた敵の1人が、ヒュウーーと指笛を鳴らす。とたんに朱雀の近くにいた雑魚がバラバラと集まってきた。そして、多数の手練れも。

 ギロッとそれらを睨み付ける飛火野。

「雑魚は下がっていて下さい。いま少し苛ついていますので、痛い思いをしますよ」

 鞍馬の登場で、眠っていた闘争心に火をつけられた飛火野は、それまでの倍以上の動きで雑魚はおろか、手練れさえ簡単になぎ倒していく。


 だが、敵の2人もやられっぱなしではすまさない。

「よくも馬鹿にしてくれたよね」

「ゆるさないよ」

 2人は、ブウン、と、どこからかエネルギーを集めて太刀を二倍にした! その上で、さきほど傷つけた、飛火野の腕に狙いをつけてくる。だが、飛火野も負けてはいない。

「子どもの頃からそんな卑怯では、良い大人になれませんよ」

「賛成です」

 と、鞍馬。

「「うるさい!」」

 勝てばいいんだよ、とばかり、敵は容赦するつもりはないらしい。2人が飛火野に同時に体当たりで切りつけようとする。

 だが。

「させません」

 と、一瞬の隙を突いて、鞍馬は痛めた飛火野の腕と敵の間に入り込み、ふたりを相手に怒濤の勢いで太刀を浴びせ始めた。勢いに負けて、後ろに飛び退く1人を容赦なく追っていく。

「あ!」

 と、その後を追おうとするもう1人の前に、飛火野が躍り出る。

「貴方の敵は、わたしですよ」

 瞳の中に炎を燃やした飛火野は、こちらも容赦なく太刀を浴びせかけていった。


 灼熱の太陽のように真っ赤に燃えたぎる飛火野。

 凪いだ湖面に映る月のように澄んだ青の鞍馬。


 対照的な2人は、まもなく敵を制圧した。




 その頃、西の戦場でも、そろそろ決着がつこうとしている。

「じゃあ、最後の仕上げ」

「あいよー、おじさん」

「おじさんじゃねえ」

 何やら楽しそうな2人の前には、もうフラフラの大男がいた。最後に2人は、両側から大男に飛びかかる。

 ゴオン!

 ゴオン!

 2発のパンチは、両頬に命中し、男はそのまま、ドドーンと地に突っ伏した。

「やったーー」

 2人の玄武は、嬉しそうに白虎とミスターに飛びついていった。




「うおー!やったぜえ、みんな!」

 陽ノ下家備え付けのディスプレイ大画面で、東西の様子を見ていた万象と雀も、飛び上がって大喜びだ。

 けれど。

「良かったあ。でもなんで鞍馬来てるんだあ?後でびしびし聞いてやる! て……、? あれ? な、なん、……だ」

 着地の後にいきなり足がもつれた万象は、そのままガックリと膝を折る。床に倒れ込む寸前に、一乗寺が万象の身体を支えた。

「万象さま!」

「バンちゃん!」

 一乗寺に抱きかかえられたまま、雀が慌てて飛んで来るのが目の端に見え、万象はそのまま気を失った。



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