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VRMMOセンキ  作者: あなたのお母様
第二章 闇に蠢く
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【おまけ話】猫が猫を嫌って避けたがる理由その①【時系列:不明】

三章の執筆&投稿に合わせて、本筋とは関係ない軽いおまけ話を何話か差し込む予定です。

おまけではシリアスなのはやらないのでご安心ください。

このキャラとこのキャラのやり取りがみたいとかあったら教えてね。

 ここはハイダニア王国の住宅街。


子子子子子子(ねこのここねこ)子子子子子子(ししのここしじ)ー♪」


合成をするための錬金釜の前でのんびり鼻歌を歌っているのは、ネコニャンニャン。

どうやら、この日は珍しく元気だったようである。


そこに寄ってくる一つの人影――


「んだよその小学生みたいなセンスの歌はよ。おい、ネコカス」


――ベルシーの竹を割ったような暴言が、合成作業中のネコニャンニャンの心に突き刺さった。


「いや、いきなりなんですかにゃ。ひどい暴言浴びせんでくださいにゃ……。それ言ったらベルシーさんだってネコカスですにゃ……」


「うるっせえな。クリア伝手に聞いたぞ。オレに何か用事があんだろ? 用件話せ用件。ハリーハリー」


急かされてやや元気を失い、猫背になりながらネコニャンは語り始める。


「はぁ……実は最近知り合った中国人さんがいるんですけどにゃ」


「そんなもん通報しておけよ。中国からこの国のサーバーへのアクセスは法律で禁止されてっだろうがよ。国が用意した専用のサーバーに行けっつーの」


「あーもう、猫の話は最後まできちんと聞いて下さいにゃ! その人は中国からこの国にはるばる渡ってきたんですにゃ。だからちゃんとこの国からアクセスしている合法のプレイヤーさんなんですにゃ!」


「あ~わーったわーった。合法なのな? 話続けろよ」


「んでそのう――ちょっと困っているんですにゃ。その人と一緒にゲームをやっていると、コミュニケーションエラーで敵と上手く戦えないんですにゃ……。挨拶すらもできているか怪しいくらいで困ってるんですにゃ」


「ははあ。なるほどねえ。それでオレに何をしろって言うんだよ」


「“オンラインゲームにおける中国語での挨拶のイントネーション”を教えて欲しいんですにゃ。ベルシーはリアルで、とえ……とえ……とえなんたらって外国語の試験で900点取ったそうじゃないですかにゃ? ゲームの歴も長いし~」


「……TOEICな。お前いい年した社会人なのにTOEIC知らないってどういうことだよ……。つーか、あれは中国語じゃなくて英語の試験だっつーの……」


「ありゃ~。これはとんだ人選ミスでしたかにゃ? 暴言吐かれ損ですにゃ……」


項垂れるネコニャンの前で、ベルシーは少し思案してから――軽く笑って提案する。


「……仕方ねえ。お前に丁度いいオススメの挨拶を教えてやるよ。ずばり、“ツァオニマ”だな」


「――ほほお~! “つぁおにま”ですかにゃ? “にいはお”じゃなくて?」


「え!? あ、ああ~……ニイハオはだな。――――まあ、会社で出勤するときの挨拶みたいなもんだな。業務的っつーかなんつーか……。それにゲームなら、中国人相手の挨拶は“ツァオニマ”が最強だろやっぱり」


「あ~。なるほど、つまり現実で使う“元気がない挨拶”ってことですかにゃ? 自分が会社に出勤した時に返ってくるような挨拶とか、まさにそんな感じですにゃ」


「お前の職場、相当暗いんだな……。ま、とにかく“ツァオニマ”はシンプルで好意的な挨拶の一種だから、とりあえず中国勢には開幕これできちんと挨拶すれば喜ばれるぜ」


「おお~! てっきり全く教えてくれないんじゃないかと心配してたんですにゃ。わざわざ丁寧にありがとうございますにゃ! あ゛……もしかして……お金とか要求してくるんですかにゃ?」


「……今回は要求しねえよ。オレはそこまでケチじゃねえ」


(なんだー。前科があるから警戒してたけど、ベルシーも結構いいところもあるじゃないですかにゃ。頼ってよかった、よーかったー!)



そして――


――――――――――――――――――――――――――――――――




「というわけでこんにちはですにゃ。つぁおにまですにゃ!」



「つぁおにまですにゃ!」



「うぇーい。つぁおにまにゃ~!」




――――――――――――――――――――――――――――――――



それからしばらくして――二匹の猫による反省会がハイダニアの城下町で開かれることとなる。


「……なんかビックリされて避けられるようになってしまったんですにゃ……。な~にが悪かったんでしょうにゃ~……」


「………………発音がよくねえんじゃねえか? そいつらも自分の耳を疑っちまって“正常な反応”ができなかったのかもしれねえな」


「う、うーん。もうちょっと発音を練習した方がいいのかもしれませんにゃ」


「しょうがねえな。こうなったら“行けるところ”まで付き合ってやるよ」


こうして、猫2匹の発音&発声練習が始まる。

それから20分ほどだろうか、コミュニケーションを取るためにネコニャンはベルシー指導の下、真剣な表情で挨拶を繰り返したのであった。


「ええと……ツァオニーマ~。ツァオニーマー。こんな感じですかにゃ?」


「ああ、そんな感じだな。笑顔でやれば、今度こそきちんと意図は伝わるだろうぜ」


「ふぃ~。それにしても練習中ず~っと外国人のプレイヤーに見られてましたにゃ。ひそひそ噂されていたのは一体何だったんですかにゃ……」


「……物珍しいんだろ。いちいち気にすんなっつーの。誰も馬鹿になんかしねえよ。お前自分の国の言葉を必死に練習してる外国人がいたら笑いものにするか? しねえだろ?」


「言われてみれば確かにそうですにゃ。ふぅ~む。流石、海外に留学したことのある人は、知識に基づく経験ってもんがありますよにゃ。わざわざ発音の練習にまで付き合ってくれて助かりましたにゃ!」


「気にすんなよ。ところでお前、いっつもこんな感じで一から勉強しているのかよ? 話している内にある程度覚えたりしねえのか?」


「いや~年取ると、なかなか新しい情報が頭に入ってきませんからにゃ。それでも会話に置いてかれるのが嫌だから若い人の流行の言葉とかも、こんな感じでその都度一から勉強してるんですにゃ」


そこで、何かを思い出したのかネコニャンの耳がだらりと垂れた。


「……そういえば一昔前、“ゲイビデオで使われていた台詞”がインターネット界隈で流行っていたことがあるんですけどにゃ」


「ああ、昔からわりとあるよなそういう流行ブーム。意外な分野から意外な物が流行る系のアレだな」


「そうですにゃ。んで、その頃アスフォーでも周りの若い人達が皆そういったゲイビデオの定型文みたいな物で会話してて、一人だけ取り残されるのがしんどくて頑張って勉強しようとしたことがあるんですにゃ」


「……ゲイビデオの台詞を、いい年したおっさんが一から学ぶのかよ…………色々おかしくねえか……」


「いや、そこまではよかったんですにゃ……。ネットの動画を見て勉強しようとしたらクリアさんに――」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





『ネコニャンさん。それはよくないですよ!!』


『え゛!? 何がですかにゃ!?』


『ゲイビデオは立派な創作物なんだから著作権があります! ネットの動画で学ぼうなんて、ゲイビデオに携わる人達に対する冒涜じゃあないですか!?』


『う……うぐっ!! 滅茶苦茶な言い様に見えて正論ですにゃ……』




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「お……おい。お前、まさか………………………………」


「……そのままあれよあれよと丸め込まれて、クリアさんの勧めでネットで流行のゲイビデオをネット通販で全編買っちゃったんですにゃ……無修正のやつ……」


「お……お前……それはゲイじゃないといろいろきついだろ………………。つーか、何でクリアの奴がゲイビデオに詳しいんだよ……アイツとの付き合い方を考え直したくなってきたぞオイ……」


「いやぁ……ほんましんどかったし後悔しましたにゃ……。間違いなくアルコールで判断力落ちて騙されていましたにゃ……。でも、自分はゲイじゃないけど……買った以上見ないわけにはいかなくてぇ……」


「ぶっちゃけアホだろ」


「“ゲイの人達もほとんどが避けるようなもの凄くハードなやつを見た”せいで一時期食事が喉を通りませんでしたにゃ……。しかも、頑張って勉強した後ブームが過ぎ去って完全に無駄になりましたにゃ……」


「オッサンらしく涙ぐましい努力してんなあオイ! まあ、とにかく今回はちゃんと頑張れよ……」


(よ、よーし。今度こそちゃんと挨拶してみせますにゃ!)


健気な努力の猫。ネコニャンニャンの真のコミュニケーションが今まさに始まろうとしていたのであった。











それからさらにしばらくして、これはチーム会話でのやり取りである――





《おい。クリア。ネコニャの奴。暴言で。捕まったらしいで。今。監獄なんやないか?》


《えぇ!? 暴言で監獄なんてテツヲさんじゃあるまいし! ネコニャンさんに限ってそんなことあるわけないと思いますけど……。おい、ベルシー。お前、何か知らないか?》













《――なぁんも知らねえな!》


【ツァオニマ(ツァオニーマー:cao ni ma)】


英語でFuck your mother.

日本語で「お前の母親を犯してやる」。

絶対に言ってはならない人種差別レベルの暴言である。

人を信用するのも程ほどにしておこう。


「――というわけで、ネコニャンさんはベルシーを避けるようになったわけだな!」


「さ、最低だ……この“人達”最低だよォ!!!!!!」

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