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VRMMOセンキ  作者: あなたのお母様
第一章 “英雄”との出会い
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第五話 初戦闘、そして理不尽な死

「場所的にもそろそろだな……じゃあチュートリアルを受けていないレットに教えるぞ。“初心者狩り”……ではなく、“初心者の狩り”についてだ!」


「……わざと言い間違えてません? それ」


「おいおいおい、俺が初心者狩りをするような悪質なプレイヤーに見えるのか?」


そう言ってクリアは胸を張る。

レットは疎む様な目で目の前の男を見つめた。


「――はい、見えます。物凄く見えます」


「勘弁してくれよ……ハッハッハッハ! ま、兎にも角にも抜刀をしてくれ」


 今度こそレットが腰から銅剣を取り出し、凜と構える。


「それじゃあレット、あそこの手頃な初心者……ではなく、その隣にいる猪――ワイルド・ボアを攻撃してみてくれ」


「なんかもう――今ここで、クリアさんを攻撃してもいいですかね?」


「ワハハハハ、勘弁してくれよ!」


やれやれと首を左右に振った直後、レットは気持ちを切り替える。

猪に攻撃を仕掛ける為に、その背後に忍び寄った。


「そ――れ!」


全身して両手で剣を握り、力の限り振り下ろす。

猪を切り裂いた感触はたしかにあったが、ほとんど体に伝わらなかった。

過激な表現を抑えたかのような黒ずんだ色の血のエフェクトが出たが、それはほんの一瞬だけであり、リアリティは感じられない。


同時にレットは内心ホッとしていた。生き物を切り刻む感触など極力味わいたくなかったからである。

それと同時に気分が高揚するようなアップテンポのBGMがレットの脳内に流れてきた。


「よし、いいぞ。戦闘開始すると戦闘用の音楽に切り替わる。戦闘の基本は可能な限り敵の攻撃を回避して当てる――それの繰り返しだ! ソードマスターなら基本的には速度重視で良い! 殴って殴って殴りまくれ!」


「――ウオオオオオオオオオオ!!」









「あ、そんなに最初から力まなくても大丈夫だからね。ゲームだからこれ」


「あ、ハイ」


気勢を削がれたレッの腹部に、加速してきた猪の突進が深く突き刺さる。


「ぐあっ……!」


レットの身体が宙を舞い鈍い音を立てて地面に激突する。

派手な衝撃がレットの身体を貫くが、不思議と痛みは無い。


「攻撃を受けるとダメージの量に応じて吹き飛んだり、転倒したりと様々だ。ダメージを受けすぎるとキャラクターがスタミナが無くなって疲労するぞ。上達してキャラクターの性能、反応速度が上がると、攻撃を受け流したり吹き飛ばされても即リカバリーができるようになる!」


「ぐっ……わ、わかりました!」


レットが猪の突進を寸での所で躱し――その横っ面に剣を突き立てる。


「いい回避と攻撃だ! 次は職業スキルだ! 職業スキルはほとんどの物がいつでも使用できるが中にはCD(クールダウン)――つまり、再使用できるまでの待ち時間が存在しているスキルもある。詳しくは利き手の逆側に表示されるシステムウィンドウのタイマーを見てくれ!」


「あの、スキルの……おっとと! 名前ってどこに書いてあるんです?」


「あるっちゃあるけどまあ、自分で好きに名前付けて叫べばいいんじゃないか?」


「まじっすか! それなら――よっと!――任せてください! 格好いい技名で決めて見せますよ!」


「い、いや。そもそも叫ばなくても、ちゃんとスキルは発動するから――」









「うおおおおお! “閃光の光速の光! フラッシュライトの速度が上がるスキル!”」


レットが英文を再翻訳したかのような意味不明なスキル名を大声で叫ぶと、その体が一瞬発光して剣速が僅かばかり上昇する。


「おおー、流石レット! ――スゲェー! 流石だー! 流石ですレット様ー!! ……ネーミングセンスも色んな意味で光っているな……」


あさっての方向を見つめて、レットのいい加減な技名をやや棒読み気味に持ち上げるクリア。


スキルの効果を利用してレットは可能な限り俊敏に動こうとする。

しかし猪の速度が予想以上に素早く、レットは再びダメージを受けてしまう。


「あの。クリアさん! 攻撃が……あんまり通ってませんよコイツ!!」


「力を溜めて攻撃すれば威力も当然高くなる。ソードマスターは何よりも速度と部位に対する攻撃の的確さが大事だが、攻撃が通じない相手がいたら力を溜めてみるのもいいかもしれないな!」


「おっ――りゃあ!」


クリアのアドバイスを聞いて、レットは力を溜めて剣の切っ先を突き出す。

剣が深々と突き刺さり、猪は悲鳴を上げてレットを吹き飛ばした。


(今の一撃はかなり通じたみたいだけど。まずいな……オレ、そろそろ死にそうなんだけど……)


――レットの体力表示は真っ赤、もう幾許も無い。

これがお互いにとっての最後の一撃になる――そうレットは思った。


「オオオオオオオオオ! チェアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


全力を出して武器スキルを発動させようとするレット。

技名を名乗る余裕は無く、銅の剣が光を纏う。

レットの体が自然に動いて、Vの字を書くように銅の剣を猪の胴体に叩き込まれる。


派手なVの字のエフェクトが猪の体に残った――が、猪は倒れず、終にレットは猪の攻撃を受けてあっさり“死亡”し、その場に伏した。


(そ、そんな……序盤の雑魚モンスター一匹も倒せないだなんて……)










「あー……よかったよかった、死んで。いや、勝ってしまうのかと思った。危ない危ない!」


(え、なにそれ? どういうこと!?)








「全くもう……クリアさんは~。ずっと、隣で見てたけど、いくらなんでもあんまりなんじゃない?」


レットの耳に、突然落ち着いたトーンの幼女の声が聞こえて来た。同時に、その身体に力が入り。レットは本日二度目の蘇生を受ける。


彼の脳内に、それまで流れていた穏やかなポルスカ森林のBGMが舞い戻ってくる。


「ああ、こりゃどうもお久しぶりです。レット。この人は、チームメンバーのケッコさんな」


彼女は驚くほど小柄で、80cm程しか身長がない。

ずんぐりとした体形ながらも、どこか愛らしさを湛えている。

その褐色の肌は健康的な光沢を放ち、銀色の瞳と銀髪がその小さな顔に独特の魅力を添えていた。


頭には、大きな黒い魔法使いの帽子

体を覆う装備品は大人の魔女を思わせるようなセクシーで挑発的なスタイルで、彼女の小さな体にはやや不釣り合いな大胆さを感じさせる。

そんな彼女の背中には、堕天使のような黒く小さな羽が付いており、その矛盾した外見がレットの視線を引きつける。


彼女の存在は、その小さな体躯に反して、周囲の空間を支配するような――見る者を虜にするような危うい魅力を放っているようだった。


「『ケッコちゃん』とお呼びなさい!」


(ああん! なんか小さいのにセクシーな大人の色気が出ているのが、何かこういけない感じを醸し出していて可愛らしい!)


――等と新しい性癖に目覚めそうになるレット。












「紹介させてもらおう。Kekkoことケッコさんだ。チームの常識人で、コンビニの夜勤をしている20代の男性だ。身長190cm、体重は140キロ。好きな物は“ラーメンライス”と“幼女”と“ケモノ系全般”」


(うわああああああああああん。何だソレェェェェエエエエエエエエエ!?)


「あの――あのクリアさん。……その、凄まじい紹介を受けてオレは一体どう反応すればいいんです?」


レットの質問にしばらく思索してから、クリアはぽつりと呟いた。











「――“お会いできて、中身がそのキャラクターの身に余る光栄です”とか、言えば良いんじゃ無いか?」


「アンタ、失礼過ぎるだろォ!?」


「クリアさんったら! 紹介の情報に間違いがあるわよ? 私、最近減量して130キロまで落としたんだから! それと何度も言っているけど、好きなのは幼女じゃなくて、私のキャラクターみたいな“非現実的な成人女性キャラクター全般よ!”」


派手な自己紹介を受けても小人のような彼女――彼、ケッコはけろっとしている。どうやら、このような紹介のされ方は慣れてしまっているようであった。


「まあ、とにかく一旦全員で移動しよう。ここは、デスペナルティの回復待ちにはあんまり良い場所じゃ無いから」


レットはそこでやっと自分の身体に力が入らないことに気づく。


(なるほど、これがデスペナルティ――戦闘不能になった時のペナルティってやつか)


結局――クリアの提案で、三人はポルスカ森林の北東側に移動することとなった。


「ケッコさん、お久しぶりですね。チームの一部のメンバーは自分含めて、糖尿病で死んだかどうかの賭けをしていたんですが――」


「アンタのチームは一体何やってるんだ!」


「――賭けに負けちゃったなあ」


「しかも“死んだ方に賭けてた”のかよォ!?」


「なにいってるのよ~! そもそも糖尿病じゃないし、可愛らしい動物と、非現実的な妖精(セクシーガール)達が世界にいるかぎり、私まだ死ねないわ。――そういうことで、よろしくね。レット少年!」


ケッコが握手を求めてくる。

レットが握手に応じると、ケッコは両手で包むように優しく握り返して来た。


(ああ、でもこの笑顔……やっぱり可愛いかも――この種族)


「おいおい、レット。何ニヤニヤしてるんだよ……」


「や、やめてくださいよ! いや……ニヤついてなんかいないですよ!」


「あらあら……駄目よ少年! ハードな性癖は大人の特権なんだから! もうちょっと大人になってから――ね?」


そう言ってケッコはレットに対して、怪しげな笑みを浮かべた。


(この人はこの人で、またいろんな意味で危ない人だな……)


「いや~深いこと言うなあ……流石、ケッコさんですよ!」


傍目にもわかるほどいい加減な相槌をうちながらクリアはレットに向き直る。


「ペナルティ解除までまだちょっと時間あるから、食材と水を取ってくるよ。後で『料理』についても教えてやるからな!」


ワハハハハと叫んで、クリアは木々の間に消えていった。


「あら、もうペナルティ解けちゃってるのに、クリアさんはホント。おっちょこちょいなんだからもう……」


「うーん……知り合ってまだ二日目なんですけど、あの人って相当狂っ――いや、“変わった人ですよね」


大木に寄りかかりながら、レットは呟く。


「〔クリアさん早く帰ってこないかな。初対面の人と二人きりっていうのは、ちょっとだけ気まずいかも――にしても本当にエロいよなあ、この格好……〕」


「それにしても、良いお天気よね〜。ポルスカ森林はほとんど雨が降らないから、いつ来ても居心地が良いわ」


「そ、そうなんですね」


相手の中身は男性だとわかっていても、派手すぎる故に視線が引き寄せられてしまい。レットが横目でケッコの装備品をチラチラ見つめる。

すると――


「〔露出度の高い危ない格好をしているのは、“自己観賞用”に使うからってわけさ!〕」


――突然クリアの声がレットの頭の中に聞こえてきた。


「〔うわ! 小声じゃ無くて、直接脳内に声が聞こえる!〕」


「〔“whisper(ウィスパー)”っていう会話モードでな。こんな風に念じるだけでフレンド間で会話が出来るのさ。間違って関係ないプレイヤーに間違って話しかけるなよ! オンラインゲーム的には、そういうミスを誤爆っていうんだけど〕」


「〔き、気をつけます……。ていうか――あの……ケッコさんって、“この設定でチームの常識人なんですか?” 自分……クリアさんのチームに入るの辞めていいですかね?〕」


「〔――――――――――――〕」


クリアから一瞬、返事が返ってこなかった。


「〔あ、いやすみません! せっかく誘ってもらったんだから入ります入ります!〕」


「〔別に怒ってはいないけど駄目だな。メンバーにレットを既に紹介してしまった。ケッコさんは既にレットを知っているが、自分が戻るまでの間に自己紹介をしておいてくれよ〕」


「〔わかりましたよ、もう! やればいいんでしょやれば!〕」


「〔あ、いや。今回は小声でお願いしたい――――――――――〕」


「「ええと、ケッコさん! 改めてここで自己紹介しますね! オレの名前はレッド! ダーク・レッド! 黒き晴天の騎士の光の剣の達人だ! この世界の宿命を背負う男だ! それが何かは現時点では全くわからないがよろしくな! 趣味は刃物の収集と……あとは――えーと、オリジナルの必殺技を考えるとか!? このゲームの他のプレイヤー達とは違ってなんか最強の能力を持つ予定で、えー……神がかった反応速度をもった隠れた天才タイプだ! 好きな女性のタイプは胸がそれなりにあって言うこと何でも聞いてくれるような感じの人だ!」」







「あーーーああ……なるほどねぇ……クリアさんが気に入りそうなタイプよねえ……」


レットの派手な自己紹介に対して、ケッコはあっさりと納得したようだった。


「正答に評価されているのかなオレ……。んで、その――あなたの種族って何族って呼ぶんでしたっけ?」


「あら、このゲームの種族をまだ全て覚えていないのかしら? 私の種族は“フェアリー”よ」


「ははぁ、また……そのままなんですね」








『ねこまんまにゃ! ねこだけににゃ! ドニャッ!』


(…………)


このタイミングで思い出してしまい、少しだけ肌寒く感じるレット。

黙り込んでしまったせいか――ケッコとの話が途切れてしまい、沈黙が次第に気まずくなってきて、レットは質問を飛ばした。


「え……えっと、さっき。ケモノ系と――小さいフェアリーみたいな……“非現実的な成人女性が好きだ”って言ってましたよね? 正直、オレの理解が全然及ばない世界っていうか……。もちろん、否定するつもりはないんですけど。一体、どういう経緯で好きになったんですか?」


「――少年、人にはね。“誰にでも知られたくない過去”ってものがあるのよ〜?」


レットの質問に対して、ジト目をしながら嗜めるかのようにケッコが呟く。


「す、すみません……! 立ち入ったこと聞いちゃったみたいで……」


「気にしてないわ。むしろ逆っていうか――私、少年のことがちょっと気に入っちゃったから、嫌な思いはしてほしくないのよね〜。私の性癖の起源なんて、聞いて楽しい気持ちになれるような話でもないから……。とりあえず言えることは――」


ケッコはレットと視線を合わせた後、考え込むような仕草をして――


「――“少年には、私と同じ道は歩んでほしくない”ってことだけかな♪」


――とだけ言って、意味ありげな笑みを浮かべた。


(いや、そんな道に進むわけがないっていうか。オレ自身、全く心配なんかしてないけどォ……)


「ただいま……。やれやれ……レットの自己紹介が遠くまで聞こえてきたよ……」






※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※






 「ああ、ケッコさんの種族か……。説明しよう。フェアリーっていうのはゲームのマスコットキャラクターとして都合が良いのかやたらとゲームの宣伝に使われる種族だ。ちなみに、この種族を選んでいるプレイヤーに対するイメージは、他種族と比べるとどうしても悪くなりがちだ」


その後のクリアの種族解説に対して、レットは困惑の表情を見せた。


「えぇ……それはちょっと……偏見なんじゃないですか?」


「ところがね、少年。このゲーム長くやってるとフェアリーに対するイメージって自然と悪くなってしまうのよ」


「えっ、そうなんですか?」


「理由はちゃんとある。一つは“単純にプレイヤーに人気だから、頭のおかしいプレイヤーの数も他の種族と比べて必然的に多くなる”。二つ目は“小さくて可愛いから何をやっても許されるという考えで問題を起こすプレイヤーが多い”。三つ目は“悪さをした時にギャップがあって目立つ”」


「な、なるほど……」


「もちろん、全員が全員というわけではないけどな。差別をしないように心がけてはいるが、正直言ってしまうと俺の中でも印象がちょっと悪い。ここだけの話――『これだからフェアリーは』と言いたくなることがたまにある!」


そう言いながら、クリアは自身のオレンジ色の頭頂部を撫でた。


(なるほどねえ。クリアさんはこのゲームでフェアリー相手に嫌なことでもあったのかな。確かにVR空間で“小さくてかわいいキャラクターが暴言を吐く”っていう絵面はイメージ悪いよなあ……。そんな光景絶、対見たくないよオレェ……)


「まあ、そう考えるとだ。ケッコさんはちょっとマイノリティーな性癖を持っているからフェアリーを選んだわけで、フェアリーの中でもぶっちぎりの良識派。――普通の人だから心配はいらない!」


クリアの言葉を受けて、レットはケッコを二度見する。


「それは普通……なんですかね……?」


「普通よねえ?」


「普通だぞ! さぁて、そろそろ気を取り直して。狩りを続けようか! ケッコさんもレットに色々教えてやってください!」


「任せなさい少年! そのために私はここに来てあげたのだから!」


「はい! よろしくお願いします!」


こうして、再びレットの狩りが始まる。


「それで、戦闘を始める前にね~。私クリアさんにちょっと聞きたいことがあるのだけれど――」


「はぁ、何でしょう?」


「――なんで少年をレベル6の猪に突撃させたの? この子まだレベル1じゃない?」


「え? クリアさん……猪がレベル6って――どういうことです?」


「敵を騙すにはまず味方からって言うだろ? それに、圧倒的に不利な戦いの方が見てて面白そうだな」











「「く、Clear・All……こ、この――悪党めがああああああああ!」」


「――わかったわかったよ! 殴るなって! 殴るなって! 当たらないから! ワハハハハハハハハハ!」


クリアはレットが振り回した剣の隙間を縫うように避けると、周囲を見渡す。

そして逃げるように近くの木にしがみつき、そのままスルスルと登って行ってしまった。


「あらあら、もう見えなくなっちゃったわ……逃げ足だけは速いんだから……。少年も怒ったりツッコミ入れてばかりじゃ無くて、気をつけなくちゃだめよ。クリアさんはいつもああいう人なんだから……戦う敵の情報はきちんと事前に調べましょ?」


「……わかりました。気をつけます……敵のレベルですね。あと少しで、勝てそうだったんだけどなあ……」


「「まあ、もうちょっとヒントを出すとだなー! 敵によって最適な部分に攻撃を当てれば大きなダメージが入る! そうすることで効率よく倒していけというわけだー! 所謂部位破壊というやつだなー!!」」


木の上からクリアの声が響き渡って来る――が、それがどこからなのかはわからない。


「あの猪は、何処が弱点なんです?」


「「――実は俺もよく知らない! ま――まあ、大体首筋とか目とか狙えば良いんじゃ無いか?」」


「えぇ……知らないんですか!?」


クリアの予想外の発言にレットが仰天した。


「あら、もう……。クリアさんったら、はぐらかさないでそのくらい教えてあげればいいのに。猪系は鼻と足、これは常識でしょ?」


「ああ――そうでしたっけ?」


登って行った木から滑るように降りてきて、口笛を吹き始めるクリア。


(今更だけど、この人本当に信用できるのかな? オレがこのゲームを遊んでいるうちに、“気まぐれで敵になって襲ってきたりしてもおかしくない”っていうか。むしろ、そういうことをやってくる方が自然な気すらしてきたぞ……)


いい加減なプレイヤーについてきてしまったものだと、レットは少しだけ後悔した。


【始まりの地、ポルスカ(Polska, where it all began)】

本作品の【Ostオリジナルサウンドトラック.Vol1 世界】に収録されている楽曲。

昼と、アレンジされた“夜バージョン”の二種類がある。

穏やかな曲調であり、編曲者はインタビューで「長時間流れていても違和感が無いけれど、不思議と望郷の念にかられる。そんな作曲を目指してみました」と発言している。

人気の曲であるが故に、調子に乗って口ずさんだ結果、「通りすがりの第三者に聞かれて恥ずかしい思いをした」というプレイヤーもいるようである。


「ふんふふふん♪ ふふふんふふふんふふふん♪」


「あのォ……ケッコさん。オレのBGMが流れるタイミングと同期していないみたいなんで、歌うのやめてくれませんか……」


【ワイルド・ボア】

要するに、野生のただの猪。

比較的穏やかな性格ではあるがリンク(※同族のモンスターによる増援)しHPが多く、レべリングには甚だ不適切なモンスター。

暴食で過酷な環境でも生息可能であるが故に、ポルスカ森林の環境破壊に大貢献している。

数が多い割りに、肉が硬くて不味いと評されている。


「猪突猛進するものは、ワイルドボアに斃される」


【戦闘曲.1(Battle Theme.1)】

【Ost.Vol1 世界】に収録。

おそらく本作で最も聞く頻度の高い汎用バトルBGM。

長時間ゲームを遊ぶプレイヤーから『100万回聞いた曲』、『親の声より聴いた曲』などと揶揄されることもある。

しかしゲームから離れてしばらくして、忘れたころにじっくり聞き返してみると「やはり名曲である」と再評価をするプレイヤーもいるのだとか。



【ルソニフ地方の天気予報】

『本日のポルスカ森林は、晴れ。今後も雨が降る予定はありません。ただし、オーメルド丘陵はその限りではありません。雪、もしくは雨にお気を付けください』


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