第一話 少年のオリジン
「人はいつも、ファンタジーの中の冒険者に憧れる。
それはきっと、現実では得られない体験がそこにあるからで。
冒険することへの憧れを持っているからだ」
その思春期を迎えたばかりの少年は、小学生の頃から青少年向けのライトノベルやアニメというものが好きで好きでしょうがなかった。
特に好きなジャンルが、『オンラインゲームを題材にした冒険物語』だった。
『ゲームの世界の中で、主人公が他の誰にもない圧倒的な力を手に入れてかわいい女の子に好かれて、実力者として周囲に認められて、ヒーローのごとく活躍する』
少年はそんな物語の主人公が大好きで、全く別の新しい世界に憧れていた。
だからこそ――
「オレの伝説は……今日ここから始まる!」
――この日、自室の中で少年は一人で叫んでいた。
少年の憧れが、現実の物となりうる日がやって来たからだった。
20XX年、VR技術の奇跡的ブレイクスルーによって神経接続を伴い、精神をゲームに投入するフルダイブ形式のVRゲームが登場した。
この新しいVRMMOの黎明期が始まったことで、集団参加型の仮想世界は一変し、これまでにない没入感が生まれた。
そして、VRゴーグルが値下げされ、機能拡張が施されたため、多くの人々が手に入れることができるようになった。
その中にいた少年は、“自分でも最新型のVRゲーム機を手に入れることができた”ということに大きな喜びを感じていたのである。
『ア・ストーリー・フォーユーNW』、略して『アスフォー』。
VRゴーグルの機能拡張に伴い“フルダイブ化リニューアル”が行われた最大手VRMMOオンラインゲーム。
この日は、その少年が生まれて初めてオンラインゲームを遊ぶ日だったので――
「あと少しだ! あと少しで始められるぞ! 待ちに待った日が来たアアアアアアアアアア!」
――まるで、『とてつもないサイズの台風がやってくる直前の、学校の帰り道』に立っているかのように、少年の気持ちは高揚しており、とても騒がしかった。
そして、実際のところ“彼”はまだ――
「まだかなぁ……まだかなぁ、そろそろ宅配便が家に来るなんだけど」
――仮想世界への切符を手にしているわけでは無かった。
関連機材を通販サイトで購入した彼は、時間通りの配達を期待していたのだが、【望んでいる商品に限ってなかなか来ない】ということを痛感することとなる。
実際に彼が商品を受け取ったのはそれから三時間後、夜中の九時だった。
ようやく荷物が到着し、受け取りの手続きを終えると“彼”は自室に駆け込み。はやる気持ちで包装を破いて中身を取り出す。
(――さて……始めるぞ! いざ始めるとなると、興奮を抑えられない! ああ、ウッキウキするな!)
彼は震える手を抑えて、凄まじい勢いで準備を始める。
周辺機能を確認してから付属の機械にあらかじめ購入していたディスクを挿入して、VRゴーグルをかけてベッドに横たわる。
(――よし! 今こそ、旅立ちの時だッ!)
「えー、なにこれ長ぁああぁい…………」
――しかし、年齢確認やゴーグルの初期設定その他、個人情報諸々の手続きを行うためかなりの時間がかかってしまい、再起した“彼”のテンションに歯止めがかかる。
最後に少年の前に立ちはだかったのは『“誰も読まないことを前提にわざと長く作っているのでは無いか”とすら感じるほどの長さの、利用規約の文章の大洪水』だった。
それらに一切目を通さず一番下まで一気にスクロールし、チェックボックスの同意の部分を選択する。
「今度こそ……今度こそ……オレの理想の世界へ、レッツゴー!」
その瞬間――
(う……寒い。窓……開けっぱなしだった)
――換気のために開けていた窓の隙間から、冷たい冬の風が吹き込んできて再び少年を現実世界に引き戻そうとしてくる。
「……………………」
少年はゴーグルを外してから無言で立ち上がり、窓を閉めてから鍵をかけてカーテンでしっかりと覆う。
吹き込んできた外の寒さを忘れようと、首を左右に振ってからベッドに横たわり、ゲームを再度起動した。
そうして何度も出鼻を挫かれた挙句に、ようやくゲームのタイトル画面が開かれて壮大なBGMが彼の脳内に響き渡る。
少年はサーバーと種族を選んで自分の見た目をクリエイトし、キャラクターの名前を入力しようとする。
「あれ……やっぱりこの名前は駄目か…………よし!」
《この名前は既に使用されています》というシステムの通知を受けて、“彼”は何を思いついたのか入力したばかりの名前を変更する。
最後にゲームを開始する国家を選択して、少年はついに仮想世界にダイブした。
ゲームの世界に二重の意味で没入していく最中に、“彼”は待ち受ける自分の物語に期待した。
広大で美しく自由な世界を駆け抜けて、自分が主人公になれる世界がそこに待っている。
可愛らしい女の子と、信頼できる仲間達が自分を待っている。
視界が真っ暗になり気がつくと――“彼”は神々と人によって引き起こされた戦乱の最中に立っていた。
「うおおおおおすごい! 凄すぎる!」
“彼”が驚くのも無理は無い。
肌寒さの中に流れてくる熱い空気。
破滅を暗示するかのような暗い色の曇り空の下で異形の神々と人々がその体を、命を、心を、そして魂を削り合う。
飛び交う弓と魔法、轟音と供に大地の塊が剥ぎとられ揺れ動き、激しい戦いが繰り広げられている。
今まで体験したことの無いようなゲーム体験がそこにあった。
他のゲームで画面の外から観るだけだった光景――そのど真ん中に自分が立っているのである。
世界観に浸ろうと現実と見紛うオープニングムービーを360°体感していると、突然――
――如何にもな通知音が鳴り、システムウィンドウが目の前に現れた。
≪フレンド登録申請が届きました≫
(んんん、何だこれ? え? おいおいおいおいおい……このウィンドウ、消せないぞ!)
そのシステムウィンドウは“彼”の視界のど真ん中に映りこむように追従してくる。
“彼”はゲーム開始数秒で文字通りの壁にぶち当たってしまった。
「これかな? いや、ええとこれ?」
このままではムービーを堪能することができないと焦った“彼”は適当に手元に表示されるシステムメニューを適当に弄り倒す。
そして、見事に消滅した――
――フレンド登録申請のウィンドウでは無く、“彼が観ていたオープニングムービーそのもの”が。
「おいおい嘘だろオオオオォォォォォォ……」
オープニングムービーを誤操作でスキップしてしまったことで、その夢のような光景は瞬く間に暗転していく。
“彼”は自ら致命的な操作ミスをしてしまったことを後悔して。
そしてなぜか、ほんの一瞬だけ――
――“ゲームの世界に拒絶されたように感じた”。
“彼”の視界に、眩い光が差していく。
≪エールゲルムの世界にようこそ!(Welcome to Ehrgelm)≫
そのメッセージが表示された直後、“彼”は自分自身が広大な国の真ん中に立っているということに気づいた。
“彼”は自分の両手をじっと見つめてから視線を動かす。
周囲を見渡して、大きく息を吸って、感心したように息を吐く。
少年が、それまで自分が想像していた仮想世界よりも遥かに美しい世界。
少年が味わったのことの無い完全な非日常がそこに在った。
(凄いな……この世界、現実世界より遥かに綺麗にくっきりと美しく見える! ひょっとすると、ここの空気は現実よりも澄んでいるんじゃないか!?)
心の中で歓喜の声を上げながら、“彼”は次に、自分自身のゲーム内の見た目を確認しようとした。
“彼”がゲームを開始したエリア『フォルゲンス共和国東』の中心部には巨大な噴水があった。
水質は決して良い物ではなかったが、自分のキャラクターの顔を確認するだけならそれだけで充分だった。
(……完璧だ。長時間キャラクリをした甲斐があった! ちゃんと顔が整っているぞ! すごい――イケメンじゃないか! 黒い髪に黒い目、最高だ! イメージ通り、単純で無個性で――なんかこう――主人公っぽい!)
“彼”が選択した種族の名前は“ヒューマン”という名前で、身につけているのは冒険者の初期装備だった。
腕の部分と袖口が茶色のパフスリーブシャツの上に、クロスパターンのレーシングが施された茶色と濃紺のレザーベスト。
肘まで覆う茶色の厚手のレザーグローブに腰には黄色いトリムの黒いベルト。
黒と茶色のショートパンツの下に、黒いタイツ。
そして、靴は金属製のバックルがついた茶色のレザーブーツ。
理想の見た目になれたことを確認してから、大きな喜びを感じてガッツポーズを取る。
(やった……ここまで長かった……ようやく始まるんだ――オレの冒険が……!)
「「オレの呼び名はレッド! ダークゥ・レッドォ!! 闇の晴天の騎士だ! 気合入れていくぜええええええええええええええええええええ!」」
今までの鬱憤を晴らすかの湯に、“彼”は噴水の縁に足を掛けエリアの中心で何の躊躇もなく――現実世界と同じように声変わりしていない甲高い声で――堂々と宣言した。
その行動は“彼”がこの世界を進んでいく上で、小さな一歩だった。
そして、周囲にとっては大きな迷惑であったかもしれない。
「ちょっと君、いいかな?」
直後に、どこからともなく“彼”――改め【レッド】に男が声をかけてくる。
種族はレッドと同じヒューマン。
頭髪の色はブルーで頭頂部はオレンジ――まるで燃える蝋燭のような奇妙な色合い。何も衣服を身に付けていない半裸の上半身は妙に白く大根のよう。顔には目線のような横一文字の黒のフェイスペイント。
その顔には黒いスモークのかかったゴーグルを装着しており、群青のスカーフを首に巻き両手に松明を持っていた。
(お、なんか面白い見た目の人がやってきた!)
レッドは話しかけてきた松明男に対して返事をする。
「――ああ、大丈夫! その先はもう言わなくてもわかりますよ! 要するに“最初に話しかけてくるポジションの人”なんでしょう、あなた!」
「――はぁ?」
「物語で例えるなら、序盤で道案内をしてくれるようなタイプ。そういうキャラって、それなりに強いよアピールして序盤の山場辺りで死ぬんですよね! 確かにあなた、そういう一発キャラっぽい見た目してますもんね! ご親切にありがたいけど、でも安心してください。ゲームの説明書なんていつも通り全く読んでいないけど、オレって天才だと思うんで! えっへっへ~」
レッドが噴水に足を掛けたまま、男に対して捲し立てる。
松明を持っていた男は少し思案し、ニヤリと笑ってから――
――その松明を突然レッドの胸元に押しつけた。
「熱い! 熱い熱い熱い熱いっつぁあい!?」
派手な音を立ててレッドが噴水に倒れ込んで水飛沫が上がる。
「――熱いのか、それは良かった。初めまして。頭の上に出ている“名前”を直接観てくれれば分かるだろうけど、俺の名はClear・All。クリアと呼んでくれ」
噴水に落下したレッドに対してさらに追撃を仕掛けるように松明を押しつけながら、それほど高くないテンションで男が“熱く”自己紹介をした。
「いやいやいやいや、いきなり何をするんですか、止めてくださいよォ!」
レッドは男の突然の凶行に憤慨し、再び水飛沫を上げつつ飛び退く。
一方で松明男――クリアは何処吹く風といった佇まいである。
「大袈裟だな。現実の炎の熱さとは違うんだよ。ホレホレ、触ってみなよ」
レッドはクリアが差し出した松明を恐る恐る触る。
「あ、本当だ。40℃のお湯くらい? あんまり……熱くないや」
「ハハハハ、そうだろう、そうだろう。突然首に当てて申し訳ない。まさか噴水に落っこちるなんてな。予想はしてたし、悪気があってやっただけなんだ。許してくれよ」
「は、はあ……」
(『悪気があってやった』って……それってひょっとしなくても、“ただの悪い人”なんじゃないのか!?)
「それでレッド君だったか――何からどう突っ込みを入れればいいのかわからないけど。君に質問をしてもいいかな?」
「あ、『はい!』 いや……『ああ!』 うーん違うな……『おうよクリア! ドンと来いや!』こんな感じかな………………」
「お……おい……“君の中で、君自身のキャラ設定が固まりきっていない”ようだけど大丈夫かい?」
「だ…………大丈夫です。ご丁寧にどうもスミマセン……」
クリアからツッコミを入れられて、レッドの気勢が少しだけ削がれた。
「それで、その……君の“闇の晴天”という二つ名――でいいのか? 意味がちょっとわからないんだけど……晴天なのに闇というのは一体、どういう設定なんだい?」
「いいじゃあないですか、闇で晴天でも別にぃ! 髪型と言えば黒一択! 男なら“飾らない、誰にも染まらない”黒色が一番なんですよ。あなただって目元が黒いじゃないですか!」
レッドは自らのショートの黒髪を靡かせながらポージングする。
クリアは目元を弄りつつも、目の前にいるレッドをまじまじと見つめながら困惑しているようだった。
「いや、俺の目元の“これ”は好きでやっているわけじゃないんだよ。ゲームの中でも真っ黒な髪色が好きって……独特だと思うけどな。最近の若者の趣味はよく分からないもんだな……」
「もう~“アレ”を知らないんですかぁ? そもそもぉ、ダーク・レッドっていうのは今話題のVRMMOアニメの主人公のキャラクターの名前なんですよ! 遅れてるな~ホント。これだからにわかは……。今時あれを知らないだなんて……頭がどうにかしていますよ! 実際、頭の色っていうか“頭の見てくれはどうにかしている”けどォ……」
さりげなく暴言を吐くレッドに対して、クリアの表情は笑顔のままだった。
「ダーク・レッド……なるほど。道理で最近、似たような名前を見かけると思った」
「えぇ~。やっぱり同じ名前の人っているんですか!?」
「いや、厳密にはいないよ。似たような名前なら存在するけど。とにかく、ここで会ったのも何かの縁だ…………よろしくな! レッ“ト”!」
「あれ? 今ひょっとしてオレのことレットって呼びました? オレの呼び名はダークレッドなんです! きちんとレッドと呼んでください!」
「よくわからないが、要するに君は“面白いヤツ”なんだろ? ――よしよし、気に入ったぞ! ワハハハハハ! よろしく頼むぜ!」
(なんだか物凄く誤解されているような……。始めて早々、物凄く悪そうで変な人に気に入られてしまったぞ……)
クリアは最初に出会ったときからレッドの頭上をちらちらと見ていたようであったが、レッドはそのクリアの視線には気づいていなかった。
そのレッドの頭上に書かれていた名前。
“彼”が入力した名前は――DarkRedならぬ『“Daaku・Retto”』。
かくして、今ここにダーク・レッド――改め【レット・ダアク】の不思議な冒険物語が始まろうとしていた。
【ダークレッドという固有名詞の由来について】
「ダークレッド」という固有名詞は、近隣国の中国で執筆・刊行されたライトノベル『<-Cybernetic Field Online->』に由来している。
この作品は小説投稿サイト『转折点中文網』にて20XX年8月より連載が始まり、20XY年1月から書籍として刊行されている。
物語は、『中学生の主人公が、VRMMO世界の破壊を目論む巨悪と戦う冒険活劇』を描いている。
当該作品の主人公の現実世界の名前は翻訳された国によって表記が異なるが、プレイヤーネームである【ダークレッド】は世界中で共通のものとなっている。
“少年”が生活する『現実の国家』の中高生の間でも多数の熱狂的なファンが存在して、『格好良い主人公』に憧れたプレイヤーが様々なVRMMOで【ダークレッド】という名前でゲームを遊んでいる。
そのため、【ダークレッド】という名前は、現在では一種のネットミーム(ネット上のネタ)として扱われるようになっている。
おそらく“この少年”も、そういった夢を見る純朴な少年の内の一人なのだろう。
「なあ、一つ質問があるんだが。漫画やオフラインゲームといった“原作”が別にあるわけでもないのに、どうして作中のゲームタイトルの最後にわざわざ“Online”なんて言葉がつけられているんだ? 設定じゃ超有名なゲーム会社が発売しているゲームなんだろ? つまり、マイナーな会社がマイナーなオンラインゲームを売る目的でタイトルにOnlineって言葉をつけているっていうパターンでもないわけで。これは、現実じゃあまり見かけないというか、結構珍しいパターンじゃないか?」
(う、おすすめする人を間違えたかも……)
【VRゴーグル】
機材付属の最新型のVRゴーグル。フルダイブの夜明け。
コミュニティサイトへのアクセスも大丈夫。機能的には使いづらく、ネットに繋ぐならパソコンや最新型の携帯端末等で充分。
善く言えば革新的、悪く言えば試験的なものであるため有料βと揶揄されることも多々。
尤も、VRMMOのゲーム内外を取り巻く事情は常に変わりゆくのである程度は仕方ないのだが……。
具体的な商品名は未記載とさせていただく。
勘違いされがちだが、【フルダイブ技術をゲームに落とし込むことでこの機材を作った会社と、A story for you NWを開発、運営している会社は全くの別物である。】
「『私』には人々の気持ちがわからない。先の見えない世界の中で、自らの視野を狭める必要がどこにあるのだろうか?」
【ランチャーアプリケーション】
『A story for you NW』をプレイするには、セキュリティのため運営会社が開発したランチャーアプリケーションをダウンロードする必要がある。
ゲームを起動するとランチャーのダウンロードが自動的に開始され、アカウント作成手続きが求められる。
アカウントはインターネット上でも管理できるが、ネット上からゲームにログインすることはできない。
ランチャーは、運営会社専用のアカウント管理システムであり、同社の扱う他のオンラインゲームでも利用が可能。
ログイン手順は機材の電源をオンにしてランチャーにログインし、ホーム画面から遊ぶゲームを選択して起動画面に進み、最後にゲームにログインする――という合計6つのステップを経る必要がある。
ホーム画面では背景と音楽をカスタマイズできるほか、アカウント単位で登録されたフレンドに対してメッセージや写真を送ることができる。
起動画面では、プレイヤーが所属するサーバーで起こった興味深い事件の数々をニューステロップ形式で提供している。
ゲームをプレイするだけであれば、深く考える必要はない。
わからないことがあれば、ランチャー付属のオンラインマニュアルを参照すること。
尚、背景と音楽をカスタマイズすることも可能。
「ホーム画面の背景と音楽、どうしようかな……」
【少年がスキップしたオープニングムービー】
“少年”が見逃したムービーの概要は以下の物である。
『戦乱に次ぐ戦乱、造物主たる神々に牙を剥き、滅ぼし、そして見放された世界、エールゲルム。
中央大陸の国家は長き争いの前に疲弊しつくしていた。
国を導く者達でさえ何故戦いが起きたのかすら忘れてしまうほどに長い時を争いに費やしていた。
そこで、中央大陸の国家は獣人や異民族を共通の敵と認識し、排除することに決定。
徹底的な弾圧と虐殺が始まった。
しかし、結果として協力し合った国同士に友情と平和がもたらされ無事に復興の歴史を歩むことができたのである。
時は流れルソニフ地方、ここはフォルゲンス共和国。
ここは、表面上は民主主義制を採択している西の国家である。
国の足取りはやや重かったが、長き歴史に渡り構築された複雑な戦闘技能と鍛冶を初めとした各種合成技術の評価は高く、国民にとってそれが誇りであるとされており。
その一方で、国に属する兵士の練度そのものの低さは物笑いの種にされるほどで、産業の促進に傾倒し労働者の労働時間を長くしすぎた結果、食文化が他国と比べほとんど育っていないという負の面も存在していた。
そこに“あなた”は行き着く。
その生まれ、素性を知るものは本人以外に誰も居ない。
果たして“あなた”はどのような身分を主張し、物語を紡ぐのであろうか――』
「オープニングムービー全部飛ばしちゃったからなあ……。後でちゃんと見直さなくちゃ……」