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VRMMOセンキ  作者: あなたのお母様
第四章 登る者、降りる者
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A面 第二話 明朗快活

塔の攻略のためにダンジョンの中に転送されたレットは――










[……え? うォおおおおぉおお!]


――自分の姿を見つめて大声をあげた。


レットは“装備品を全て脱がされていた”。

身につけているものといえば、簡素な下着一枚だけだった。

レットは同行者の存在を思い出して、裸になった自分の上半身を抱き抱えるように隠す。


[ななななんでいきなりこんな……!]


[あれ、アタシ言ってなかったっけ? 『この【会者定離の塔】の中限定で、レベルは1から再スタートする』って]


背後からルリーカに声をかけられたレットは、慌てて振り返ろうとしたが――即座に振り返るのをやめた。


(ま、まさか……塔に入ったことでレベルが1になって、“オレが裸になっている”って事は、もしかして後ろにいるルリーカも――)


レットは自らの思考によって振り返ることもできず、裸のまま氷の彫像のように固まってしまった。

ルリーカは真横からレットに対してひょっこりと顔をのぞかせる。


[急に固まっちゃって、どうしたのさ?]


[――え!? いや、なんでもないよ! なんでもないって!]


レットは慌てて視線を逸らしたが、ルリーカは背後から大きく回り込んで、今度は逆側から不思議そうな表情で再びレットの顔を覗き込む。

自分の動きに合わせて再び顔を逸らすレットをしばらく見つめていたが、今まで笑いを堪えていたのだろうか? 突然、堰を切ったように吹き出して大きな声で笑い出した。


[うぶっ――――あっはははは! 大丈夫だって。アタシの格好は“さっきと同じ”だよ?]


レットは目線だけを動かして横に立つルリーカの姿を見つめる。

ルリーカの言う通り、その格好はフロアに転送される前の格好のままだった。


[心配いらないって。この塔に一度でも入ったことがあるプレイヤーなら、装備がない状態でも専用のインベントリーから外見を自由に“被せて”おくことができるってこと〜]


言いながらルリーカはニヤニヤした表情のまま身をかがめて、上目遣いでレットの顔を見つめた。


[――何? もしかしてアタシが下着姿になっちゃってるんじゃないかって想像しちゃって、身動き取れなくなっちゃったわけ? 別に心配しなくたって“アタシは大丈夫”だよ~?]


[うぅ……そ、そそそそんなこと想像してないよ! それよりもさ――]


話題を変えるために、レットは慌ててゲームメニューを弄る。

ゲームメニューの中に『この塔専用の装備インベントリー』があることを発見して、慌てて装備品を“外見だけ”身につけた。


(アイテムもキーアイテム以外は何も持ってない扱いになっている……)


[その――レベルが1から始まるのってなんかこう――不思議な気分だよね!]


[そうだね~。アタシには意味がよくわからないけど、『初心者向けに作られた塔だから』らしいよ?]


(“初心者向けに作られた塔”――か)


[人によっては1からやり直すっていうのが嫌だっていう人もいるけどね。何のためにここまで頑張ってキャラクターを育ててきたんだ~って怒る上級者の人もいるみたい]


[そうかな……オレはとっても良い感じだと思う。心機一転。気持ちも一緒にリセットして、最初からやり直しって感じで――]


話題が変わったことを安堵しつつ、レットは自分の持っている知識から『この塔が初心者向けに作られている』理由を考えた。


[なるほど、そっか――『塔の中限定でレベルを1から再スタートさせる』ことで、“上級者プレイヤーと初心者プレイヤーの足並みを揃えている”っていうことなんじゃないかな? そうすることで、初心者が参加しやすいように配慮されているのかも……]


[なるっほどね〜。……なんかさぁ〜。そういう分析すぐできちゃうのって――レットって、ちょっとオタクっぽいかも?]


[う……しょうがないじゃないか。知り合いの人から『ゲームを作っている人の事情とか考えることが大事』って学んだんだよ……]


[えぇ〜、なにそれぇ!? 普段からそういうこと考えて遊べって知り合いに言われているわけ?」


[直接言われたわけじゃないけどォ。実際、知り合いの人のそういう考え方が凄く役に立ったというか……何度も窮地を救われたことがあるっていうか……]


言いながら、レットは何の気無しにプレイヤー用のWikiの本を取り出して塔の詳細を“事前に調べよう”とする。

ルリーカは驚いた表情をして、レットに質問を飛ばした。


[――ちょっと、いきなり“どうした”の?]


[え? 攻略を失敗しないように、予めこの塔のことを調べておこうかな〜と……]


[…………この塔が“初心者向け”なのに? ちょっと力入りすぎっていうか、キミって“テスト前の予習勉強”みたいなことするね!]


驚いた表情のルリーカに言われて初めて、レットは『先の展開を事前に調べようとする癖』がついていたことに気づく。


[もしかして、レットって意外と勉強とかできちゃうタイプだったり――――は無いのかな? 名前が名前だ……し……]


ルリーカは、はっとした表情から――笑いを堪えようとして無表情のまま口をつぐんで小刻みに震え始める。

レットは自分の名前を見上げてから、肩をすくめてぽつりと呟いた。


[うん……オレ、“ご覧の通り”勉強は全然できないんだ……]


[――――――ぶふぅっ! ちょ……ちょっとズルい! ズルいよ……。自分で言ったら反則じゃんそんなの! ……………………ごめんレット。アタシ、また笑っちゃった]


[いいよ。今のは狙ってやったんだ。それで、この“調べ物”なんだけど――]


レットはルリーカに対して、持っている本を僅かに掲げる。


[なんか……無意識に出してたみたい。“事前に調べないと危ない”っていう体験をしたせいなのか……も……]


[ん〜、んん〜? もしかして、レットって意外と“N(ノーマル)”じゃなかったりする?]


本を広げた状態のままのレットを見つめて、ルリーカは不思議そうな表情で首を傾げた。


[そ、そんなことないよ! オレ、ちょっと……その――“ビビり”だからなんだと思う!]


[なるほどなるほど。怖がり屋さんなんだ〜。それならたしかにN(ノーマル)って感じするね! でも、別にゲームに命かけた効率バリバリの廃人じゃないんだからさ――]


ルリーカは笑みを浮かべながら手を伸ばして、レットが両手で開いた本を、上から被せるように両手で閉じた。


[――先のことを知らない状態で適当に進んでみた方が面白かったりするし。ここでそういう調べ物はな〜し!]


[そ、そうだね!]


(咄嗟に誤魔化したけど。オレ、変な癖ばっかりついちゃってるのかも……せっかく久しぶりに“ゲームを普通に遊ぶ”んだから。もっと肩の力抜かなきゃダメだよな……)


本を仕舞いながら考え込むレットを見つめて、ルリーカは『レットが未だに先のことを心配している』と勘違いしたのだろうか――


[心配しないでよ。経験者として、必要に応じてアドバイスやヒントは出してあげるから!]


そう言いながらルリーカはインベントリーを開いて、前開きの焦げた茶色のローブを羽織るように装備する。


[あ、そのローブって。確か、ここに来る途中で手に入れた――]


[――なんか、旅人っぽくて格好良いでしょ? “着ておいた方が良いことあるかもよ”?]


ルリーカはレットに見せつけるようにローブを両手で軽く開いた。


(あー、そっか。このローブを拾うのってこの塔のイベントの一環だったのか……)


ルリーカに倣って、レットはインベントリーから焦げた茶色のローブを取り出して羽織った。


[うんうん。似合ってる。アタシは多分レットの1.5倍くらいはレベルが高い経験者だから、心配しなくても大丈夫だって! 進みながらこの塔の説明を軽〜くしてあげるからさ! とりあえず、怖がらないで一緒に進んでみようよ!]


――レットの左手を握って勢い良く走り出した。








[うわ――ちょっと待ってよ! 左手を引っ張られると走りづらいって!]


[え〜? だってレットの右手の装備って、変な色しているしゴツゴツしてて握りづらいんだもん〜]






 ルリーカに引っ張られながらも、レットは転ばないように姿勢を制御しつつ進行方向を見据える。

その視線の先にはモンスター――どこか見覚えのあるイノシシが一体配置されていた。


(なんか、こういう石造りのダンジョンの通路のド真ん中に野生生物が歩いているのはシュールだなぁ……)


レットがそう思考した直後に――





[ちょわぁぁああ〜!]


――レットの片手を握った状態のまま、突然ルリーカがインベントリーから巨大な木製の棍棒を取り出して、力強くイノシシの頭を殴りつけた。


[じゃあレット。これからアタシがバトルを始めるから。戦闘の準備をお願いね!]


[えぇ!? 準備って――もうバトル始まっちゃってるけど!]


ルリーカは握っていたレットの手を離してから、今度は両手で棍棒を掲げてイノシシの頭部に向かって振り下ろそうとしたが――猪の方が先に動いてルリーカに向かって突進を仕掛けてくる。


[――よ〜いしょっと!]


ルリーカは棍棒を振り下ろす勢いを崩さないまま、直前で迫ってくるイノシシの頭部を跳び箱のように咄嗟に両手で飛び越えた。

ターゲットを見失ったイノシシは勢いを殺さず。そのままルリーカの背後に立っていたレットに向かって真っ直ぐ突進してくる。


(懐かしいモンスターだなあ。『ワイルド・ボア』レベルは“3”。“6じゃないだけマシ”……か)


敵の強さを調べつつ、レットは敵の突進を横転によって回避した。

そのまますれ違いざまに、敵の弱点である腹部に持っていた銅の剣を突き立てて抉るように切り上げる。

先程のルリーカの攻撃よりもダメージが高かったのか、イノシシはレットにヘイトを向けて再度突進をしてくる。

それを迎え撃つために、自分のスキルを発動しようとして――レットは気づいた。


(あれ……オレが持っている職業スキル。ソードマスターがLv1で覚える『速度が上がるスキル』じゃない! もっと“高いレベルで覚えるはずのスキル”だ! 一体どうして……あ、やばい。攻撃を避けられない――)




[ばっしーん!]


突進してきたイノシシはルリーカの攻撃を真横から受けてあっさりと倒れた。


[これで終わりっと。へぇ〜。なかなか良い動きをいたしますなぁ“レット二等兵”どのっ!]


[う、うん。レベル1でレベルの高いイノシシと戦わされるのはこれが初めてじゃないから。まぁ……どちらかと言うと今の戦闘は、『ルリーカの方が猪っぽかった』かもだけど……]


[お! アタシが言おうとしていたセリフを、躊躇なく先に言うとはやるねぇ〜。一階で戦闘不能になることはまず無いから、ちょっとだけ調子に乗っちゃった。あははは、ごめんごめん! ちょっと強引だったかも。次からは〜、2人で並んで歩こっか?]


そう言って、ルリーカが再びレットに対して右手を差し出してきた。


[い、いいよ。ずっと手を繋ぐ必要なんて無いし……]


[あ〜あ〜。恥ずかしがちゃって、貴重な機会を“手放してしまう”とは! うら若き少年レットくんは以後、年頃の女の子と手をつなぐことは生涯を通じて無かったという〜]


[ちょっとォ。偉人の伝記みたいな終わらせ方しないでよォ! オレは別に……そんなに貴重な機会だなんて思ってないし……]


[そんなこと言っちゃってぇ。本当は『女の子と手を繋いじゃった!』なんて、明日学校の授業中に左手を見つめたりするんでしょ? わかってるって! それで、ため息とかしちゃったりしてさぁ〜――]


ルリーカの言葉を聞いて、レットは反射的に――照れ隠しのように首元のスカーフを掴んだ。


[な……無い無い無い無い! オレそんなこと――――“したことない”から! 今後もすることないから! ちょっと、あんまりオレのことからかわないでよォ!]


かつての自身に思い当たる節でもあったのか、レットは赤面しつつ話題を変えようと再びインベントリーを開いた。


(戦闘が終わってもうレベルが2になった! 新しいスキルを覚えたみたいだけど……このスキルも、もっとレベルが高くなったときにソードマスターが覚えるはずのものだ……。発動した時の効果は、オレのレベルが低いから全然高くないみたいだけど……)


[ねぇルリーカ。一つ聞きたいことがあるんだけど。このオレのスキルって――]


[――そうそう。説明しなくちゃね! この塔の中ではレベルアップが普段より早くて、覚えるスキルや魔法の順番がランダムになるんだ]


[そ、そうなんだ]


(参ったなぁ。それじゃあ塔の中でレベルが上がったとしても、覚えるスキルの順番によっては“塔の外と全然違うビルドを組まないといけない”ってことなのか……)


[――ところで、ルリーカも今の戦闘でレベルが上がったんだよね? 一体何を覚えたの?]


[私アタシが今覚えたのは回復魔法だね。【リジェネレーションIV】。ま、ハズレかなぁ]


レットは自分の耳を疑った。


[【リジェネレーションIV】って……確認してなかったけど、ルリーカの職業ってプリーストなの!? もしかして――]


レットはルリーカが持っている棍棒のようなものを改めて見つめてから絶句する。

ルリーカが持っていた木製の武器は、棍棒などではなく“魔法の杖”だった


[何言ってんの? このゲームって、プリーストでもアタッカーができるでしょ?]


[いや、それはオレも知ってるんだけど――]


レッドは自分の知っている知識を思い返す。


[――確か、アタッカービルドのプリーストって、基本的に杖を使った魔法攻撃で火力を出すんじゃなかったっけ!?]


[まぁまぁ細かい事は気にしないでさ? 自分で敵をぶん殴ったほうが楽しいじゃん? アタシはいつもこんな感じで遊んでいたよ]


[そ、そういうものなのかな? オレが知らないだけで、プリーストって回復さえできていれば後は何をしても大丈夫な感じなの――かも?]






[私アタシ、回復もしないつもりだけど?]


[なんでェ!?]


[実はさ、アタシってビルドの関係で、“戦闘中に自分の回復魔法受けるとダメージ食らっちゃう”んだよね。こう、武器に聖なるパワーを集めている代償で、体に負のエネルギーが集まっている的な感じ?]


[脳筋すぎるでしょ! 回復でダメージ受けるビルドって――不死系のエネミーとか、既死人ゾンビとか、亡者アンデッドみたいじゃん……]


[だから、元々回復するのってあんまり好きじゃないんだよね。ビルドに組み込むにしても一番強い回復魔法を一個だけ入れるつもりだし、本当の本当の緊急事態にしか使いたくないっていうか〜。だからまあ、『レットの敗北がアタシにとっての緊急事態だ!』ってなったときに、回復をしたげるよ!]


[……それって具体的にはどういう状況なの?]


[私アタシにとって、レット二等兵が『背中を預けるに足る立派な男の子』だってと思えた時――かな!]


[なんだよそれェ……]


奔放なルリーカの態度に辟易しながら、今覚えたばかりのスキルをインベントリー上で見つめてレットは物憂げにポツリと呟いた。


[もしかして、“ランダムでスキルが決まる”のは――まさに今のオレたちがしたようなやり取りを期待して作られたシステムなのかも……]


[どういう意味?]


[だからさ。スキルを覚える順番をランダムにすることで初心者と上級者の足並みを揃えつつ。コミュニケーションの――“話題提供のためにランダム要素を入れている”んじゃ無いかってこと]


[ははぁ。『俺のスキルは当たりだ。これなら問題なくやっていける!』とか『ひどいハズレを引いたな。相変わらず。お前はクジ運が悪いな』とか、皆で騒いだりするためにランダムになっているってことかぁ――なるほどねぇ。さっきのレベルの話もそうだけどさ。レットってそういう考察ほんと好きだよねぇ? アタシ初めてかも? そういう物の見方するような人と話したの]


[そんな風にいわれるまで、オレ自身があんまり気づいてなかったけど。オレって周囲の人の影響、結構受けてるのかも]


[“いろんな人の影響”受けているかぁ。アタシも割とそうかもなぁ]


そう言いながらルリーカはゆっくりとダンジョンの奥に向かって歩き始める。


[ルリーカ。モンスターから肉が一個出たけどこのアイテムどうする?]


[さっきのイノシシってフォルゲンス周辺に原生しているやつでしょ? 筋張ってて美味しくないから私はパスかな〜]


[じゃあ、これはオレがもらっておくね]


[いちいち確認なんか取らなくていいよ〜? そんな価値の低いアイテムの所有権を話し合う暇はないって! 先に進めば、いろんなお宝アイテムが眠ってるんださぁ! 例えば――ほら……見つけた!]


ルリーカが角を覗き込んで通路の突き当たりを見つめている。

レットがルリーカの背中から先を覗き込む。

覗き込んだ先は行き止まりとなっていて、赤い宝箱が一つだけ置かれていた。


[よ〜し、レット二等兵。我々は無事に宝箱を見つけたぞ! 早速、開けるために出撃せよ〜!]


言われて一歩踏み出したレットは、即座に足を止めてルリーカに振り返った。


[……確認なんだけどさ――“トラップとかないよね?”]








[出撃せよ〜!]


[――ノリの軽さでごまそうとしてない!?]


レットが再び宝箱を警戒して前を向いた瞬間。耳に突然暖かい吐息がかけられた。


[うひゃぁぁぁぁあ!]


慌ててレットが前に飛び出して宝箱に倒れ込む。


[あっはっはっは! レットって本当に面白いねぇ〜。“迷いなく宝箱を開けに行く”なんて! ジェントルマンで、度胸があるね!]


[――ああもう。わぁかったォ! オレが開ければ良いんでしょ!? ――ったく]


動揺したという事実を半ば自棄っぱちに誤魔化そうと、レットは勢い良く宝箱を開けた。

中に入っていたのは、茶色い一枚の羊皮紙だった。


[おっと、それはこの塔の地図みたいだね。一階で手に入るのは割とラッキーかな?]


[でも、一枚しかないよ? このフロアの地図が書いてあるみたいだけど。すぐに上のフロアに上がっちゃうから意味ないんじゃない?]


[違う違う。これは『1階から9階までの地図』ってこと。フロアを移動すると同時に情報が切り替わるってわけ]


(なるほどね。“一階から九階までが一つの括り”ってことなのかな? この塔は全部で90階なんだっけ? 1から9だとちょっと、キリが悪いような……)


[ねぇルリーカ。10階には何があるの?]


[それは行ってからのお楽しみ! 私も楽しみしてるんだ――――――“とっても!” じゃ、レットが言うところの“気持ちを一新した冒険”ってヤツを始めよっか!]


そう言ってからルリーカは足早にダンジョンの奥に進んでいく。

レットは地図を手に入れたことに気づいて反射的に呟いた。
















[じゃあ、タナカさん。いつもみたいに地図で案内を――]


レットはそう言って歩き始めた直後にぴたりと足を止める。

ルリーカが首を傾げて、レットに振り返った。


[ん? アタシを誰かと勘違いしてない? あ……もしかして、その人が“レットに影響を与えた人”?]


数秒の静寂の後――











[ううん……なんでもないんだ。――ごめんね]


――レットはそう言ってルリーカに向けて笑ってみせた。











その緑色の右手には、地図が握られている。

【リジェネレーションIV】

 単なる自動回復の魔法とは違って、対象者の体力が大きく減少した際に時間をかけて大回復する魔法。

他の自動回復系の魔法と重複して“いざというときのための保険”として使用されるが、緊急時に発動するという特性上、対象者の防御力が極端に低かったり、敵の攻撃が高すぎる場合は意味をなさないことがある。

 また、レベルが低い状態だと多大なリソースを使う割に総回復量が少なくなってしまうようなこともあるので使用の際には要注意である。

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