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エピローグB すれ違いの抱擁
《絶対に気づかれるわけにはいかない。伝えることなどしたくもない。私はこの言葉を、他の思惑と一緒に心の中に閉じ込めておくことだろう》
この場所に至って尚、私の気持ちはきっと永遠に決してあなたにはわからないだろう。
私が何を抱えて、何故にあなたの隣にいるのかも。
私はあなたに、それを明かすつもりさえ。
間違っても、伝わってもらいたくないとさえ思っている。
――それでも何か、少しだけ不思議な気持ちが心の底に沈んでいる。
あなたがここに落ちていく途中で見せた、強い思いと決心だけが私にとって、僅かなときめきを感じさせた。
あなたとの距離を測りかねているような。そんな不思議な気持ちもある。
だから、今までの”彼ら”と、あなたは少しだけ違う気がするけれど。
だけど、それでも。
座り込んで項垂れるあなたと、燥いで背中にひっつく私は、最後まできっとずっと相入れない。
同じ場所にいるはずなのに、肌を重ねているはずなのに、お互いの気持ちが通じ合ってすらいない。
遠い遠い距離感の私たち。