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VRMMOセンキ  作者: あなたのお母様
第三章 青空へ向かって
128/151

エピローグ それぞれの新世界

 鈍い音が、階段の踊り場に何度も響いた。


「ふ……ふ……不当だ! “不当人事”だ! 俺が何をしたんだ――えぇ!?」


【個人的な部署異動の内示】を渡された後も、怒りを我慢しきれない男はひたすらに壁を蹴り飛ばしていた。


(一体俺が何をしたって言うんだ! “利用できるものを、最大限利用しただけ”じゃあないか! 成果をこれから確認して、報告するつもりだったのに! 一体どうしてこんなタイミングで上がこんな内示を、“俺個人”に対して出したんだッ‼)







何者かが、階段をゆっくりと降りてくる。


「木場田さん。“ご自身の行いに非が無かった”と本気で思っていらっしゃるのなら、あなたはとても幸せな方だ。そして――その狂った思考が他人を不幸にするんですね」


男――木場田が振り返って顔を上げる。

上階に向かう階段の上に、グレーのスーツを着た男が立っていた。

グレーのスーツの男は、階段の上に立ったままスーツのポケットから“小さな何か”を取り出して――木場田に差し出した。


「小型の――ICレコーダーだと!?」


「このタイプなら、あの病院で使われる医療機器に影響は出ないようなので。……事前に、調べて持ち歩いていたというわけです」


階段の下から躓きながらもICレコーダーを奪い取り、木場田がグレーのスーツの男を睨みつける。


「キ、キサマ……まさか――――」


「今回だけは、私が先回りして『会社の経営陣に報告をした』のですよ。あなたの部下として、あなたのやったことを成功したという結果としてではなく『他人を陥れようとした過程として』伝えたわけです」


叫びながら、木場田はICレコーダーを床に叩きつけて片足で踏み潰す。


「だからどうした!? 俺は今まで会社に対して確実に利益を出してきた! “この程度”のことで異動になるわけがないだろう!」


「確かに、貴方の肩を持つ役員は何人か居ました。彼らの社内の権力も凄まじかった。危うく経営者全員が丸めこまれそうになった。しかし、“今回貴方は何の成果も出せていない”ことが明らかになったおかげで、その内示に繋げることができたわけだ」


グレーのスーツの男の言葉で、木場田が素っ頓狂な声を上げた。


「――な、な、な、な、な、“何の成果も出せていない!?”」


「貴方の擁護をする役員のせいで、公の場で『貴方の“仕事っぷり”をリアルタイムでチェックすることになった』のですよ。しかし――あなたが接触した、あの少年のキャラクターは既に、貴方の渡した武器を持ってはいなかった」


冷や汗を流しながら、木場田が踊り場の壁に倒れ込む。


「バ……バババババカな! 馬鹿げている! あの剣を所持していないなんて――あ、あるわけがない! 他の準備は全て終わっていたんだぞ!? 後は俺が――上に報告する段階まで来ていたんだ!! “俺が渡した善意あくい”だぞ! 簡単に捨てられるようにはなっていなかったはずだ!」


「では、持ち主が戦闘不能になったということでしょうね」


「あ……あああああの死にかけのガキは、ゲームの中でも“ほとんど無敵になれるはず”だった! 俺の考えた最強のクノスティンツァと同じステータスなんだぞ! そんな短時間で敗北して武器を失えるわけがないッ!」


「“前任者のあの人”が昔言ってましたね。『馬鹿げた冗談みたいなことが起こるからこそゲームは楽しい』と。確かに馬鹿げていますが――しかし、本当に“何らかの奇跡が起きた”んでしょうね」


「やかましいッ! …………俺の前で……“アイツ”の話をするんじゃないッ!」


怒号と共に再び木場田が壁を蹴とばす。大きな音が階段全体に響いた。


「つまり――木場田さん。あなたの“功績”は今回どこにも残らなかったんです。“あなたがやろうとしたことだけ”が残った! あなたは、言っていましたよね? 『前任者の“あの人”と比べて自分が周囲に評価されない理由が理解できない』――と。貴方の異動先は、“実力が正しく評価される部署”らしいです。良かったではないですか? これで――あなたは経営陣にゴマを擦らなくても良くなった」


「俺が……このままで……済ますと思うか! キサマ…………俺に歯向かったらどうなるか、わかっているんだろうな!」


「この会社で、あなたの手によって立場を追われた人間は沢山いる。正直、怖かったですよ。でも、杞憂に終わった! 既に部署を異動したあなたに、私に対する人事評価を下す権限はない!」


男の主張に何も言い返せずに、木場田は地団太を踏む。


「なぜだ⁉ ただ――死人みたいな目で……俺の横に突っ立っていただけの貴様が……前任者のアイツの意思の“残りカス”みたいなキサマが……なぜ俺に反旗を翻したんだ! 今までずっと従順だっただろうが!! "俺が一体、何をした"っていうんだ!? えぇ?」


「……貴方の隣で貴方のやり方をずっと隣で見て来た人間としても、今回ばかりは放ってはおけなかった。そして――」


グレーのスーツの男が木場田に詰め寄る。



「――被害者ぶるのもいい加減にしろッ!」


「……な……な……な……な……に!?」











「アンタには、自身が行ったことがどれだけの悪事かすら理解できていないようだ! だから直接言ってやる! あんな小さな子どもの人権を軽視して、自己の利益を優先して押し通そうとした! それは、会社全体の信用すら失いかねない非道な行為だ! 言語道断だ――――――“恥を知れ"ッ! お前はゲーム開発者としても、人としても失格だ! 貴様は前任者の“あの人”の足元にも及ばないッ!」











その言葉を受けた木場田が――


「ぬ――ぬ―――――――ぬぬ…………ぬおおおおおおお………………お……おお………………」


――ゆっくりと床に座り込み、地面に両手をつく。








「……………………おおおおおおお。おおおおおおおおおんぎゃゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


それから、踊り場に寝そべって叫び始める。

死にかけのゴキブリのように激しくのたうち回りながら、自らの髪の毛を執拗に毟り始めた。

男の怒りは、収まる気配がなかった。



「んどぅぅうううううう……………………わぅわぅ……あぁぁゎゎうわゎっゎ………………………………どわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


さらに大きく叫びながら立ち上がり、怒りで体全体を痙攣させながら階段の上に居るグレーの男に向かって突進していく。


一方でグレーのスーツの男はこうなること覚悟をしていたのか、両目を瞑っていた。

覚悟を決めたその毅然とした態度が、木場田という男をさらに動揺させた。








『ここで相手を殴ればすべてが終わってしまう』




彼は頭の片隅でその事実をきちんと理解してしまったのかもしれない――









――こうして彼は、行き場を失った自らの握りこぶしを、よりにもよって“階段の手すりの角に向かって、渾身の力で叩きつけてしまった”のであった。










その結果――“何かが連続で複雑に折れたような嫌な音“が踊り場に大きく鳴り響く。

最早踊り場で叫ぶものは、誰も居なかった。

小さな呻き声を上げながら、木場田知亜貴は自らの右手を抱えて床に膝をついた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









 ハイダニアの城壁の脇には、緑地化されている狭くて薄暗い区画がある。

俺はそこで、ゴーグルをかけたまま地面に仰向けに寝そべっていた。

時間帯は夜。空は真っ暗で、無風だった。


ただ、丸くて巨大な月だけが自分を見下ろしている。


「〔最近――コミュニティボードで【開発者としての木場田の返信】を一切見かけなくなった。それまでアイツがしていた"ユーザーに対するムカつく返答"も、別のまともな担当者がやるようになっただろ? ひょっとしてアイツ――左遷でもされたんじゃないか?〕」


「〔そのご質問に対して、お答えすることはできませんが――〕」


GM専用の会話チャンネルでロクゴーが質問に答える。


「〔――少なくとも“あのようなこと”は二度と起こらない環境が構築されました〕」


「〔“私権で武器を勝手に作って他人に渡すような行為”か……〕」


「〔……………………〕」


“ゲームマスターロクゴー”からの返事は返ってこない。

その代わりに肯定する意図があったのか、小さな咳払いが聞こえてくる。

懲戒免職が撤回された今、内部情報を漏らすわけにもいかないのだろう。

彼女はかつての遠回しな物言い――“GMモード”に入ったのかもしれない。



木場田知亜貴という男の末路を熟考する。

ひょっとすると、彼の悪行を隣で見ていた人間が自滅覚悟の内部告発でもしたのかもしれない。


ああいうサイコな人間は全てを失っても怒りで再起してくる。

無能であっても経歴だけで他のゲーム会社に採用されて、再び他人を平気で傷つける。法律で罰することも難しい。

だから、運営会社はアイツに対して“微妙な地位”を与えておいて、ギリギリ自主退社されない程度に延々飼い殺しにしておくつもりなのかもしれない。

そんな処罰を下すなんて、会社の利益にもならないし、お人好しもいいところだが――








「〔“世の中捨てたもんじゃない”――か〕」





――同時に『プライドが高く、自己主張が激しい』とプレイヤーに評されるヤツにとって、これは考えうる最高の罰だろう。


「〔それで――前も質問したことだが、このゲームはもう安全なんだろうな?〕」


「〔安全――とは?〕」


「〔黒幕――“このゲームに不正な技術でアクセスをする第三者”による悪事は起きないのか、きちんと対策をしたのかってことを知りたい〕」


「〔現行、120%の安心安全を保証できるものではありません〕」


「〔――じゃあ、100%の保証は?〕」


再び、小さな咳払いが聞こえてくる。

やはり対策はされているようだ。


「〔当たり前の話か……今回の事件で“ゲームと現実世界の関連性”を示すことができたわけだしな〕」


既に運営会社は警察に立ち入られて針の筵。

これ以上、大事おおごとになったら会社の経営、ひいてはゲームそのものが完全に終わる。

対策をせざるを得なかったのだろう。



「〔何にせよ、ありがとう。アンタには本当に感謝している。最後に、監獄にぶち込まれたテツヲさんのことをよろしく頼む。あの人のことだ。監獄でのんびりしているんだろ?〕」


「〔残念ながら、処罰内容についてお答えすることはできません。GMとして、ゲーム内規約の違反者を処罰するという姿勢を崩すわけにはいかないとだけお答えさせていただきます〕」


「〔じゃあ、"一人の人間"としては?〕」


「〔…………………………善処します〕」


ロクゴーがボソりと呟く。そこには一瞬だけ、“チームメンバーのロック”が居た。


(善処する……か)


どんな結末になろうともどんな処罰を受けても、テツヲさんはきっと満足なのだろう。

どれだけ自分の生き方が破綻していようとも、あの人は"心の底からこれで良いのだと思えている"。

自分には到底真似できないくらいぶっ飛んでいて――だからこそ、俺はあの人が好きなのだ。


「〔こちらからも最後に一言、よろしいでしょうか?〕」


「〔………………なんだい?〕」







「〔――貴重な経験をさせていただきました。あなた方には、とても感謝しています。また何かあれば、いつでもGMコールをご利用ください〕」




その言葉とともに、会話は終わった。

これがきっと、俺達にとって彼女に対する最後のGMコールになるだろう。








――そうなってほしいと願っている。




俺は寝そべったまま一瞬だけ軽く笑ったが、しかしそんな表情も長くは続かなかった。










 考えがまとまらない。

少女の救出は劇的だが、同時に“出来過ぎている”ようにも感じる。

ひょっとするとデモンは、ある程度見つけやすい場所に放置されていたのかもしれない。

つまり黒幕は、予めデモンが自分の手を離れる可能性すら加味していたのか?


(一体、何のために?)


レット曰く、黒幕は【三回目】だと言っていた。


ひょっとするとフォルゲンスで起きた“あの事件”は、誰かの願いによって起きたものだったのだろうか?

ならばそれは一体"誰のゲーム"だったのか?


いや……これ以上考えても仕方ない。

彼女デモンの安全は名実ともに保障された。それは間違いない。


そして、黒幕――あのE・Vとやらが神でもない限りはこれ以上この世界で悪さはできないだろう。


(……………………………………)


自分は、そう“信じていたいだけ”なのかもしれない。

冒険に出て行ったレットを止めることができなかった自分を安心させるために、そう言い聞かせているだけなのかもしれない。


ひょっとすると、安全な場所ゲームなどどこにもないのかもしれない。


何よりも――安全になったのは仮想世界の中だけだ。

今この瞬間も、現実世界は悪化していっているように見える。








そんな状態で、結局俺は――












『良かったじゃねえかクリア? このゲームがサービス終了しなくてよ! お前も結局それが一番だと思っているんだろ?』


頭の中で、居なくなってしまった男の辛辣な一言が思い返される。









「お前の言う通りさベルシー。……本当に、安心してしまっているよ。――まだまだ、“ゲームが続く”ってことがわかってさ」


誰にも聞こえないようにそう呟いて、俺は再び月を見つめた。














「お月様が……………………まんまるですねー」


声が聞こえて視線を動かすと、寝ている自分の顔を覗き込むかのようにワサビさんが立っていた。


「ああ……ワサビさんか。――そうだね」


適当に相槌を打つ。

ワサビさんが、寝そべっている自分の真横にゆっくりと正座する。


……座る距離が、少し近い気がする。

逆立っている自分の髪先が、座り込んだワサビさんの太腿に触れた。


「……ワサビさん。本当にお疲れ様。手伝ってもらって助かったよ。一時期は、本当にどうなるかと思った」


「気にしないでくださいー。あの……クリアさん」


「――何?」


「………………地面に直接横たわっていると、ぐっすり眠ったり、リラックスできなくないかなって……ちょこっと思うのですけどー」


「いや、大丈夫。心配ない。……すっかり慣れたよ」


適当に答えて、真っ黒な空を見つめる。


再び思索にふける。

今回の事件で皆が、収まるべき場所に――“向かうべき場所”に向かっていった。


新しい希望を得た者。自分の本懐を成し遂げた者。前に進む目的を手に入れた者。

ゲームを去っていった者。自らの在り方を模索しに行方を眩ました者。依然変わりなく前に進み続ける者。

野望を暴かれ失墜した者。日常に還っていった者。変わらずに日常を謳歌する者。







そんな人々の中で、俺は――俺だけが――――










「クリアさんクリアさん。あの……明日のご予定って――――何かあるんですか?」














「……………………明日は、“やることがたくさんある”よ。新しく実装されるコンテンツの装備品のチェックに、PVP用の装備の調整。対人の流行の研究の為に外部掲示板を見たり、コミュニティボードで情報を集めたり、後は――そうだ……ワサビさん」


「は……はい! な、なんでしょー?」


俺が視線を上げると、正座をしているワサビさんの目はなぜか泳いでいた。















「――看護師の勉強、ちゃんと進んでいる?」


俺の質問を受けて、ぱちくりと瞬きをした後にワサビさんは笑顔で答える。


「はい。今はまだ学校に通っています。そのうち忙しくなると思うのですけど。それはちょこっと先のことになると思いますー」


「そうか……それは良かった」


俺は上半身をもたげてからゆっくりと立ち上がる。


「ワサビさん。――“視線を感じること”ってあるかい?」


「視線――ですかー?」


俺は頭頂部にくっついた芝生の草を手で払いながら質問する。


「最初は“一人”だったんだけどな。最近じゃ――二人に見られているような気がするんだよな」


「……………………」


ワサビさんは首を傾げて、何も言わなかった。


「いや……何でもない。今の言葉は、聞き流しておいてほしい」


そう言って、俺は一人で歩き出す。


「あ…………クリアさん――どちらに行かれるんですか?」








「………………俺は――どこにも行かないよ。“どこにも”」











あてもなく――真っ暗な夜の中。城下町を歩く。

風は一切吹かない。無風のままだ。


孤独感だけが強まる。

自分は一体、ここで何をしているんだろうという自責の念に駆られ続ける。








わかっている。








自分自身が同じ問答を繰り返しているということを。

自分だけが、同じ場所をぐるぐる回っているということを。






『君のような無気力な夢遊病者おとな達のおかげで、そこに居るような純朴な少年の安息の冒険の舞台は既に無くなりつつある』






頭の中で声がずっと響いている。







『こんな真っ暗な世の中で、君のような人間は、一体“いつまでゲームで遊んでいるつもりなんだ?”』





「………………俺に一体どうしろっていうんだよ。どうしろって……。もしも、何をやるべきかわかったところで……できるわけがない……俺には……」


ぼうっとした表情で街を歩き始める。













ふと、とあるお話が頭に浮かんだ。

それはこの世界の本の中で読める。ちょっとした小話だった。












『囚人が、牢獄の中で目を覚ます。


彼はとても運が良かった。窓は自由に開くし、出入りもできる。

夜目の効く囚人は、外の様子を見てみようと石造りの牢獄の窓を開けて顔を出した。






窓の外を見て分かった。牢獄の外は雪原だった。

自分に向かって吹き込んでくる風が、予想していた以上に冷たくて、目を開いて外を見るのが精いっぱいだ。

ずっと外を見ていると、眼球から脳味噌と身体が、ガチガチに凍ってしまいそうになる。

このまま窓を開けていると部屋の中まで凍りそうで恐ろしい。


「一旦中に戻ろう――外がどこまで行っても雪原なのは良くわかった!」


窓を閉めてから……さて――外に出た後、先の見えない雪原をどう抜け出せるのか男はさっぱり予想がつかない。

雪をかき分けて進むのか。それとも、雪を溶かして進むのか。


「外をよく見て、よく考えないといけない。外に出た後のことを。外の吹雪が明日にはどうなっていくのかを。もっともっと知らなきゃいけない」


準備をするために、男は窓を閉めてから身体をきっちり暖めた。


「外を見ても脳味噌が凍らないように、しっかり目を覆わなければ!」


男はどこからともなく取り出した真っ黒な眼帯を、手慣れた様子で目に掛ける。

そのうち眠くなってきて、男は自ら作った闇の中で夢うつつに呟いた。








「素晴らしい名案を思いついた。どうやってこの雪原から出るのか考えるのは……………………愉快な夢を見てからにしよう」




















囚人が、牢獄の中で目を覚ます』
















――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








 ……クリアさん、本当にお疲れ様でした。

私、本当は知っているんですよ。

あなたが繊細なのに、色んなものをいつも自分一人で全部抱えてずっとずっと無理をしているってことを。

昔から……あなたはずっとそうだったんですよね。


今回だってきっとそう。

貴方の心は誰よりも辛い地獄の中にいて。

ボロボロになっていて、きっと誰よりも深く深く傷ついている。


私は、一人で抱えるの良くないなって思うんです。

だから私に全部、貴方の悩みを聞かせて欲しいなって……本当はそう思っています。


本当は、私の方から貴方に対してもっともっと寄り添えたら――癒すことができたら良いのだけれど………………。


でも、私では貴方の隣にはいられません。

やっぱり、歩いていくあなたを後ろから見つめていることしかできないみたいです。


――――ごめんなさい。















――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――












 この時期にしては日差しが、とても眩しい。

買ったばかりの型落ちした携帯端末を取り出して――“国際電話”は高すぎるので、ゲーマー用のボイスチャットアプリケーションを起動させる。

登録してあるアカウントを選択してアプリケーションにログインをする。

事前に作った“二人だけの通話用のサーバー”を選択して。

通話チャンネルに“Ihtro”の名前があることを確認した後に、通話用のボイスチャンネルに入室する。

外の景色を見つめながら、自分が端末を耳に近づける。


「あ、あー。約束した時間通り来たぜ? ――どうだ? ちゃんと聞こえているか?」


《大丈夫。ばっちり聞こえているよ。トヴって、こういうアプリでの通話は慣れているんじゃないの?》


「いいや全然。友達がいなかったからな。そういうお前はどうなんだ?」


《実は――――僕も初めてなんだ》


「そうか! なら、これが“記念すべき最初の日”だな! “そっちの病院”はどうだ?」


《色んな人が話しかけてくれるよ。だけどVRゲームは禁止だからログインはもうできないかな。……環境を変えることができたのはトヴが、父さんと母さんの前で手術の説得をしてくれたおかげだよ――本当に、ありがとう》


「つっても、カッコよくとは言えなかったけど……お前が手術に前向きに挑んでくれるなら自分はなんだってするさ。それにさ、ご両親はちょっと仲違いしてただけだったじゃないか。親父さんがお前をネタに本を書いていたのも、結局お前の手術費を稼ぐつもりだった訳だし」


そう、全てはボタンの掛け違いだった。

お互いがギクシャクして、ただ一時的にひたすら上手く行っていなかっただけだった。

腹を割って話したらわかったのだ。そこには冷たい大人なんて、どこにもいなかった。


《格好良かったよ! 父さんと母さんの前で、泣いて土下座なんかしてくれたりして――》


「――その時のことはもう掘り返さないでくれよ! 自分からしたら、たまったもんじゃないんだって!!」


《で、でも本当に恰好良かったんだよ!》


二人で軽く笑いあってからも、自分とイートロの談笑は絶えることなく続いていく。

そうして二人で過ごせば過ごすほどに、実感が湧いてくる。







『もしもあのまま『ゲーム』を続けていたら、間違いなく――こんな楽しい時間は訪れていなかった』って。








《そういえば、僕が“あの病院”を出ていく前に、あの元ディレクターの同僚の人が来たよ。グレーのスーツの――》


「――おい。まさかまたお前に何か――」


《――違う違う! 『自分の“元”上司が本当に最低なことをした』って謝りに来てくれたんだ。あと、あの『元ディレクターの人を“煮るなり焼くなり”どうするのか、全て君が決めて良い』って言ってきたんだけど――》


「まさか、懲戒処分とか――土下座とかさせたのか?」


《違うよ! “興味ないし。関わるつもりもないからもう放っておいて欲しい”って言ったんだ。そしたら、その人も“それが一番だ”って言ってたよ。『ああいう人を刺激すると後が面倒くさいから、後は私に任せて欲しい』って。それと、トヴに『抑えつけて悪かった』って『あの時、あの場で自分の上司に対して怒ることができなくて本当に悪かった』って――伝えてほしいって言ってた》


「いや、それは良いさ。今の自分のことを考えると、あそこで暴力沙汰なんて起こしていたら今頃大変なことになっていたはずだし……“あの場で怒れなかった”っていうのも、葛藤っていうか――立場ってものがあったんだろうよ……」


《ねぇ。トヴ》


「なんだ?」











《優しい大人って、ちゃんと周りにいたんだね》


「ああ――そうだな」


自分の頭の中で――








『世の中の何もかもが冷たいわけじゃない! ――全てが地獄なんかじゃないッ!』








――激励するかのような“誰か”の声が聞こえた気がして、不思議と笑みが浮かんだ。


《後は――ログインした時に“あのクリアさん”から手紙が届いたんだ。僕らに“『ゲーム』を提案した人”のことについて聞かれたんだけど――》


「きちんと、本当のことを伝えたんだよな?」


《もちろんだよ。“僕もトヴも何も知らないし連絡先がどうやっても特定できない”って。そしたら、それ以上何も聞かれなかった。ひょっとすると、僕らのことを信用してくれたのかも。レットさんと連絡を取りたいって手紙には書いたんだけど。『今は落ち込んでいるからしばらくの間は、そっとしておいて欲しい』って……》


「そうか……ってことは、やっぱりアイツも知っちまったんだろうな……」


エールゲルムの世界を去った後、自分とイートロは長い間二人きりで話をした。










ゲームの中で起きたこと。


これからの自分達のこと。


そしてイートロから教えられた。

――イートロの傍に“居てくれたあの人”の来歴を。


「レットのことは……気がかりといえば気がかりだけどよ。今の自分たちにできることはレットと“あの人”の想いに答えることなんじゃないかって思うんだ。だから――自分もお前も、今は――前に進むしかねえんだろうな」


《わかっているよ。だから、僕はここにいるんだ……。でもさ……トヴは“一歩目”にしては、本当にとんでもないことするよね。今はどこにいるの?》






































「――船の上だ。“もうすぐ出発する”」


デッキの上に居る自分の顔に向かって、冷たい潮風が吹いてくる。

着ているコートが風に靡く。


青空には雲一つない。

凱旋には最高の門出だと思う。


「お前だってもう海外に飛んで行ったんだ。自分もそんなお前に勇気をもらった。だから、“前”に進まなきゃいけない」


《やっぱり、トヴはすごいよ……。いきなり思い立って、海外に出ていくだなんて……》


「当たり前だろ? プロゲーマーっていうのは基本的に馬鹿なんだよ。だから、もっと開き直って徹底的な馬鹿になってみようと思ったってだけさ」


《でも一人で海外に出れるものなの? 16歳が成年として認められるにはもうちょっと時間がかかるって話だけど……》


「いや、自分は一人ってわけじゃない。実は――“海外の新チームの誘い”が来たんだ。自分のこの国でのゲームプレイをちゃーんと、見てくれる人って居たってことだな」


《じゃあ、今度は新しいチームに参加するんだね。そのチームはその……大丈夫なところなの? 信用できる?》


「とりあえず今の行き先は“一時的”なものさ。相手が信用に足る相手かをきちんと見定めて“将来を契る”ことにするつもりだ。確かに、どう足掻いても企業とプロゲーマーは切れない。スポンサーだろうが広告費だろうが。生きていけないけど、“その全てが冷たい”だなんて思ったりしないことにした」


そう言い切った後に、苦い過去を思い返す。


「……自分の居た世界は"自分にとっては確かにクソだった"。それは漫然とした事実さ。だけど……これは例え話なんだけどさ。もしも自分が空を飛ぶ生き物だったとしよう。自分が弱っちい小鳥だろうが、強大な天使だろうが――」


デッキの手すりから僅かに身を乗り出して、真下に広がる真っ黒な海を見つめる。


「――海の中にいちゃどう足掻いても溺れ死ぬだけだ。結局、自分の可能性や実力が高かろうが低かろうが“場所が悪い”んじゃ意味がない」


今度は、顔を見上げて青空を見つめる。


「――だから、自分の能力を最大限に発揮できる場所を見つける為に、環境を変えるべきだと思ったのさ!」


《全てを過去にして……全てを置き去りにして――全てをやり直すんだね》


「――いや、実は……前のジャケットだけは今も着ているんだ。穴を綺麗に縫って……戒めとして上着の下に着こんでいる。……ここに“何を縫い付けるのか”を、自分で決めれるくらいにスーパービッグになればいいっていう覚悟でな! 千切ったスポンサーのロゴも持ってきていたんで――目の前の海に、バーっと放り投げようとも思ったけど、環境破壊はしたくないからな。――船のゴミ箱に綺麗さっぱりぶち込んじまった!」


《それは――気分爽快かも!》


二人で笑いあう。


「"環境を変える"といえば……お前はどうなんだイートロ。新しい環境には慣れたのか?」


《それは……まあね。でも――僕――――――》


言い淀むイートロの声に背筋が凍る。


「お……おい。もしかして、お前を虐めたりするような嫌な奴が居るのか?」


















《ち……違うよ。その――――実は、エンジェルの動画を見ていたら……隣の病室の……ゲーマーの……女の子と――――仲良くなって……》


自分は耐え切れず、思い切り噴き出してから笑い声を上げた。


「お……おいおい! じ、自分は……エ、エンジェルだからって。こ“恋のキューピッド”までやるつもりはないぜ!?」


《わ、笑わないでよ! こ、言葉がわからなくて大変なんだよ! エンジェルのゲームプレイを身振り手振りで説明したら喜んでくれてさ……》


「――話題にしたいから、“自分の今後を知りたい”と?」


《“話題にしなくても知りたい”よ! だって、僕が一番のファンだもん!》


「わかったわかった。じゃあ、ちょっとだけ教えてやるよ。メンバーに負担がかからないようにきちんと補欠枠があって全部で七人! 新しいチームはColorsと同じ形式で、“全員が違う色のユニフォームを着る”んだとさ。自分で丁度フルメンバーの“七色目”になるらしい」


《へぇ~……! なんか、虹みたいだね》


「ああ――だから待ってろよ! すぐにチームごと活躍して有名になって、お前ら“二人”の瞳に虹を掛けてやるさ!」



















《うわぁお……トヴって――意外とロマンチストなんだね~》


冷静なツッコミをされて、自分の顔がみるみる赤くなっていく。


「と、ととととにかくだ! それはあくまでチームとしての目標だからな! こ、個人としては見たことのないゲーマーにでもなって色んな方法で大金稼ぐつもりでいる! んで――世界最強の慈善事業家でも目指すさ!」


《す、すごいね。怖いとか思わないの?》


「…………“恐怖はある”。それは事実だ。だけど、もう“めげないし折れない”。『どんな時でも諦めない心の強いやつ』と戦って――自分の大切な心の芯を思い出せたし――何より、希望を手に入れたお前に……勇気をもらったからな」


《そっか――そうだよね》







 そしていつか――戻ることができたら良いと思う。

自分の大切な原点を思い出させてくれた、あの世界に。

自分を打ち倒し地獄から救い出して、イートロに希望を与えてくれた人達が居た――あの美しく素晴らしい世界に。


《よし――僕も頑張るよ。そろそろ通話を切るね。もうすぐ手術の時間だから。いろいろ準備をしないといけないんだ》


「ああ――頑張れよ。――自分も頑張るからな!」


冷たい潮風が顔に当たる。

それでも、心配はしていない。


この激しい向かい風も、丸一日かけて現地に到着する頃には――きっと海からの追い風になってくれているはずだから。


迷いもない。

日の光が自分の旅路を照らしているから。





だから、どんなに冷たい向かい風が来ようと怯みはなしない。

だけど、そんな自分に――















「……世間は、浮き足立っていると言うかもしれない」


そう呟いて、自分が真っ青な空に向かって力強く指を指す。


「ならばいっそ、自分はこの世界で、誰も見たことの無いを高みを目指す! 雲を超えた天の上の――そのさらに上へ!」









自らの向かう道を祝福するかのように、出航の汽笛が鳴り響く。











――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
































































































































出店のテントの中で、フェアリーの男性キャラクターが――


「――客が来ねえぇぇぇえ!」


――甲高い声で、勢い良くそう言い放った。


「客が来ねえから口コミも広がらねえ! だから客が来なくてゴールドも稼げねえ! 地獄のループだ!」


羽をバタつかせながら苛立ったフェアリーが、テントの中央の椅子を蹴っ飛ばす。

椅子に座ってテーブルの上に置いてある水晶玉に突っ伏すように居眠りしていたキャットの女性キャラクターは、フェアリーの蹴りで飛び跳ねるように目を覚ました。


「な……なによ~。いきなり起こさないでよ~。いい夢見てたのにぃ……」


まぶたを擦るキャットを、フェアリーが呆れたような表情で見つめる。


「お前な……。自分の勘に自信があるなら。占いの結果をもっと詳しく細かく、客に伝える努力をしてくれよ……」


「は、はっきりした物言いなんてできないわよ~。そもそも『満足した結果を出せない場合は全額返金します』なんていう、変なルールを作ったのが悪いのよ~。これさえなければ、信用なんて得られていなくてもお金なんてとっくにたまっていたのにぃ~……」


「不正確な情報を相手に伝えるなんて、『ジャーナリズム的に言えば失格』だろ!」


「だ……だったらなんで占い稼業なんて始めたのよ~。もぉお~」


「他に手段がないからだろ! 今のままじゃ、二人で長旅をする旅費すら足りない! 別の大陸にある情報支社への再就職の目処が立たない! 金を稼ぐ手段は他にもあったのに、どれもこれも――」


「――“ずっと同行している私に、ゲームのセンスが欠片もないからできなかった“んでしょ~? ……わかっているわよ~」


大きな欠伸をして伸びをするキャットを見て、フェアリーはため息をつく。

そんな彼に伺いを立てるようにおずおずとキャットは問いかけた。


「ねぇ……ひょっとして――フォルゲンスの情報支社で、ず~っと働けていればよかったって後悔している?」


「――いいや、あそこを追い出されたことに悔いはねえよ。とにかく、気を取り直してだ――要は、お前の勘が当たるってことを証明できれば良いんだよな? ならとりあえず、試しに俺を占ってみろよ」


フェアリーの指示を受けたキャットが、目を瞑って両手を伸ばす。

背を伸ばしつつ椅子に正座する。

それからテーブルの上にある水晶玉を、両手で玉遊びのように転がして――目を開いた。













「あ……あなたは今日…………な――――――“懐かしいあの人”と出会うでっしょ~!」














キャットの占いを聞いて、フェアリーが両のこぶしを握ってわなわなと震え始める。


「――お前な。そんな当たっているかどうかわからない適当な占いなら、俺にだってできるぞ! お前の勘を信じているんだから、もうちょっとわかりやすく説明しろっての!」


「めぅう~。こんなのはなんとなく思いついたインスピレーションなんだから、私にだって意味がわっかんないわよ~」


そこで――





























「あの――ちょっと良いかしら?」






――テントの中に、一人の女性キャラクターが入ってきた。

しかし、初心者用の重鎧に全身を身を包んでいて、顔も名前も表情も、種族すらもわからない。


「実は私――"人探し"をしているのだけれど……」


女性キャラの言葉を受けて、フェアリーが軽く跳ねて指を鳴らす。


「よっしゃ! 待ちに待った客が来たぞ!」 


「はいはい~。じゃあ~今日は私に"その人の場所"を一か八か占って欲しいのね~」


「そ、そうじゃなくて――」


重鎧の女性は首を横に振ってから、インベントリーに入っていた新聞記事を取り出す。









「――私、この『新聞記事に載っている男の子』を探しているの。この記事を――あなた達が書いたって、人伝手に聞いたから……」


その新聞記事を見た途端、それまで笑っていたフェアリーの表情が途端に険しくなる。


「…………その新聞記事ならここで"何度も見せられた"ぜ。――"記事に載っている名前のプレイヤー"なら、そこら辺に一杯いるだろ?」


「それが――どれも"名前と外見は似ているけど私が探している男の子と全然違う"みたいなの。私は、『この記事に載っている男の子』がどこに行ったか知りたくて……。私、その子とは以前までフレンドだったのだけれど、キャラクターデータどころかアカウントまで完全に消してしまって……。最近になって、最初からゲームをやり直したばかりで、連絡が取れなくってしまって困っていて……」


新聞記事と目の前の女性キャラクターの顔を交互に見つめながら、フェアリーが険しい表情のまま質問を飛ばす。


「で――お宅はコイツを探して、”どうするつもり”なんだ?」


「私――どうしても、伝えないといけないことがあるの」


フェアリーが険しい表情のまま、重装備を着た女性キャラクターの全身を改めて見つめなおす。


「……結論から言うとな。アンタ超~絶怪しいぜ! 俺達、"初心者の装備したヤバい奴"に恐ろしい目にあってから警戒をしているんだ。実際、アンタと"似たような手口"でこの記事のキャラクターを探しているって俺たちに近づいてきた女プレイヤーが居たんだが――そいつの正体は復讐目的のPKプレイヤーだったよ。アンタ――なんて名前だ? ヘルムを外して、顔を見せてみろよ。その見た目じゃ、何の職業かもさっぱりわからねえ」


「そ――それは……ごめんなさい。どうしても言えないの。顔も……見せられないわ。その――ちょっと昔に色々あって…………自衛のために、理由もなく知り合いでも無い人に、顔や名前は極力見せないようにしているから……」


「ね、ねぇ……ちょっとちょっと~……」


自らの袖を背後から引っ張るキャットに対して、フェアリーが怪訝な表情で振り返る。


「(私……な~んかこの人、占ってあげた方が"良い気がする"のよね~…)」


「(お前な、この期に及んで金稼ぎか? 『関係者として、この件に関する情報を漏らすことは絶対にしない』ってちゃんと決めたろうが! 前のPKの女が来た時みたいに、適当なこと言って追い返すさ!)」


大きく咳払いをしてから、フェアリーが女性キャラに向き直る。


「この件に関して、"名前も顔もわからない客"に対して教えることなんて何もないぜ。この記事のキャラクターは俺達とは――――もうほとんど無関係だが、俺たちが原因でコイツが狙われるのは"寝覚めが悪い"しな! ――まあ、俺達は本当に何も知らねえんだけど」


フェアリーが女性に対して新聞記事を突き返す。

新聞記事を受け取ったまま立ち退かない様子の女性を見て、あしらう様にフェアリーが言い放った。


「――そういえば最近、"似た名前のキャラクター達の集団"がスミシィフ地方の雪山に向かったって話を聞いたかな。……後は何も知らねえよ。ホラ――さっさと帰った帰った!」











 かくして、重装備の女性キャラクターは、フェアリーから追い出されるようにテントの外に出た。

それから、周囲に誰もいないことを確認して――ヘルムを脱いで真っ青な天を仰ぐ。





“少女の水色の髪“が、風に靡いた。





























「――――――レットくん。どこに行ってしまったのかしら?」




















《 To Be contined 》













三章の最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


これ以降の章については執筆途中のため、展開や描写に粗がある可能性があります。

「完成版をしっかり読みたい」という方は、章がまとまり次第、また戻ってきていただけると幸いです。


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[良い点] お久しぶりです、久しぶりに時間が取れたので最初から三章終わりまで読み返したんですが、起承転結の流れが美しくて感動します。 加筆で新たな情報が補足されてて良かったです。 アリス再登場は本当に…
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