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第一章 出会いそして少女 8



「・・・ぉぃ・・・」



誰かに呼ばれてる。



「・・・おい大丈夫か」



声が鮮明になる。



「おい、しっかりしろって。くっ・・・マズイ、立てるか?」


「な・・・なみ・・・」


「何言ってんだ、来るぞ」



トシヤはレイを背負って攻撃をかわした。



「はあっはあ・・・、なあレイあいつの弱点わかってんだろ」


「・・・うん」


「なら教えろ。倒してくるからさ」


「・・・あなたじゃムリ」


「んなこと言ってる場合かよ」



答えながらもギリギリのところで鋭い爪の攻撃をかわしていた。



「しょうがねえな、じゃあここでおとなしくしてろよ」



トシヤはレイを近くに寝かせ剣を抜いた。


青に輝くファルシオン。


そしてうっすら紅く見える属性を表すエフェクト。


そんな事お構いなしに襲ってくる鋭い爪。


ガキン!と響く金属音。


じりじりとにらみ合う両者。


トシヤはすぐさま剣を爪から放し、腕に切りかかった。


血飛沫があがるものの微々たるダメージ。


気にする様子もなく次の爪攻撃がくる。


大きく後退して躱す。


腕、脇腹、背中、足と攻撃するがなかなか決定的なダメージが決まらない。



「おい、そろそろ元気になっただろ。早く教えろ」


「・・・やっぱり私が」



重い身体を必死に起こし、自分を奮い立たせる。


が、精神異常「恐怖」の効果により立つことができなかった。


悔しい、情けないそんなことをふと思い目から一筋の滴が・・・



「おい、泣くならせめて弱点言ってから泣け」


「・・・泣いてなんか・・・ないよ」



涙をふきとりあえず壁に背もたれた。



「・・・弱点は首の後ろ」


「了解」



すると、ファルシオンに紅蓮の炎が纏った。



「いくぜ」



すぐさま後ろにまわり、首に照準を定めた。



「俺の初めての属性攻撃、クリムゾンソード」



高らかに攻撃名を言うのと同時に紅く染まった剣が首をえぐるように食い込んだ。


グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


ラッキングモールの悲鳴にも似た痛ましい叫びがけたたましく響く。


ズシンとラッキングモールが力なく倒れる。



「ふうっ、終わったか・・・」



私は言葉が出なかった。


あのブラットバットでさえ手こずってた奴がラッキングモールを一撃で仕留めるなんて…


あんなにも腑抜けで、あんなにも変態で、あんなにも・・・



「なあ、レイ聞こえてるぞ」


「・・・な、何も言ってない」


「いや、腑抜けだの変態だの言ってたじゃないか。俺の事どれだけバカにしてんだよ」



トシヤはため息交じりに笑った。



「あんま変なこと言うと置いていくぞ」


「・・・むう」



私はトシヤにおぶわれているので抵抗はできないのだ。



「それよりも焦ったぜ、レイが飛ばされたときは」


「・・・す、少し腕が鈍ってただけ」


「ずっとここにいて戦ってたのにか?」


「・・・むう」


「はは、ごめんな。少しからかいすぎた」



でも私はこのやりとりがとても楽しいと感じていた。


この世界に来て誰とも話していなかったから。



「そろそろ治ったか、その精神異常ってやつは」


「・・・もう少し」


「そうか・・・」



治ってないフリをした。


もう少しトシヤの温もりを感じたかった。


またあの時の・・・あの時の気持ちと一緒だ。


今ならこの気持ちがわかる気がする。


この気持ちを伝えるべきなのだろうか・・・


考えてるとトシヤにおぶわれていることが急に恥ずかしくなって顔が紅潮した。


しかしこの体勢からしてトシヤに顔は見られないが、やはり自分の気持ちがわかってしまった以上恥ずかしさを隠せない。


背中に顔をうずめ落ち着こうとしたが、なかなか頭から離れない。



「よし、着いたぞレイ。ここでいいんだよな?」


「ひゃっ」



思わず素っ頓狂な声が出た。



「どうしたんだ、レイ」


「・・・なんでもない」



穴があったら入りたい。



「とりあえず降ろすぞ」


「・・・ダメ」


「なんでだ?」


「・・・いいから」



無駄に緊張感がこみ上げてくる。


気持ちを伝えるべきかどうか・・・



「あの、重いんですが・・・」


「・・・重いとか女の子に言ったらダメ」



鋭いチョップがさく裂する。



「痛い・・・」


「・・・しばらくはこのまま」



猶予時間が欲しかった、どうすべきかの・・・


この時を逃すともう会えないのではないか、これっきりではないかと考え私は一つの決断をした。


伝えると・・・



「・・・あのね、トシヤ」


「ん?なんだ」


「・・・えっと、その・・・」


「?」


「・・・トシヤの事が、す」


「す?」


「・・・す」



あーーーーー、やっぱりムリ。


恥ずかしすぎる。


今まで以上に顔が真っ赤で沸騰しそうなほどだ。



「なんだよ全く、もう降ろしていいか?」


「・・・うん」



トシヤはレイを降ろした。


レイは体操座りで太ももに顔をうずめていた。



「ふう・・・」



トシヤは軽く肩をたたきながら辺りを歩いた。


すると・・・


眩い光が目に入ってきた。


そこに向かって一心不乱に駆けていく。


その光の先には・・・






「で、レイはどうするんだ?」



レイはまだ迷っていた。


まだ伝えられていない気持ちが心の奥に潜んでいる。



「俺は次に進む。叶えたい願いがあるから」



でもまた会える気もする。



「そう、私はここに残る」


「そっか・・・じゃあここでお別れだな」


「うん。私も叶えたい願いができたから」



叶えたい願い、そうそれは・・・



「ありがとう、トシヤ」


「それはこっちのセリフだよレイ」



トシヤはポンとレイの頭に手を置く。


レイは少し照れた。



「縁があったらまたどこかでな」


「うん」



トシヤはその場をあとにした。




はあ、ついため息がもれてしまう。


もうトシヤの後ろ姿は見えない。


後悔はしてないはず・・・なのになんで涙が止まらないんだろう。


やっぱりトシヤと別れるのはつらく悲しい。


ホントはついていきたかった、トシヤのいろんなところを知りたかった。


トシヤの喜び、怒り、悲しみそのすべてを共有したかった。


でも、希望もくれた。


あなたのおかげで私の心の霧が晴れたような気がする。


私の心を溶かした。


そして本当の気持ちに気づかせてくれた。


トシヤ・・・好きだよ・・・





精神異常「恐怖」 プレイヤーのATK減少・一定時間の一部行動制限



プレイヤー  属性  LV

トシヤ    火   25

レイ     水   47



精神異常は出るたびに説明を加える予定です。


第1章完結です!

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