第一章 出会いそして少女 2
「うーん」
頭を抱えながら俊哉は身体を起こした。
「ここは…」
目の前には見たこともない景色が広がっていた。
左には膝辺りまで生えた草原、右には3メートル程の木が広がった森林。
その境界に立っていた。
訳も分からず戸惑っていると、草原の方から爆発音が聞こえてきた。
この状況変化に頭が追いついていないが、爆発が気になったのでそちらの方に向かった。
向かって走っていると、所々草が燃えていた。
するとまた爆発が起こった。
見るとドラゴンと人が対峙していた。
爆発の原因は言わずもがなドラゴンがやったとわかるが、あからさまに人が襲われていた。
俊哉はその人のもとに駆け寄った。
若干息があがりながらも近くまで来ると、その人は金色の長い髪を後ろに流して剣を構えていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「ん?君は?」
「あっ、俺は「危ない!」
するとその人は俺を押して飛んでくる炎を剣で受けた。
「大丈夫?当たってない?」
「大丈夫です」
「じゃあしばらく隠れてて、すぐ終わらせるから」
その人は剣先を空の方に向けて何か唱えるとオーラみたいなものが剣にまとった。
次の瞬間、ドラゴンが炎に包まれてそのまま落ちていった。
一瞬の出来事だったので何が起こったのか分からなかった。
「ふうっ。終わった」
呆気に取られて尻餅をついていた。
「おーい。もう終わったから」
腰を抜かして立てないでいた。
「おー、いたいた。立てる?」
「た、立てないです。腰抜かしたみたいで」
その人は手を差し出してきた。
手につかまりようやく立てた。
「ゴメンね。急につき飛ばしたりして」
「いえ、それでさっきのドラゴンみたいなのは?」
「ああ、あれは多分消えたんじゃないかな」
『消えた』という言葉に引っ掛かったが、あまり気にしなかった。
「それで君名前は?」
「あ、俺はトシヤって言います」
「トシヤ君ね。私はエレナ」
エレナはモデルの様な体型をして長い艶のある金髪を後ろにおろし、白銀の鎧を身にまといその鎧の隙間から見える肌がとても生々しくて魅了した。
「それで、トシヤ君はなんでここに?」
「ああ、それは…」
トシヤはここにきた経由を簡潔に話した。
「なるほど。タブレットを触って意識を失い、目を覚ますとここにいて突然爆発が起きたから気になってこっちに来たら私がいたと…つまりゲーム初心者なんだね?」
「まあそういうことです」
「そっか、ならついてきて」
そうするとエレナは向きを変えて歩き出した。
振り向く際の髪が彼女の妖艶さを際立たせた。
トシヤは素直についていった。
2人でしばらく歩いた。
しばらくは風で草が揺れている音が支配していた。
それを破ったのはエレナの方だった。
「そういえばトシヤ君てまだこの世界に来たばかりだよね?」
「そうですけど」
「なら知っておいた方がいいことがたくさんあるから、街に着くまでに色々教えとくね」
「ありがとうございます」
「えっとね…まずはと…視界の中に2本のゲージみたいなのがない?左上の方かな」
トシヤは眼球だけを左上の方にやると2本のゲージを見つけた。
「上の方がね、まあHP(体力)みたいなもので下がMP(魔力)だね」
「HPみたいなもの?」
「正確に言うとHPではないんだ」
「どういうことですか?」
「ちょっと説明が難しいから後でいいかな?まさかそこを突っ込まれるとは思わなかったから」
「はあ」
「それでね後君の属性を知りたいから、とりあえず街に着いたら何か武器を買ってきてよ。安いのでいいから」
「えっ?普通ゲームだったら初期装備有りますよね?」
「それがね、これには何も無くてね。始まる場所もランダムだから、このゲームに入った瞬間即死っていうのが良くあるんだよ」
エレナは嬉しそうに話した。
この後説明が30分ほど続いた。
要約すると、まずプレイヤーは1つ以上属性を持っていてそれは攻撃してみないとわからない。
たまに属性を2つ3つ持ってる人もいるらしい。
そしてプレイヤーのステータスにはレベルが設定されており、もちろん最初はレベル1なのだが…どうやらレベルはMPぐらいにしか影響しないということ。
ATK(攻撃力)やDEF(防御力)などは武具を装備することでのみ値が変動すること。
話が脱線しまくり、全然この世界の話をしてくれないエレナに突っ込みを入れようした時、目の前には街が広がっていた。
「ふー、やっと着いたね」
「はい」
トシヤは街をまじまじと眺めていた。
今まで過ごしてきた日常の景色とはまるで違う新鮮な気持ちになっていた。
するといつの間にかエレナの姿が消えていた。
辺りを見回すと、騒ぎになっているところがあった。
近づくとあの艶のある金髪が見えた。
「もう謝ってるでしょ」
「これで何回目ですか?勝手に行ってはいけないと」
「そんなこと言ったっけ?」
「とぼけるのですか?しょうがないですね、アレをしなければならなくなりますけどよろしいですか?」
「言ってました。ていうか嬉しそうな顔して言うな」
エレナはたじたじになっていた。
「エレナどうしたの?」
「あっ、トシヤ君。ゴメンね急にいなくなって」
「いえ、それより…」
「ああこの人、この人は私の仲間のユウ君」
「よろしく。すみませんねこの子がお世話になって」
ユウと言った少年は黒髪高身長で頭ひとつ分飛び抜けて高く、全身黒色で装備が分かりにくいが紳士的な雰囲気を醸し出している。
「むー、子ども扱いするな。歳一緒だからな」
「はいはいわかりました」
ユウはエレナの頭をポンポン叩いた。
そのやり取りにトシヤは呆然としていた。
エレナは思い出したかのように口を開いた。
「えっとねトシヤくん、それでね買ってきてほしいのがあるんだけど…」
「ああ、さっき言ってたやつですね」
「うん。エレメンタルジャッジって言うんだけどね、多分武器屋に行ったらわかるから」
「わかりました」
トシヤはそのまま武器屋に行った。
「買ってきました」
「おー、早かったね。それじゃユウくんについてってよ」
トシヤは言われるがままにユウについていった。
ついていくと目の前には開けた場所、と言っても荒野なんだが。
「じゃあトシヤくん。エレメンタルジャッジを出して」
トシヤは眼だけを左下に動かす。
そこにはメニューと書かれたオブジェクト。
それを1秒以上見つめることによって、目の前にメニューウィンドウが開く。
それを指で操作してエレメンタルジャッジを具現化した。
エレメンタルジャッジは色褪せた槍のようなものだった。
「今、色を失ってる様に見えるけど属性によって色が変わるんだ。まずは魔力を注いでくれないか」
トシヤはエレメンタルジャッジを両手で持ち、その持った手に魔力を集中させて、魔力を流し込むイメージを膨らませた。
「そして、ある程度魔力が溜まったら一瞬エレメンタルジャッジが光るからその時に思いっきり突いてくれ」
ユウが説明し終わった瞬間にトシヤは腕を伸びきっており、突き上げたエレメンタルジャッジの色が変わっていた。




