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プロローグ


「あの…えっと…」



1人の少年が言葉に詰まっていた。

この桜咲き誇る公園で少年と少女が向き合って立っていた。

少女の方は頰を赤らめ少しもじもじしていた。

少年は緊張した面持ちで自分の想いを伝えようとしていた。

しかし、うまく言葉がまとまらずもたついていた。

そして一瞬の静寂が訪れた後、少年は一言だけ言葉を発した。

すると、少女は軽くうなずいて「はい」と一言だけ答えた。

少年はとても笑顔になって、少女の手を取った。

少女は驚いた顔をしたけど、少年につられて笑顔になった。


少年の名は相良(さがら) 俊哉(としや)という。

今この時、相良俊哉は人生で一番幸せな時間を過ごしていた。

なにせこの学校に入って一目惚れをした少女と付き合っているからだ。

その少女の見た目は抜群でかわいく学力はそこそこなのだが、運動神経がよく走るのが速い。

俊哉はよく彼女が陸上部の練習で走っている姿に見とれていた。

彼女の名は蓮水(はすみ) 桜香(おうか)

桜香は部活一筋で恋愛など無縁であった。

陸上部の仲間からよく俊哉が見にきているのを言われていたけど、桜香は特に気にしてはいなかった。

しかしある日、桜香が学校で部活の準備をしていると遠くのほうで数人の男子が何やらもめていた。

桜香は気にせずに準備の続きをしていると、もめていた男子の中から一人他の人に背中を押され前に出てきた。



「は、蓮水さん」



若干裏返った声で桜香を呼んでいるのが聞こえた。

私はあまり気にせず作業を続けていると、同じ陸上部の西島(にしじま) 優奈(ゆうな)が寄ってきた。



「早く行きなよおーちゃん、呼んでるから」



おーちゃんとは桜香の愛称だ。



「いやいいよ。どうせなんかの罰ゲームで私をからかいに来たんでしょ」



どうせいつものことだと思い無視していた。

「いいから」と優奈は桜香の背中を押した。

桜香は仕方なく行くことにした。

一方の男子は緊張のあまり小刻みに震えていた。

そして、桜香が男子の前で立ち止まり向かい合う状態になった。



「何の用?」

「え、えーと…は、蓮水さん」

「はい?」

「そ、その…付き合ってください」



一瞬時が止まった感じがした。



「え、まさか冗談でしょ?」

「冗談じゃないよ。本気なんだ」



桜香は後ろを向くと優奈は頷いてきた。

桜香は慌てて口パクで「マジ?」と聞いた。優奈は「マジ」と口パクで返してきた。

桜香は再び向き合い、その男子の顔を見ると急に恥ずかしくなってきた。



「あの…」

「ふぇ、あ、なに?」

「それで返事は?」

「あ、えと…まださ話したことあまりないから、友達からでどうかな…」



その男子はしばらく考えた。



「わかりました」



その男子はそう言うと立ち去っていった。

桜香は安堵のため息をついた。



「おーちゃん。そこはOKしないと」



立ち去るのを見かねて、優奈が近づいてきた。



「相良くん、おーちゃんのこと好きなんだから」

「知ってたの?」

「まあそれはね…なんというか…」

「まさか相良くんの後ろにいた男子とグルだったとか…」

「あちゃー。ホントおーちゃんは勘が鋭いね」

「もうー」



頬を膨らましながら、優奈の背中を叩いた。

みなさんおわかりの通り、あの男子とは相良 俊哉のことだ。



「そんなことより、『友達からでどうかな』は無いんじゃないの」

「なんで?」

「あんなにセッティングしたのに、そこは一発OKでしょ」

「いや、いきなりあんなこと言われて整理がつかないよ」

「しょうがないよ、おーちゃんは恋愛未経験者だから」

「それバカにしてるでしょ」



優奈は腹を抱えて笑っていた。



「それより早く部活の準備しよ」

「ほーい」



その後は何事も無く部活に取り組んだ。



そして月日は流れ、暖かい風に乗って桜の花びらが舞うそんな季節になった。

あの日以来2人は名前で呼ぶ仲までになり、2人でいろんなことをした。

桜香は俊哉と過ごすたびに、胸の中にある気持ちが芽生えてきた。

そして、その気持ちに気づいた、いや気づいていないふりをやめたと言った方が正しい。

そして、俊哉が桜満開の公園に連れてきてくれた。

そして2人で並んで歩きながら桜を見ていたが、俊哉が急にその場で立ち止まった。



「どうしたの?」

「話があるんだ」



桜香は何かを悟ったかのように俊哉の真向かいに立った。

2人は向かい合った状態になった。

一瞬の静寂。そして花びらが目の前に過ぎていく。

そして俊哉は一言だけ言葉を発した。

桜香は何も言わずただ頷いた。

そしてそれを祝福するかのように桜が舞い散った。



あの日から半年が経つ頃。

俊哉はいつも通り桜香を待っていた。

待っていると後ろから足音が聞こえ、その音はだんだんと大きくなっていった。



「ごめーん。待った?」

「いや、大丈夫だ」

「そう。じゃあ帰ろ」



2人は手をつないで、学校をあとにした。

学校を出てしばらくすると、雨が降り始めた。



「雨降ってきたね」

「そうだな。まだ小雨だし大丈夫だよな」

「うん」



しばらく歩いていると、雨が激しくなってきた。



「ちょっとヤバいな。急ご、桜香」

「うん」



そして俊哉は桜香の手を引っ張って、走っていった。

交差点についたところで、信号が点滅し始めた。



「桜香、渡るぞ、走れ」



と言って、手を離した次の瞬間。

1台のトラックがちょうど交差点を曲がるところだった。

桜香はそれに気づかず横断歩道を渡ろうとした。



「危ない」



俊哉は桜香に呼び掛けた。



「えっ、何?聞こえない」



そして次の瞬間。



バァーン!



何かがぶつかる鈍い音が聞こえた。

俊哉が慌てて振り向くとそこには桜香の姿は無く、トラックが止まっていた。

そして視線を右のほうにもっていくと、誰かが倒れていた。

俊哉は急いでそこに向かった。

俊哉は激しく呼びかけるが反応を示さない。

追い討ちをかけるかのように雨が激しくなっていく。

その後、救急車が来て桜香が運ばれていった。

俊哉はこの世のものとは思えない声で叫んだ。

その声は、まわりのビルにはね返って共鳴をおこしていた。



「どうして、桜香が・・・」



そして、救急車のサイレンが遠ざかるとともに桜香の命もきえていった。




その2週間後に桜香の葬式がとり行われた。

桜香のクラスメイトや友人などが来ていた。

俊哉は初めての彼女をこんな形で失うとはあの日までは思っていなかった。

とてもショックを受け、俊哉は1週間学校を休んだ。



そして、月日を経て俊哉が学校に来てからもう1ヶ月が経とうとしていたころ、俊哉が廊下で外を眺めていると1番の親友である早水(はやみ) (みなと)が慌てた様子で俊哉の方へ走ってきた。



「大丈夫か、まだあの事が気になるのか」

「まあな、だいぶ良くなったけど」



元気を振り絞るかのように俊哉が言った。



「何か相談があるなら遠慮なく言えよ。いつでも相談にのるから」



優しく湊は声をかけた。



「ありがとう」

「そうそう、それで俊哉に言いたいことがあるんだけど」

「何?」

「昨日、ネットでなんか願いを1つ何でも叶えてくれるっていうゲームがあったんよ。まあ、本当かどうか疑わしいところやけど」

「ふーん」

「まあ、やってみる価値はあると思うけど」

「いや、興味ないからいいや」

「そうか、ゴメンな急にこんな話して」

「大丈夫、気にしてないから」



そうして、俊哉は教室へ頼りない足取りで教室に入っていった。



「本当は言ったほうがよかったかな」



湊は、少し罪の意識を感じながら教室に入った。


その後は何事も無く普通の高校生活を送った2人だった。


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