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家族
伸ばされたその手をどうとればいいのか。
竜華は暫くわたしに近づきもしなかった。当たり前だろう。あんなに拒絶したのだから。
それでもあの子はわたしの娘だった。
わたしに拒絶されても何度でも手を伸ばす。
「ま~」
「竜華……」
とりあえずしゃがんでみる。竜華がこの腕に飛び込んでくることを心のどこかで祈りながら。
「ま~、抱こして」
そっと竜華を抱き上げてみる。竜華は目線が上がり見たことがない景色にはしゃいでいる。
「漸く及第点だな、蝶」
「竜樹様……」
竜華はわたしの髪飾りで遊び始める。
「わ、やめっ」
そう言いながらも親子関係の心地良さに酔いしれていった。
わたしが見ていない素晴らしい世界をきっと竜華はみるだろう。
「蝶、好きだよ」
「……わたしは嫌いです」
そう言いながらもわたしは竜樹様と生きていくのだろう。
わたしが此処から逃れられるのはまだまだ先のことにちがいない。
竜華は……わたし達の愛し子は何時の間にか寝息をたて始めていた。




