名残
麗栄に引っ張られて来た場所は大和一の桜の名所だった。
「義母様、遅いですよ。叉喜さんなんてもう飲んでるんですから」
「ごめんごめん。遅くなったわね。わたしのことは気にしないで飲んでちょうだい。あ、貴女はだめよ。まだ飲んではいけない年ですからね」
「わかってますよ」
ひらり
ひらり
桜が舞う
「綺麗ですね、桜」
「そうね。本当に」
「蝶の方が桜よりずっと綺麗だと思うのだが」
突然割り込んできた竜樹の言葉にわたしの意識は現実に戻される。
「確かにその通りですね」
「凪、貴女まで」
「それでは第一回お花見大会始まりです!!!」
「いや、もう始まってるから、麗栄」
「そうだけど貴女が来てなかったから」
「細かいことは気にしないほうがいいぞ、蝶」
まあ、わかっていたことですけど。全部、全てわたしの所為ですね、ごめんなさい。
「そういうところも愛してるぞ、蝶」
・・・っ反則。なんでこういうときにまで竜樹様はそういうこと言うのだろう。これではまるでわたしがときめいてしまうではないか。
「・・・わたしは貴方のことが嫌いですから。何度言ったってかわりませんよ」
あいからわずだと笑う麗栄を無視して私は桜を眺める。
ひらり
ひらり
と舞う桜がかつてわたしを生んだ人に重なったのは何故だろうか。
わたしという人間が此処にいるのも何かの因縁かもしれない。
其れでも、わたしは前を向いて進んで行こう。
「桜、綺麗ですよ」
竜樹様と一緒に。この人のそばで生きて行こう。
「も、申し上げます!翠竜火様ご病気の由、至急ご帰参せよとのことです」




