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周皇后

皇后周氏が皇子の後宮に梨竜りりゅう公主を引き連れてやって来たのはわたしが後宮に入ってから10日後のことだった。

「ようこそおいでくださいました。皇后様、梨竜公主様」

「始めまして。おじゃまするわね」

「はじまてー!」


わたしは斎花をお茶の準備が終わったら下がるように促した。

「では、私どもは下がらせて頂きます。何か御座いましたらお呼びください」

「ええ」


梨竜公主はわたしが用意させた甘味を食べ終わったのか眠そうに目を擦っている。

「梨竜、眠たいなら寝てしまいなさい。今日はお昼寝をしていないようですし」

「あい」

ほどなくして眠ってしまった梨竜公主に毛布をかけてあげてから皇后様はわたしを振り返った。

「さて……貴女何で後宮ここにきたの?姉様の子が何故?後宮の華の一人に成ってしまった私を笑いにきたの?」

「いいえ」

「私にはかつて幼馴染みが居たわ。私はその人を好いていたし、多分向こうもそうだった。私は周家出身では会ったけど三女で妾から生まれた女だったから。其のままいったら結婚して子を産んで……。幸せだったと思う。運命が変わったのは姉様、貴女の母親が官吏に成って、男と出会って家に戻ってきた時だったわ。姉様は皇帝に見初められていた。男と出会った姉様は私を身代わりにした。幼馴染みと引き離されて此処に閉じ込められた。後宮という名の籠の鳥に成った。貴女に直接の怨みはないけどやはり貴女は姉様の娘。姉様によく似ているわ」


やはり……という感じだった。多分皇后様はお母様を しゅう蝶明ちょうめいという女を怨んでる。そんな気がした。


「皇后様……いえ叔母上。わたしも母を怨んでおります。何の因果かは分かりかねますがわたしも長年育った周家の家を出されて官吏という職に着きました。2年しかたっておりません。神降省という職場に配属されたこと、神降省の上司が皇子……竜樹様だったこと。それらは本当に偶然だったのでしょうか?多分竜樹様はわたしのことを愛して下さるでしょう。しかし、わたしは。わたしはあの方を愛せない」


わたしの言葉に皇后様は身動ぎされた。


「本当に其で貴女はいいの?」

「ええ、此れがわたしの選んだ道です。選んだことに後悔はしない」

「そう……。解りました。多分私は近い内に死ぬでしょう。その時に梨竜を。私の娘を頼みます」


そう言って皇后様は梨竜公主を抱き上げて退出なさった。そのせいでわたしの呟いた言葉は扉の音にかきけされた。



「わたしはいつか後宮ここを出ていきますよ?其でも貴女は梨竜公主を娘をわたしに任せるのですか?」


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