なつかしい場所
「という訳でわたしは神降省に戻ります。短い間でしたがお世話に成りました」
「ああ、元気でな」
同僚だった人達……邑将軍、嬰将軍。他にもいろんな人達。もう会うことはないでしょうから。
およそ数ヶ月ぶりに戻ってきた神降省は、以前と変わらない男所帯でいろんなものが積み重成っていた。少しずつばれない様に片付けしていたんだけどな。何で居なくなったとたんに元の木阿弥になるんだろう……?神降省の皆なんて将来お嫁さんに部屋が汚いって怒られればいいと思う。
「胡明君?久し振りだねぇ」
「竜樹様……」
「ねぇ、胡明君。君の真の名はなんなんだい?」
「其れは……」
この国に於いて女性に名を聞くということは求婚をされたということと等しい。
さて、どうしたものか?
「胡明君、君に私の後宮に入ってほしい」
嗚呼、そう言えば昔……官吏になる前にお母様に言われたっけ。
「最初に貴女の正体を見破った人に貴女の人生をかけなさい。真の名を告げなさい」
其ならば後宮で花となるのもまた一興。どうせ此処には長く居られない。
「周 胡蝶」
「え?」
「周 胡蝶。これがわたしの真の名前。後宮に入ります」
「ああ、皇太子 翠 竜樹だ」
この年の弥生をもって周 胡明という官吏の名は史書から消える。変わって翌年の卯月。周 胡蝶という人物が皇子 翠 竜樹の元へ嫁いでくる。歴史に名を残す夫婦が今まさに誕生しようとしていた。
来週から新たに後宮編スタートします。よろしくお願いいたします!




