男装
昔、余多の記録に名を残し、後の世に於いて伝説となった女性がいた。彼女の名は周胡蝶。建国の五家に名を連ねる周家の長女である。
しかし、今は単なる周 胡空の娘に過ぎない。
そして彼女の誕生は父に言われた一言から始まる。
「胡蝶、来たか」
お父様、お母様、妹の叉喜、美笠。わたしの家族が揃って座っている。ああ、珍しいこともあるものですね。この家族揃う事などめったにないのに。なにもかもが自由人な家族なのですもの。
「えぇ、お父様。突然のお呼び立て何かあったのではないかとお察し申し上げます。何かわたしに御用でしょうか?」
あれれ?お母様が泣いていらっしゃる。これは何かあったに違いない。まさか離婚?離婚なのか?あのバカップルの夫婦が?な訳ないよね。
「ウム、胡蝶。そなたには女子として生きるのを止め、男子として生きてもらう」
「貴方、胡蝶は女子なのですよ?此れではあんまりですわ。なぜこの子を男子として官吏にしなくてはならないのですか‼ あんまりです」
とは言いつつも反対はしない。何か理由が有りそうですね。しかもわたしは……
「お父様、男子として生きるならば、武術の稽古をしても止められることは御座いませんね?」
「勿論だ。官吏の職務の合間に好きなだけやりなさい」
”あーあ、またですわ大姉様の暴走が始まったわ。しぃ、美笠。大姉様に聞かれたらまた暴れだしますわ。シクシク……。どうして胡蝶はこのような子に育ってしまったのかしら。叉喜も美笠も女子らしく育ってくれたのに……。わたくしはどこで育て方を間違ってしまったのかしら?”
「お母様。わたしの性格はもともとですので、叉喜や、美笠とくらべられても困ります。気にしたら負けですので。後、叉喜と美笠。あんたたちのひそひそ話全部聞こえてるからね。後で覚悟しときな」
“おぉ、恐い、恐い。だから言ったでしょう?聞こえてるって”
「お父様、わたしは男装して、官吏として生きて参ります」
「ウム、胡蝶ならそう言うと思うておった。おい、あれを持って参れ」
「分かってます。胡蝶、私の部屋においでなさい。準備して有りますので」
「胡蝶。貴女は知っておかないといけないことが有るわ。官吏というお仕事は完全に男社会。そこで生きていくためには自分の性別を完全に隠しなさい。そして最初に貴女の正体を見破った人に貴女の人生をかけなさい。真の名を告げなさい」
「お母様もそうだったの?」
「ええ、そうよ。貴女は……。そうね、此から周胡明と名乗りなさい」
計らずともその名前は昔幼馴染みに名乗った名前と同じ名前だった。
「お母様。ありがとうぞんじます。わたしはわたしなりにがんばります」
此れは女子として生きることを止め、男子として生きる運命に成った1人の女子の物語。
「うっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!官吏ぃぃぃぃぃ。武術ぅぅぅぅぅ」
……本人はものすごく喜んでるけど。