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訓練場

「あの、ロイさん」

「どうした、ミコト」


 最近の俺は、兵士宿舎の近くにある訓練場に通っていた。

 何せ、暇なのだ。


 俺がこの城に居候させてもらうようになってから、少し時間が経っていた。

 最初のころは、アレックスやフィルフォードさんと過ごすことが多かった。

 でも、二人は王様とその補佐だ。いつも一緒にいられるわけじゃない。



 その日も部屋で1人で過ごしていた俺は、思い切って部屋から出てみることにした。

 城の中を散策していると、どこからか金属同士がぶつかるような音がするのに気がついた。

 気になって音の方に行ってみると、ロイさんや他の兵士たちが剣で打ち合いをしていたのだった。



******


 

 「今日も見学していいですか?」

 「ああ、危ないカラ、近くには行くナ」

「はい!」



 その日から、俺はよくここに来るようになった。

 最初は危ないからと断られたのだが、根気よく頼んだら了承してくれた。



 剣での打ち合いなんて、むこうの生活ではまったく縁がない世界だった。

だから、こうして練習風景を眺めているだけでも充分面白かった、のだが。




 「ミコト、お前モやってみるか?」

「いいんですか?!」

 思ったよりも大きい声が出て驚いた。

 「見ているだけじゃつまらンだろう?」

 ロイさんにそう言われて、俺はやっと自分の気持ちに気がついた。


 「おっ、みこっちゃんも参加か?」

「怪我すんナよー」

 ここに通ううちに仲良くなった兵士さんたちに声をかけられる。

「はい、よろしくお願いします!」



 その日から、俺は兵士さんたちの訓練に参加させてもらえることになった。

 一緒に走ったり、剣を持って素振りをしたり。

 体を動かしていると、心まで軽くなったようで気持ちがよかった。





【ロイ視点】


「あの、ロイしゃん」


 ああ、また来たのか。


「どうした、ミコト」



 ミコトは、違う世界から来たらしい。

 なんでも、友人が勇者として召喚されるときに、たまたま巻き込まれたんだとか。

 勇者が来るまでの間、城で預かることになったのだが、あいつはよく俺のところにやってくる。アレックスやフィルフォードは忙しいから、1人で暇なのだろう。


 最初は危ないからと、止めさせようとした。

 俺がいるのは、大抵訓練場や兵舎だからだ。訓練中に攻撃が当たらないとも限らない。倉庫には武器がおいてあるから誤って触ると怪我をするかもしれない。

 そんなことを言ったのだが、こいつは懲りずにやってきた。

 まあ、こいつは子供にしては聞き分けもいいし大人しい。危ない場所には近づかないように言っておけば大丈夫だろう。

 俺は次第にそれを黙認するようになっていった。



******

  

 予想外だったのが、周りの兵士の反応だった。


「おっ、みこっちゃんじゃねーか」

「元気か?ミコト」


 いつの間にか、ミコトは兵士たちと馴染んでいたようだ。


「はい、元気でしゅ!」

 ミコトの笑顔に、屈強な男たちが顔をほころばせる。


 いつからか、ミコトは兵士たちの間でアイドルのような存在になっていた。




 「いやあ、訓練の後もミコトがいると癒されるよなー」

「そうそう、なんか弟みてーでかわいいよな」



 兵士たちに好意的に思われるのはよかったと思う。

 いつも俺が見ていられるわけじゃないしな。

 俺やアレックスたちがいないときに、他にも知ってるやつがいれば、ミコトも寂しくないだろう。



 「よし、次俺の番だから! ミコト、見てろよ!」

「あい、がんばってくらしゃい!」


 ミコトが来てから兵士の士気が上がったようだ。

 ミコトの前でいいところを見せたいと思っているやつが多いのだろう。



 「ミコト、お前もちょっとやってみるか」

「いいんでしゅか?!」


 目をキラキラさせて答える姿に苦笑する。


「見ているだけじゃつまらんだろう」


 そう、いつもミコトからは俺たちに交ざって訓練に参加したいって気持ちが見て取れた。

 でも、素人が参加すると迷惑になるとでも思っていたのだろう。ミコトはそれを口に出さずにいつも黙って見ているだけだった。

 俺も、怪我でもされたらかなわないのでずっと気づかないふりをしてきた。

 それでも、今日声をかけてしまったのは、周りの奴らに感化されたからだろうか。


【ロイ視点終了】

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