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お城に着いたよ

やっと、主人公の当初の目標が達成されます!

『お城に行く!』ですね。皆さん覚えていらっしゃったでしょうか(汗

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 目が覚めたら、赤い髪の兵士さんの腕の中にいたので慌てて降ろしてもらった。

 それから通じるか分からなかったけど、一応お礼を言っておいた。すると、兵士さんは目を丸くしてから豪快に笑ったのだった。


 そのまま、俺は兵士さんに手を引かれて森の中を歩いて行った。

 どこに連れて行こうとしているのだろうか。俺は少し不安になって、兵士さんの顔ををちらりと見上げる。すると、こちらに気づいた兵士さんがにこりと笑いかけてくれた。


 兵士さんの笑顔は、人を安心させるような優しいものだったので、俺も自然と笑顔になった。



 それから少し歩いて、俺たちはある場所に到着した。そこには石造りの大きな建物が建っていた。

 それから醸し出される荘厳な雰囲気。これって、もしかして・・・・・・。

「お城・・・・・・?」

 なんだ、目指す場所はすぐ近くにあったのか。生い茂った木々で見えていなかったけど、俺がいたあの場所はお城のすぐそばだったらしい。一緒に召喚された勇人と合流するためにお城を目指していたんだけど、案外近くにあったんだね。







 ゲームとかに出てきそうな立派な城の姿にしばし見入っていると、兵士さんに肩を叩かれた。兵士さんは俺を見て苦笑していた。いや、だってしょうがないじゃん。こんなの見たの初めてだってんだからさ。

 俺が膨れていると、兵士さんは宥めるように頭をポンポンと撫でてきた。

 うー、なんか子ども扱いされてる気がする・・・・・・。



 それから俺は、兵士さんに促されて城の中へと入っていった。 

 城の中は天井が高く、床には赤い絨毯が敷かれている。

 俺は、赤い髪の兵士さんに連れられて中を進んだ。

 不思議なことに途中で誰かに会うことはなかった。



 無人の廊下を進んで進んで、やっと大きな扉の前に立たされた。

 観音開きの扉を開いて現れたのは、これまた大きな部屋だった。ちょっとしたダンスホールくらいはありそうな広さに圧倒される。天井には大きなシャンデリアが輝いていた。

 部屋には廊下からの赤い絨毯が続いていた。俺たちはその上を進んでいく。


 赤い絨毯は部屋の奥まで続いていた。何段か高くなっているその場所には、金ぴかの椅子が置かれている。きっと、玉座だ。そして、そこに座っている人物を見て俺は驚いた。その人は、森で俺を置いていった笑い男さんだったからだ。


 森で会ったときよりも幾分か表情が硬い気がするが、あれは絶対に笑い男さんだ。

 そうか、俺は置いて行かれたわけじゃなかったんだ。笑い男さんは、たぶん王様で、指示か何かを出すために一人戻っていったんだろう。不審者である俺を助けるために。

 俺は、笑い男さんと目が合うと、自然と頬が緩んでしまった。すると、笑い男さんも表情を緩めて笑い返してくれた。


 部屋には、俺たちのほかに、赤い髪の兵士さんとそれからもう一人男の人がいた。二人はずっと何やら話し込んでいたんだけど、こちらに目をやった瞬間、ひどく驚いた顔をして固まってしまった。

 二人が何に対して驚いているのか俺には分からなかった。

 俺は困って笑い男さんの方に目をやる。すると、俺と目が合った瞬間、笑い男さんは蕩けるような笑顔を浮かべた。俺はどきまぎしながらも、なんとか笑顔を返した。

 その間も、二人は俺たちのことを凝視していたんだけど、俺は結局何が原因だったのか最後まで分からないままだった。





 それから、笑い男さんは隣に立っている美丈夫さんに何やら指示を出したようだった。


 美丈夫さんは一度奥の部屋に行ったが、すぐに戻ってきた。手には1枚の紙を持っている。そして、それを俺に差し出した。

「受け取れってこと?」

 俺が手を伸ばしながらそう聞くと、ニュアンスで伝わったのだろう、美丈夫さんは微笑んで頷いた。



 渡された紙には、記号のようなものがたくさん書いてあった。しかし、これをどうすればいいのか俺には分からない。困った俺は、助けを求めて美丈夫さんのほうを見る。

 すると、美丈夫さんは突然口をすぼめると、ふーっと息を吹き出した。


? 何だ?

 俺が首を傾げていると、そばで見ていた笑い男さんや赤い髪の兵士さんがおもむろに俺の持っている紙を指さした。そして、やはり口をすぼめて息を吹き出したのだった。


・・・・・・ひょっとして、この紙に息を吹きかけろってことなんだろうか。


俺は、試しに紙にかるーく息を吹きかけてみた。



ふっ。



ん? なんか、記号が動いたような?


3人の方を見ると、そうだ、もっとやれという顔をして笑っていた。


俺は、意を決して息を吸い込む。そして、今度は強く息を吹きかけてみた。





  

(ふーーーーーーっ!)







紙に書かれた記号が、紙の上を滑るようにするすると移動していく。紙の端に達したものから次々に外へと飛び出していった。

紙の外に飛び出した記号たちは、鈍く光りながら、くるくると俺の周りを回っていく。そして、淡い光を放ったと同時に霧散して消えてしまった。



・・・なんだったんだ?



3人の方を見ると、何かに期待するようにこちらを見ている。

そんななか、最初に声を発したのは、笑い男さんだった。




「ワカルカ?」



 "wakaruka" 『わかるか』・・・・・・『分かるか』?



 俺は、恐る恐る声を出した。

「わ、わかり、ます・・・?」

 すると突然、笑い男さんが俺にがばっと抱き着いてきた。

「コトバ、わかる、よかった」




 おおーっ、なんだか知らないが、さっきのやつで言葉が通じるようになったらしい。



 言葉が通じるようになったので、俺たちは簡単に自己紹介をした。

 笑い男さん=王様は、アレックスという名前らしい。

 アレックスさんの横にいる美丈夫さんは、フィルフォードさん。王様を支える補佐的な仕事をしているんだって。

 そして、赤い髪の兵士はロイさん。何でも、兵士たちのトップらしいよ。



******


「あの、勇人はどこですか?」

「ユート?」

 これまで喋れなかった分、一気に言葉が溢れてくる。

「俺は、勇人が勇者召喚されるのに巻き込まれてこちらの世界に来てしまったみたいなんです。あっ、勇人っていうのは、俺の幼馴染で。学校からの帰り道、あいつが魔法陣に吸い寄せられたところまでは覚えていて、たぶん俺もそれに巻き込まれたと思うんですけど、気が付いたら森の中にいて、それから」


「ちょっと、まつ、ミコト」

「ゆっくり、たのむ」


 言葉が通じるといっても、長文は難しいらしい。


「あの、どうして皆さん片言なんですか?」

俺は一応聞いてみた。



 記号の紙のおかげで、俺は三人の話す言葉が日本語に聞こえるようになっていた。

 でも、なんというかそれは流暢な日本語ってわけじゃなかった。ただ簡単な単語を並べているように聞こえていたのだ。



 すると、どうやらこれは、あの紙の仕様らしいことが分かった。

 難しいこと言葉は、簡単な言葉に。

 長い文章は、短い文章に。

 そうやって自動的に翻訳する機能が備わっているそうなのだ。

 今は最初だから違和感があるけど、こっちの言葉をたくさん聞いたり喋ったりしていけば、そのうちスムーズに聞こえるようになるんだって。


「コトバ、なれたら、だいじょうぶ、なります」

フィルフォードさんは、微笑みながら俺の頭を撫でた。

それから、他の二人も俺を安心させるようにとたくさん話しかけてくれた。




 俺はふと疑問に思った。

 三人の言葉が俺に片言に聞こえているとしたら、それじゃあ逆はどうなんだろう?俺の言葉も三人には片言に聞こえているのだろうか。

 詳しく聞いてみようかと思ったが、タイミングを逃して結局聞けないままになってしまった。

 まあ、話は通じてるみたいだし、別に確かめなくてもいいか。




 それから、俺たちの会話という名の情報交換会が始まった。

 言葉が通じるようになったとはいえ、それは完全なものではない。正直もどかしい思いもした。けれど、それはフィルフォードさんのおかげでだいぶ助かったと思う。

 フィルフォードさんは、俺が分からないことがあるときには、分かるまで根気よく説明してくれた。反対に俺の話が通じないときは、何が原因か推測し、速やかにそれを解消してくれた。

 王様の補佐をしていると言っていたし、きっとものすごく頭のいい人なのだと思う。それに、細かいところによく気がつく気配りができる人なんだなと俺は感じた。


 そうして、何度も会話を重ねて情報を照らし合わせていった結果。俺が分かったことは以下の通りである。





・この城では、勇者召喚していない


・勇者召喚したのは、他国である


・勇者はいずれこの城に来る


・だから、俺はここで待っていればいい






 俺から勇人に会いに行くのは無理なのかと思って聞いてみたのだが、それは難しいとのことだった。

 詳しいことは分からなかったが、どうやらその国とは簡単に行き来ができない事情があるらしかった。


 その代わり、勇人を召喚した国に手紙を送ってくれることになったよ。文面はフィルフォードさんが書いてくれるそうだ。

 俺はこっちの世界の言葉は書けないから仕方ないね。




 勇人がここにいないと聞いたときはショックだったけれど、ここに置いてもらえることになったのはよかったです。アレックスに感謝だな。


 アレックスにそれを伝えると、「気にスルナ」と言って笑ってくれました。




〈ミコトが書きたかった手紙〉


 勇人へ


 俺も勇人と同じこの世界に来てしまったようです。


 俺はこの城で勇人を待つことにしました。


 自分でそちらに行こうとしましたが、それは無理なのだそうです。


 だから、勇人が来るのを待つことにしました。


 この城の人たちはよくしてくれていますが、できれば早く来てほしいです。



******

 

〈ミコトの話を聞いて、フィルフォードが書いた手紙〉


 勇者ユウトへ


 貴殿の友人は、我が城で保護している。


 ミコトは当初、自分の足でそちらに向かうことを希望していた。


 しかし、彼の安全を考慮した結果、貴殿が到着するまでこの城に滞在してもらうことにした。


 我々は彼を客人として丁重にもてなすので安心してほしい。


 我々はできる限り彼をサポートする所存でいるが、やはり知らない土地にひとりというのは心細いと思われる。


 できるだけ早く来られたし。


 




 ―――――― 国を越えた伝言ゲームの結果・・・・・・



〈勇人が受け取った手紙〉


 勇者ユウトよ


 貴殿の友人は、我が城で預かっている。


 貴殿が来るまでの間、貴殿の代わりに丁重にもてなすことにした。


 本人は一度逃げ出そうとしたが、如何せん何の力もない人間。


 己の無力さを噛みしめ、貴殿の助けを待つことにしたようだ。


 彼の精神が壊れてしまう前にたどり着けたらいいがな。


 『早く助けに来て byミコト』

話が前後していた部分を修正しました。2016.10.27

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