終わり
「ん、あれ……?」
智也は目を覚ました。周りを見渡すと、真っ白な空間だけが広がっている。
「あれれ?」
誰もいない。翔輝も麻琴も心優もみんないない。自分だけ、果てしない場所で座り込んでいた。
「えーっと」
彼は考え込む。誰もいないということは、死んじゃったりしたのだろうか。たしかあのとき、おそらく幽霊である声になんかされたんだと思う。それで殺されちゃったりしたのか、もしくは生きたままここに連れてこられたのか、自分が見ている夢か――――。
ごすっ。頭に鈍器のような重たいものをぶつけられたようだ。そのまま智也は床に倒れこんだ。痛い。ちょー痛い。
痛みに耐えるも気を失いそうになっているとき、彼が目にしたのは白いワンピースを着た女の子だった。
『残念だったね』
彼女は楽しそうに倒れた智也を眺めていた。
◆◆◆◆
「え……?」
同時刻、翔輝は目を丸くして自分がいるところを3度ほど確認した。
「あれ、あいつらは……?」
なにが起こったのかがなかなか理解できずにいる彼は、しばらく辺りを歩き回ってみる。誰もいない。
「あれー……」
まだ事の重大さに気づいていないのか、その声はまだ明るく聞こえる。
しかし、彼の声は突然消えた。細い棒のようなものが、彼の胴体を貫いていたのだ。
「い……ってぇ」
まだ話せるほどの力はあったようだ。しかし、それも長くは続かない。翔輝は白い床に倒れこんだ。
『はい、ゲームオーバー。残念残念。誰か、このループを止めてくれる人はいるのかな――――?』
女の子の明るい声がどこまでも果てしなく続く空間に響いた。
――――犠牲者、2人。
◆◆◆◆
「はれ……? あれれ、ここ、どこ?」
起き上がった心優は、目をぱちぱちと開いたり閉じたりしてぽかんとしていた。何の音もしない静かな空間に1人でいるのは、怖がりな心優にとって嫌なことでしかない。
その瞬間、彼女は背筋が凍りつくような視線を感じた。
「いひぃっ」
小さく変な悲鳴を上げて、ゆっくりと振り向く。そこには白いワンピースを着た黒髪の女の子が立っていた。
「え、え、どなたですか? あのっ、その手に持っているものって……な、ナイフですよね?」
心優は彼女が持っている凶器を見て怯えながら尋ねる。見たら誰だってわかることなのだけれど。
『あたしは、霊幽。ま、わかるわよね? 幽霊よ、ユーレイ』
「ひっ、ゆ、幽霊さんですか……。どうされたんですか? あの、私たちはどうなってしまったんですか? も、もしかして霊幽さんが見えてる時点で私、殺されちゃってます!?」
勝手に話を広げていく心優に呆れながら、霊幽はその問いに答えていく。
『さっきの質問に崎に答えると、これは果物用のナイフね。それから、あなたはまだ死んでないわ』
その言葉を聞くと、心優は胸を撫で下ろして「よかったぁ……」とつぶやいた。そんな彼女を見て霊幽はくすくすと楽しそうに笑い始めた。
『バカなのは、変わらないわね。あなたはまだ死んでいないだけ。これからあたしが殺してあげるわ……あたしの存在を知ってしまった以上、生かしておくわけにはいかないの♪』
「えーっ!?」
ざざっと一瞬で30歩ほど後ずさりする。しかし、霊幽は瞬間移動でもしたのだろうか、気がつけば心優の目の前に立っておりナイフを彼女の首に突きつけていた。
「いいいぃ……」
痛い。やめて。でも、言葉が出てこない。まるで洗脳でもされたみたいだ。口が動かない。声を発することができない。体が言うことを聞いてくれないのだ。
ぐさっ。彼女の首に刃が突き刺さった。
「霊幽、さ……もしかして……」
心優は苦しそうにもがいた後、その場に崩れ落ちた。
『あーらあらあら、かわいそうに。こんなにつらそうな顔しちゃって。まあでもぉ、仕方ないかな? だってこの子、あたしを知っちゃったんだもんね。それに、あたしを……ふふっ。よし、じゃあ――――』
あと1人。
◆◆◆◆
「ん……」
麻琴が目覚めると、そこは真っ白な空間だった。自分は何をしていたのか。一瞬わからなくなって、また、記憶がフラッシュバックしてくる。
「そうだ、玲央を殺されて、あたしたちは永遠に学校で……」
しかし。ここはどう見ても学校内ではなかった。真っ白で、どこまで続いているのか分からないような広い広い空間。
周りには誰もいなくて、ただ一人。
「みんなー!!」
叫んでも、届かない。誰の声も聞こえてこない。
どすっ。
突然鈍い音がした。同時に、腹部に激痛が走る。
『あとちょっと、我慢していれば良かったのにね――――』
声は笑い、そして、消えた。
なんで? そんな疑問はよくあるはず。でもよく周りを見渡してごらん。その疑問は、誰に聞くでもなく自分の目で解決させることができるんだよ。
展開が無理やりで本当にごめんなさい
地中の奥深くまで土下座します