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悪夢の始まり

結構前に考えていた話で、ホラー大賞に使おうかな~とか考えていたら、まさかの今回のお題にぴったりだったので、正直今でもびっくりしています。

この話は友達にもいろいろネタを振ってもらって書いていたのですが、去年の冬くらいからずっと放置プレイだったので、ちゃんと書きます。

完結させれるように頑張りますので、よろしくお願いいたします!

 凍えそうなほど冷えた校舎の暗く沈んだ雰囲気の廊下を歩く一人の少女がいた。樋野鳥ひのどり麻琴まこと、中学2年生。今日は親友林寺はやしでら玲央れおの部活の帰りを待って、遅い時間まで学校に残っていた。

 しかし、玲央は一向に見当たらない。あまりにも遅すぎるため、麻琴は心配になって教室を飛び出し、今この暗い廊下を歩いていたのだった。


「玲央~? いないの?」

 透き通った高い声で親友を呼ぶ。が、しかし玲央はなおさら誰の声も聞こえない。ただ、何かの虫の鳴き声が虚しく木霊していただけ。麻琴は心細くなって、泣きそうになった。

「ちょっと、ほんと誰かいないの? 怖いって~」

 半泣きでつぶやく。でも、誰の声もしなかった。蛍光灯はついてないし誰もいない。だからといって玲央を置いて帰るわけにはいかない。それに、麻琴の家はかなり遠く、玲央の家の隣だ。一緒に帰った方が安全なのは二人とも分かっていた。だから、先に帰ったとは思えない。

 麻琴は3階を一周すると階段を降りていき2階も見た。しかし、誰の姿も見られない。さらに1階も2周して中庭を回り最後に靴箱を見る。玲央の出席番号は29番。まだ外靴が入れっぱなしにされていた。

 なんだ、やっぱり玲央、まだ帰ってないんじゃない。どうせ片付けとか着替えが遅れてるんでしょ。と呑気にそんなことを思う。

 玲央は陸上部に所属している。今日は走り高跳びをやると言っていたので、もしかしたらその片付けに手こずっているのかもしれない。そう考えて麻琴はグラウンドに急いだ。


 グラウンドも暗く、明かりひとつついていなかった。だからはっきりとは見えなかったが人影らしきものは見えず、麻琴は首を傾げた。

「玲央~」

 思い切って大きな声を出してみた。シーンという音が聞こえそうなほど静かなグラウンドに吸い込まれていく。返事は返って来なかった。

「おっかしいなぁ~。部室で着替えてても、聞こえると思うんだけどなぁ」


 麻琴は足を怪我して走れなくなってしまったが、1年生の頃は玲央と一緒の陸上部に所属していた。だから、部室の事はよく知っている。外の声は丸聞こえだし、他の部活がグラウンドを使っていた時は片付けの音もよく聞こえる。これだけ大きな声を出せば、部室の中の部員一人くらい「アレ?」とドアを開けてくれるはずだ。しかし、まったく何も起こらない。

 玲央はどこへ行ってしまったのだろうか。まさか、誘拐――――? 麻琴はつい、嫌な想像をしてしまった。玲央は首をぶんぶん横に振ると「そんなこと、あるはずない!」とすべてを振り切るように大声を出した。


「今の――――」

 かすかな声が聞こえた。麻琴はパッと顔を上げて瞳をキラキラさせる。

「誰か、誰かいる!!」

 声のした方を手繰り寄せるようにして慎重に歩いていく。それにしても、誰の声だったんだろう? 声が低かったから多分男子かな……と考えながら。

 声が聞こえたのはサッカー部の部室だった。多分、部員が残っていたんだろう。

「失礼しまっ……――――!?」

「うおぁっ!?」

 ごっつん。鈍い音が聞こえた。たまたま中にいた部員がドアを開けた瞬間で、麻琴は額がドアに当たってしまったのだ。それも、かなり強烈に。

「ったたた……血、血でてない?」

 ぺたぺたと自分の額を触ったが、特にそれらしきものはなかった。彼女はほっとして息を吐く。


「ご、ごめん。つい、誰もいねーと思って」

 サッカー部の部員2人に謝られる麻琴。「だいじょぶ」とピースサインを作ってみせると、彼らはほっとしたような安堵の息を漏らした。

 一方麻琴はびっくりしたのと人がいて安心したのとで、精神がおかしくなっているようにも思えたが、そんなことを考えているような時間はない。麻琴はすぐに顔を上げて言った。

「あのっ、寺林玲央を探してるんですけど、知りませんか?」

 そう言い終わった後、彼女は彼らが誰かを思い出した。

 同じクラスの山岸やまぎし翔輝しょうき春名はるな智也ともやだ。

「寺林? え、あ、樋野鳥か」

「なんだ、後輩かと思って必死で謝ったの、マジ無駄」

「なっ、なにそれ! わたしだったら謝らなくてもいいとか思ってんの? ひどすぎ!」

 敬語を使ってしまったことを後悔する。同じクラスの――それもよく話す――男子だとは思いもよらなかったのだ。翔輝と智也とは幼稚園からずっと一緒で、幼稚園の3年間と小学3年生からずっとクラスが同じという腐れ縁。そんな2人に敬語を使ったと思うと、なんとなく自分にイラついた。

 だが、今はそんなことをしているような暇はない。とりあえずここを移動して玲央を探し出さなければならないという気持ちが強く、麻琴は焦っていた。もし、玲央に何かあったら――――。

 玲央も幼稚園からずっと仲良しの幼馴染だが、同じクラスになったのは今年が初めてだ。だから、今年はいい年にしたいと思っていた。それなのに、こんな怖い思いをするだなんて夢にも思っていなかった。


「――――で! 玲央を探してるってわけ。あんたたち見なかった?」

「見るわけねーだろ、ずっとここにいたのに」

 すぐに翔輝が答える。智也もうなずく。麻琴はがっくりとうなだれた。

「そんなんじゃいつまでたっても玲央を見つけられないよ! 探しに行こう」

 麻琴はそう言うと強引に二人の腕をとっつかまえて校舎内へと引きずって行った。

「いってえ~。樋野鳥、お前な。自分がバカ力なの把握してからそういうことやれよな。腕抜けるかと思ったわ」

 肩をほぐしながら翔輝がつぶやく。するとすぐに麻琴が反応した。

「はあぁ~!? 翔輝、あんたサイッテー。女子にバカ力とか言うなんて、常識ないんじゃないの」

「そんな常識なんてクソだろ」

 翔輝はため息をつくと立ち上がった。「え?」と麻琴が翔輝を見上げる。

「え、じゃねえよ。探しに行くんだろ、寺林」

 自分の方を見てくる麻琴から視線をそらしながらぼそぼそ言う。智也も「別に行ってやってもいいけど」と今にも歩き出しそうだ。麻琴は大きな瞳をキラキラさせながらうなずいた。

「ありがとっ!」


 早くも15分。もしかしたら戻ってきているかも、と校舎内を何周もしたが、玲央はもちろん、先生や生徒誰ひとり見当たらなかった。

「おっかしいなぁ~。なんか怖いね、こーゆーの」

「お前それ明るい声で言うようなセリフじゃねえだろ」

 まるで「今から体育祭だね! わくわくしちゃう」というのと同じくらいのトーンで言うから、そう思われても仕方ない。もともと麻琴はそういうキャラなのだ。

 智也はもう相手にすらしていない。おそらく、2人と同類同レベルになりたくないのだろう。しかし麻琴も翔輝もそれを気にしている様子はなかった。

「あ、お~い、麻琴~!」

 唐突に麻琴を呼ぶ声が聞こえてきた。麻琴は翔輝との会話を止め声がする方に顔を向けた。

 麻琴は玲央なのだと思っていた。しかし、それは間違っていた。

「あ……心優みゆ

 大杉おおすぎ心優みゆが麻琴たちの方に来る。心優は麻琴と仲がいいクラスメートだが、怖がりな心優がこんな遅くまで学校に1人で残っているとは考えられなかった。麻琴は彼女に不思議になって聞く。

「心優、どうしたの? こんな遅くに」

「3人こそ……。ねえ、玲央ちゃんを知らない?」

「え、玲央?」

 彼女と自分が同じ目的でここに残っていたのだということを知った麻琴は、驚いてまじまじと心優を見つめた。

「え、ちょっと麻琴、なに?」

「あ、ごめん。実はわたしも玲央を探しててさ」

「え? 麻琴も? なんだよかった。1人だったから怖くて」

 だろうな、と麻琴は思った。心優は怖がりなのに、と思ったからだ。「大丈夫?」と気遣いの声をかけると、心優は笑って「大丈夫。ありがと」とささやいた。そのあと「男子2人といたなんて、勇気あるね麻琴」と言われて、麻琴は顔を赤くさせた。

「そっ、そんなんじゃないよ! それに、さっき偶然会っただけだしっ」

「まあいいよ。それじゃ、玲央ちゃんさがそぉか!」

 心優は声を張り上げた。外はいつも間にか雨が降っていて、雷もなっている。

「やばくない?」

 麻琴がそうつぶやくと、翔輝は「さっさと見つけて早く帰ろうぜ」とだるそうに言った。



 ――――その時だった。絶対に鳴るはずのない・・・・・・・・・・公衆電話・・・・が、けたたましい音を立てて鳴ったのは。


 4人に悪夢が襲いかかろうとしていた、ある冬の日の話。

完結させられなかったらどうしようと思った私。

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