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拍手小話 王さまの執務室

拍手に載せていたニーナ視点の小話です。

 ニーナの朝は早い。

 仕事は王の執務室の清掃。朝一番にどの清掃担当の侍女よりも先に執務室に入る。そしてまずは扉をよく見つめる。それこそ端から端、ドアノブに関しては特にしっかりと見る。

 それが終わると、今度は室内に入る。そして部屋をぐるりと眺める。違和感を感じなければ、王の執務机だ。昨日と変わりがなかったようで、しっかりと細工をして戻されていることもあるので注意が必要だ。


「――ニーナ、今日も問題はないか?」


 ニーナの次にやって来たのは宰相のテオドールだ。狐によく似た顔を持った彼は三角の耳をピンと立てて、くるくると辺りに耳を向けて警戒しながらこちらを見ている。


「今日も問題は無いです。見たところ違和感はありません」

「そうか。……しかし、その瞳は本当に便利だな。恐ろしくもあるが」


 そう言ったテオドールとニーナの目が合う。


「恐ろしいとか言いながら目を合わせるなんて変な人」

「なに、やましい事がなければ問題ないだろう?」


 テオドールはにやりと笑う。

 ニーナの瞳はオッドアイだ。右と左で色が違う、この世界でもかなり珍しい瞳を持つ。その瞳はただ珍しいだけでなく、ニーナにあるものを見せる。


「そうですね。見たところ魔法を使ってる様子はありませんね」


 この瞳は魔法を掛けられた物や人、そして魔法を使っている人を可視化するのだ。普通であれば魔法というのは何かを変化させるようなものでも無い限り、魔法を掛けられたモノであるということは分からない。

 しかし特別な別の魔法を用いて検査しなければ分からないのに、ニーナは生まれた時から魔法に掛けられたモノを見るとそれが歪みとして見える。それはどうやらオッドアイの瞳のせいであるそうなのだが、だからこそニーナは天涯孤独なのかもしれなかった。物心がつく頃にはすでにニーナは一人であった。


「そうだ。今夜空いてないか?」

「空いていません。――それじゃ、私は仕事も終わったので失礼します」

「相変わらず、ニーナはつれないな」

「テオドール様ほどの人でしたらより取り見取りでしょうから、どうぞ私にはお構いなく。それでは失礼致します」


 肩を竦めてニーナを見るテオドールにそう言い切って、さっさと執務室を後にする。執務室にある危険を見つけるのがニーナの仕事。ニーナの魔力では対処できない場合もあるので、見つけてテオドールに報告するまでが仕事だ。


「……さて、そろそろクロエが来てるかな」


 ぽつりと呟いて向かうのは資材庫。そこには当たり前にニーナと視線を合わせて笑う彼女がいる。王さまの想い人として城内でも有名な彼女はニーナのことを友だちだと言って笑う。

 ニーナのオッドアイと目を合わせたがる人はほとんどいない。ニーナには魔法をかけられたものかどうかという判別をするくらいの能力しかないのに、オッドアイには人の秘密を暴く能力があるという噂を信じている人が多いのだ。

 大事な友人が今日も笑顔でいてくれるように、ニーナはそっと願いながらニーナは資材庫に向けて歩く。王の執務室は今日も安全である。

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