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彼らから食料を分けてもらい、こちらも野菜を渡し、晩飯を囲む。この世界に来てから初めての料理は、野菜と干し肉の入ったスープと固いパンだが、思わず涙がこぼれそうになった。調理された食事の暖かさ、決して豪華なものではないが、手作りのその暖かさが、都会の利便性を追求したレトルトや既製品だらけの食事とは別の、“何か”を思い出させてくれたみたいだ。
食事を終え、彼らと話を交わす。
スキルに関して、この世界にはスキルというものがあり、やはり、パッシブのスキルとアクティブのスキルがあるそうだ。スキルは、自分のレベルとそのスキルの使用回数によってレベルが上がり、より上位のものを使用できるようになるそうだ。また、この世界に生まれた人族は、生まれた瞬間からランダムでスキルを1つから3つほど有しているそうだ。どのようなスキルを、どれだけもっているかは、物心ついた頃に神官のもとにいくことで判明するらしい。大体のスキルは判明後、使えるようになるらしいのだが、魔法系列などは、使い方を習わなければ上手く使えないようで、魔術師に師事して使い方を教わるらしい。アスカさんは、火魔法と闇魔法の2つを覚えているなんて、才能があったのか、すごくいい師に出会ったのでしょうね、とベスの言葉だ。いや自分で選びました、ともいえなく、そのようなことにしておいた。また特定のスキルに関しては、魔法もその一つだが、鍛練に鍛練を重ね習得できるそうで、元から持っていない人、もしくは追加の属性がほしい人はそうして手にいれるらしい。最後に、レベルでも追加できるんだよ、とアルトが締めた。15レベル毎に一回のボーナスポイントを使用して、だけどね、とも。つまり、元から5つも自由に選べた自分は、相当恵まれた人間のよう。勇者と呼ばれる強大な人を含めた極僅かの人族はスキルを元から沢山もっているらしいが、しかし選べないとのことで、これが召喚された故の優遇された点だろうか。
「ずっと気になっていたんだけど、アスカ君が抱えている子と、肩に乗せている子ってモンスターよね?アスカ君は召喚魔法も行使できるの???」
「ええそうですよ。フレイムスライムのテンと、スケルトン・フェアリーのシェムです。召喚魔法って、珍しいんですか?」
「珍しくはないわ。けれど、火魔法、闇魔法、召喚魔法、見たところ火と闇のかしら、全部で3つも魔法を使えるなんて、なかなかすごいことよ?私は水と光の属性魔法しか使えないもの。」
「それに、属性魔法と召喚魔法では難易度が違って、召喚魔法のほうが難しいんだから!私よりすごい魔術師さんだったのね。」
どうやら、火水風地闇光の6種類の魔法は、属性を宿しているために属性魔法と呼ばれ、召喚魔法はまた別のカテゴリーに属した魔法、とのことだ。
「いえいえ、属性魔法はレベル1ですし、召喚も最低級しかできませんよ?」
「あら、なら属性魔法のレベルが高い分、私のほうが上かしら?ふふふ」
にこやかに笑うベス。レベルを聞くと、属性魔法のレベルは光が2、水が1、本人のレベル自体は30だそうだ。ほかの2人はアルトが35、セロは38と全員30代、4レベルの自分とは全然レベルが違う。
「レベルが低くても気にしなくていいと思うよ。アスカ君はレベル以上のポテンシャルをどうやら秘めているようだしね。」
「低級モンスターのゴブリンを魔術師がソロで倒したのだ、これからに期待が持てるというものだ。」
アルトとセロが各々ほめてくれるが、どうやら勘違いをしているようだ。遭遇したゴブリンは8匹で、殲滅した、という旨を告げると、全員驚いたようで。その後危険すぎる、とも説教をされたが。そういえば、折角なので疑問をぶつけてみる、闇魔法に関しての。
「あぁ、それはベスが詳しいね、よr「はいはい、ある不思議な特性があってね、属性魔法には遠距離魔法と近接魔法の二種類があるの。火・水・風・地の属性魔法に関しては、遠距離魔法の量が多くて、勿論近接もあるわよ?でもレベルが上がらないとあまり使えないの。けれど、光・闇の属性魔法は、少し特殊で、先に近接魔法を覚えて、ある程度のレベルまであがったらやっと遠距離魔法が解放される、という感じなの。その分強力なんだけれど、MPを使うのが玉に傷よね。あと、ついでになんだけれど、召喚魔法についても伝えておくわね。召喚魔法は、召喚される種族は毎回ランダムなんだけれど、一度召喚した種族に関しては、2倍のMPを使用して同族のモンスターを召喚できるらしいの。まぁ召喚魔法自体MP消費がアホみたいに大きいからあまりやらなみたいだけど。それで、召喚されたモンスターにも遠距離型と近接型があって、見たところアスカ君のは両方遠距離かな?彼らには人族にかかる属性魔法の制限はないみたいで、遠距離か近接かで使う魔法も変わるみたい。伝聞形式なのは私が召喚魔法を修めてないからなの、ごめんね?」
「そうなんですか、勉強になりました。召喚魔法にもいろいろあるんですね。あと2つほど質問なのですが、MPの回復はいつどのくらいの量行われるのでしょう?」
さきほど気が付いたことだが、MPが6000まで回復していた。そうして疑問に思ったゆえの質問。
「えーっとね、MPは、1日1回、0時になると共に全体量の4分の1回復するの。ポーションで回復することもできるけれど、あまり使いすぎてはだめよ?」
つまりだ、自分は今日だけで2度回復している。MP回復速度上昇の効果は発動しているようだ、想定のものと違うが。
「ありがとうございます。では最後に、ユニークスキルってご存知ですか?」
「それに関しては、セロに聞いたほうが早いかしら。セロ?」
「うむ、ユニークスキル、というのは、神からの祝福だ。そこそこ珍しいもので、3人の内では我しかついておらぬ。」
「えっと、解説しておくと、生まれた時に、確率でレアなスキルが付与されていることがあるらしいんだ。それは個人によって違って、故にユニークスキルって呼ばれているんだけど、ネガティブなのもあるけれど、実力が持っているのと持っていないのとでは全然違うものが多いんだ。」
アルトの解説によって、理解ができた。確かに、<魔力増大>のスキルは異常なものである、知恵、知能が5倍になるなど、そうそうあっては大変だろう。
「あと、ユニークスキルは持っているとかあまり堂々と言わないほうがいいよ?妬みの原因になるからね。セロは変なとこで口が軽いんだから。」
「そうですか、ありがとうございます。」
「あ、気になってたんだけど、敬語はやめたほうがいいわよ?貴族や王様、大商人会うなら兎も角、街中で敬語で話してたら格下に見られるわ。そんなの神官くらいなものよ。」
「そうか、なら敬語はやめることにする。ありがとう。」
敬語は舐められる、というわけなのだろうか。おとなしく忠告に従って敬語はやめることにする、なぜ見知らぬ他人にここまでフレンドリーなのかと思ったが、そういう理由があったとは。
「うん、そっちのほうが自然に見えるよ。じゃあ、遅いしそろそろ寝ようか。皆明日はプルミエに帰る予定だから、よろしくね。」
アルトが会話を締め、寝る準備に入る。どうやらこちらの世界は早くに寝る習慣らしい。一応、先ほど夜の見張り番の順番をきめた、自分は一番最後、早朝なので、今日は安心して眠れる。毛布も借りて、多少なりとも昨晩よりマシな睡眠時間を遅れそうだ。テンを抱きしめ、シェムは自分の腹の上に横になっている。睡眠、休息はやはり必要なのだろうか、昨晩までは悪いことをしたな、と思いつつ、睡魔に身を委ねていった。
会話って本当に作るの大変ですね・・・
地の文だけで済ませたい衝動に駆られます。
2012-11-22修正
2013-2-12修正