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ウィステリア皇国に住む人々よ、そして我らが誇る誉れ高き皇国軍よ、これは聖戦である。
諸君も知っている通り、今皇国南部は未曽有の大飢饉に直面している。諸君の中には、此度の皇国南部の飢饉により苦しんでいる人も多いであろう。川は乾き、木々は立ち枯れ、生けとし生けるもの全てが苦しんできた。
諸君も知っている通り、我らが盟友であるヴァーミリオン大帝国は我らの危機に対し素早く、誠意をもって行動をしてくれた。南部に大量の食糧を支援し、大量の物資を支援し、そしてどんな時でも協力すると盟約してくれたのだ。本当の友とは、辛い時こそ頼りになる、ヴァーミリオン大帝国こそ義侠心に溢れたなんと素晴らしい国であろうか。我らはその姿を忘れてはならない。我は今ここに、国家を代表して感謝を述べる。そして彼らがもしも危機に陥るときがあるのならば、我らはその恩を必ず返すであろうことを今ここに宣言する。
北部に存在する魔王城も忘れてはならない。彼らは我らが危機を見過ごさず、その閉ざされていた門戸を開いてくれた。数々の物資、食料の支援、そして何より北部国境を越えてくる蛮族たるモンスターを悉く撃退、壊滅せしめてくれることを盟約してくれたのだ。これで我らは後顧の憂いなく、安心して背中を預けて苦しむ人々を助けることができたのだ。我らはその姿を忘れてはならない。我は今ここに、国家を代表して今までの行動を恥じ、謝罪をするとともに、その情け深い行動に感謝を述べる。願わくば、我らは彼らと友好的な関係をこれからも続けていきたいということを、今ここに宣言する。
しかしながら、諸君も知っている通り、我らの窮地を好機と捉える不届きものも残念ながら存在する。皇国南部と接する蛮族共は、我らの窮地を見るや否や南部国境の侵犯を繰り返し、皇国を挑発してきた。蛮族共は、我らが15年前彼らを襲った天変地異に対し、温情深く接したことを忘れる恥知らずである。
今、我らを襲う飢饉は一先ずの平穏を得た。恐らく我らはこれから時間をかけ復興していくであろう。但し、その為には目先の障害を叩き潰さなければならない。貧窮に喘ぐ人々をあざ笑う、人道に反した行動を行う蛮族共は壊滅せしめなければならない。
もう一度言おう、 ウィステリア皇国に住む人々よ、そして我らが誇る誉れ高き皇国軍よ、これは聖戦である。正義は我らと共にある。邪悪なる人の皮を被りし蛮族どもが相手である限り、我らに敗北の二文字は存在しないのだ。
双月暦1187年4月4ツ闇の日、ウィステリア皇国は南部の蛮族が治めるウラネズ王国及び共和国タンに対し、宣戦を布告する。




