表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
3 帰郷と喪失
67/239

67

 Aランク、銀でできたギルドカード、陽光の下に晒すとそれは輝きを増し直視できないほどに。これから使うに当たって汚れていくのではあろう、今の輝きを目に焼き付けて、次の金のギルドカードまで進めたい。これで自分たちはAランク、そしてこの臨時パーティーも終わりを告げる。最初は肉壁程度に考えていたが、なかなかどうしてBランクまでソロでやってきたあたり伊達ではないということか。

 

 その夜は大宴会だった。まぁ大といっても自分たち2人と、ギルドの店員が主な参加者ではあったが。途中から酔った冒険者たちも口々に褒めの言葉を口にしてくれて、まぁ捨てた物じゃない。この世界に来て半年、ここまで来た。これより上のランクは3つ、はたしてどれだけの日数で進めるのだろうか。BランクからAランクまではおおよそ3ヵ月、これでも相当早いらしい。次のSランクの冒険者になるための試験は今までとは違う形になる。

 

 ・自分のレベルが250以上になる事

 ・指定された上級最上位モンスター21種の内3種を討伐し証拠を提出

 ・特級モンスター1体を討伐し証拠を提出


 この3つの要項を達成すればSランクになれる。当然ソロで行くならば特級モンスターを討伐するということはかなりの戦力差がないと辛くなる。それだけではない、上級最上位モンスター3種は、南部ならばディセ西鉱山区最深部を占拠するエルダーデーモン、エボニー王国砂漠地帯失われた都市に出没するエルダーリッチしか存在しない。どちらも数体で行動しているモンスターで、他の18種は中部から北部に点在している。余談だが、ウィステリア皇国北部魔王城に存在している名前付き上級最上位モンスターの死を司る使用人(デス・メイド)、これは特級にもっとも近いと呼ばれるモンスターで、3つ目の条件にも例外的に当てはまる。何故なのか、それは魔王城と呼ばれるその城に住む一番弱いモンスターがデス・メイドだから。そこはウィステリア皇国が擁する戦鬼をもってしても未だ攻略されていない城。魔王という名を冠すその支配者はどれだけの力を持っているのかもわからない。ただそこからモンスターが人族居住地域にでてくることはないのでSSランク冒険者最上位層や8翼は未だ押し入ってはいない。

 名前付きモンスター、それは特級を超えるモンスター群の中で有名なモンスター達。2つ名を持つ彼らは1体で凄まじい戦力を持つ。例えば、死を司る使用人(デス・メイド)、例えば、古代飛龍の長エンシェント・ワイバーン・ロード。彼らを討伐し、証明となる部位を持って凱旋することは最高の栄誉であり、それをもってSランク、SSランクの証明となる。都市において名を残すことになるだけの英雄になりうる、これをすることがほぼ全ての冒険者の夢。ただ、絶対に勝てないであろう名前付きもいる、古代飛龍の長はその1角。まず居住地域にすら辿り着けないのだから。


 そして何より、自分はこれからトリスと行動する。つまりSランクを目指さない可能性が高いということ。それ故住みやすい都市の情報も同時に仕入れている。エルフの里は条件が厳しいが、入居できれば天国のような場所、最近西部にあるトープ連邦のヴァレヌという都市が非常にいい都市になったと聞く。ほかにもさまざまな場所の情報を仕入れ、彼女とともに決めようと思う。時間はまだある、来るであろう幸せな日々。子供はどうしようか、何人か、名前はどうしようか、バラ色の人生。


 

 それから1日おいて次の日の朝。装備は磨いた、新しく買うことも考えたのだが、プルミエで揃えよう。必要な食糧は購入した、水筒と蝋燭は新しく購入し、一応土産に彼女の体に合うようなローブも用意した。服でもよかったのだが、服のサイズがわからないから。だから確実に着れるであろうローブを。今回は馬を使わず歩きでいこう。最悪ガルムの背に乗ればいいが、彼にそんな負担をかけるわけにもいかなだろう。

 金は残り金貨1枚と銀貨83枚、大銅貨38枚。この数か月で結構稼いだのだが、それでもこの程度。まぁ冒険者以外の人々の稼ぎからしてみればそこまででもないだろう。もう少し金を貯めれば、彼女とゆっくりと過ごすことのできる安住の地くらいは用意できそうじゃないか。職業は何をしようか、何ならできるだろうか。農地を購入して農家生活でもいいかもしれない。


 「またねアスカ、次会うときはくるのかしら。」

 「さぁ、それは神のみぞ知るってところじゃないのか?」

 「きっとそうね、でも、まぁいいわ。私はこのあと北上するわ、いつか会いましょう。」

 「あぁ、じゃぁな。」


 ウルムス村の入り口で彼女に別れを告げる。サラはこのまま違う出口から村をでて北に、最終目標はヴァーミリオン大帝国魔物の谷、そこで狩りをするらしい。女の一人旅、なにかと問題はあるだろうが彼女なら平気だろう、十分なレベルもあることだ。そう思い、テン達を召喚しつつ南下し始める。


 徒歩で歩くと思ったよりも距離がある、約1月ほどの旅。ロザスに入るまではだいたい10日間、道中に村はない。ただ人通りがないわけではなく、行商人などがよく使う道なので安全といえば安全、だいたい1日歩けば10組には会うだろう、その程度なので安心している。そのあとはロザスから西に移動、村を1つ通っていつかの街道に。村をいくつか通りつつも南下すればそれで終わり。ロザスからはおおよそ20日程度じゃないだろうか。まずはその道のりを歩き続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ