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3章開始です
あれから1ヵ月。延々と自分たちはAランクになるために依頼を繰り返してきた。
あの日、サラが気絶して1人でフォレストシザーマンティスを討伐した日。あのあと自分は2日間意識を失っていたらしい。サラが必死に街まで引き摺ってくれた、当然ガルムの助けもあったそうだが。結局あの蟷螂は突然変異種だったそうで、上級上位クラスの化け物だったそう。ただ、一応あった目撃証言によると自分が会ったものより2回り以上大きいレベルらしい。つまりはあれは幼生だったということらしい。成体になると上級最上位から特級下位。Sランクの冒険者が出張ってこようかというものだそう。幼生であれとは、成体はどれだけのものなのか。特級はおろか上級上位のモンスターとの経験もほぼない自分には推測もできない。
ドロップアイテムは変異したシザーマンティスの鎌が2つ。特級に片足突っ込んだレベルなのでドロップアイテムが2つになったそう。売るだけで1つ銀貨30枚、すさまじい額の儲けになる素材。このくらいになると素材としても非常によく、鍛冶屋にもっていけば防具や武具を作る素材に成り得るらしい。つまり鍛冶屋なんてのはベテラン御用達の店というわけ。
では鍛冶屋は普段何をしているのか。日用雑貨も作成しているらしく、それは非常に安価だそう。やはり足元を見られている、いや精密な作業が必要だからという理由らしいが。
2日間寝ていた自分が起きたのは夕方過ぎ、出血多量、重大な裂傷、そしてなにより大量の魔力消費によってかなり危険な状態だったらしい。それから1週間は寝込む羽目に。
この世界の医療は地球とはかなり違う、光系統の回復魔法を使用しつつ手術等を行うものが基本らしい。なので基本的には軽い物は教会の神父が使う回復魔法で治療するケースが非常に多い。たとえば左腕、鉄の角が突き刺さったものの、この程度なら神父の力で済むそう。それなのに病院に入院している理由、なぜ病院が必要なのか。なぜなら回復魔法は怪我人のMPが結構残っている場合のみ効力を発揮するそう。故に戦いでほとんど魔力を使い切ってしまった自分には効力がなく、入院しつつ回復を待ちながら治療を行える病院にいくことに。
ではなぜMPがないと回復できないのか。回復魔法はかけた対象の治癒能力を大幅に上昇させ治癒させるという形式を持つ。故に欠損した場合治療できないのはそういうわけ。ところで、この世界の人々は治癒能力が非常に高い、これはMPが関係しているから。MPが満タンに近ければ近いほど治癒能力は高くなるのだそう、しかもこればかりは数値ではなく割合だそうで。故にMPがほぼ空の場合治癒能力は無に等しい。そしてMPが回復するのは1日1回。自分はそれに加え、大量の失血をし、また身体的にもガタが来ていたようで、MPが回復してもうまく治癒魔法がかからなかったそう。これは体力を限界まで消費した人は良くなるんだよ、そう医者は言っていたか。
今それから3ヵ月弱。遅れた分大量の依頼をしっかりとこなしつつ経験値も稼ぎ続けた自分たちはかなりのレベルになっている。サラは140、自分は157。自分のステータスは、
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル3>、<火魔法レベル3>、<MP回復速度上昇>、<共通語>、<全能力強化>、<鑑定魔法>
Level: 157
HP: 6500/6500
MP: 39000/39000
Constitution: 65
Wisdom: 390
Strength: 20
Intelligence: 390
Quickness: 25
Bonus Status Point: 0
Bonus Skill Point: 3
テン(ヘルフレイムスライム) Level:132
シェム(アンデッド・フェアリー) Level:145
ガルム(ブラックウルフ) Level:130
新たなスキルは<全能力強化>。これは<筋力強化>、<俊敏性強化>、<体質強化>、<知恵強化>、<知能強化>の5つを取得した際に新しく出てきたスキルで、取得したところ5つが1つにまとまり、ボーナスで全能力が1つ当たり5ずつ追加された。他にも取得したいスキルはあるが、サラに相談したところ、今困っていないのならとっておけと。そして魔法のレベルが上昇。新たに火魔法には、ヘルフレイム、ヘルフレイムランス、エクスプロードが追加された。どうやらウォールはフレイムウォールで打ちとめのようで、しかし新たにエクスプロード、爆破、そういう魔法が追加された。エクスプロードは自分の目の前の地面を爆破させる魔法。地面の中で爆破させているようで、周りに火が移る心配はそこまでない。闇魔法のほうはグラビティとポイズンミストが追加された。待ちに待った遠距離魔法、グラビティは目の前に半円を生じさせ、そこのなかの重力を少し強くする魔法。敵の動きを遅くさせることに使える一方、味方もその中にはいるとその効果を受けるということも判明した。ポイズンミストはシェムの毒の霧。
そしてテン達、皆かなりレベルが上がり、そして皆上位種に進化した。
まずはテンから。テンは上位種であるヘルフレイムスライムに。大きさはさらに1回りほど大きくなり、もう抱えるのがつらい大きさに。形は変わっていないが、俊敏性も増し、攻撃方法もフレイムウォールなど火魔法レベル2程度の魔法は行使できるように。シェムは受肉した。今まで骸骨だったその姿は今では美しい青白い妖精に。相変わらず喋れないがより人間味が増した。使える魔法にグラビティが追加され、それだけではなく霧の射程も伸びた。そして闇の力だろうか、黒い火球を敵に放つ魔法も覚えた。ガルムはより大きく、自分を乗せられるほどに大きく成長した。漆黒の毛並みは固く、そしてかつしなやかになり、牙は大きくより獰猛になった。俊敏性も増している。
そしてAランクの昇格試験を受けられるように。依頼書を確認させてもらったところ、
・Aランク昇格試験
目標 フォレストオーガ100体 同オーガス70体 同オーガリーダー10体 フォレストスティールビートル30匹の討伐
期限 受注してから4日
報酬 Aランクへの昇格
かなりきつい物になっている。おそらくなんとか行けるであろうが、休憩をする暇はない。1日あたり50体近くのオーガ種のモンスターを討伐しなければいけない。そして森にはオーガ種だけではない。あげくにフォレストスティールビートル30匹というおまけつき。どこかで遠征しなければならないというわけ。
そのためサラと相談した結果、今日は休んで準備をして、明日から行うとのことに。これを達成してしまえばAランク、そしていい頃合い、トリスに会いに戻れる。今は10月の終わり。右手首のミサンガを撫でる。血と汚れで少し色はくすんだが、それでもなおあの日々を思い出す。早く会いたい。
今の時刻は昼。これから4日間、街には戻らずに森の近くの草原で野営をする予定。戻ってもいいのだが、戻ってしまったら気が抜けてしまいそうだから。その為の食糧を買いあさる。防具はかなりぼろくなっては来ているもののまだ補修が必要というほどでもない。
ちなみに1、3章と2章の関係は・・・




