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「これは・・・拙いな・・・」
つい独り言、冷や汗が背中を濡らす。まだ姿自体は見えていないが、目の前のフォレストスティールビートル2匹だけではないことは、周りの木の影や少し遠くにある草が揺れていることからも想像はつく。ビッグモスの幼虫に囲まれているのならばなんの問題もないだろうが、もしもセンチピードロードがいた場合、いやアレは大きいので遠くからわかる、故にないだろうが。フォレストスティールビートルが5,6体程度いた場合でもかなり辛い戦いが想像できる。現在の戦力ならば、なんとかやれるだろうが問題なのはサラが意識を取り戻さないこと。
担いでいるサラを、鎧のお陰でそうとう重くて、捨てて贄にするならば確実に生き残れるだろうが。まぁそこまで薄情な人間でもなし。担いでいるサラを地面に降ろす。
「テン、お前は近づいてくる虫を攻撃しろ。サラを守ることを最優先に。」
「シェム、お前は俺と共に行動して動きを止めてくれ。」
「ガルム、できるだけモンスターを翻弄しろ、但し傷を負うような真似は避けろ。攻撃してもいいが、攻撃はくらうな。」
それぞれに指示を、杖を持ち直す。まずは目の前のカブトムシをどうにかしよう。周りの虫たちは、まだ姿を見せていない、遠くから高みの見物か、ただ単に来ていないだけか。
どうやら後者のようで、早くも1匹虫が来る、ビッグモスの幼虫。運はまだ自分たちを見捨てていなかったのか。
<フレイムウォール>
近づいてくるカブトムシ2匹を、火の壁が包む。ガルムは、ビッグモスの幼虫を嬲っていて。それでもやはり進軍は止まらない。いくら弱点属性だろうとはいえ、鋼でできた甲殻が火の威力を減衰させるのか。完全に地面から噴出する、というわけではなく少し浮いた場所から噴出しているという点も不利に働いて、腹にうまく火が届かなかったよう。
<フレイムウォール>
Mpなんて意識している暇もない、壁をもう一つ、そして顔を出したカブトムシの片割れに右手を払うようにしてフレイムランスを。もう1匹にもフレイムランス。先の戦闘では、サラがやりすぎてしまったためどのくらいで済むのかもわからない、フレイムランスをもう一度ずつ、十分近づいた、片方にダークソードで切りかかる。
振り下ろす右手、鋼の甲殻に少し食い込む、鉄の刃より通りは良いようで。もう一度、もう一度、同じ場所、にはいかないがそれでも似た位置に振り下ろす。
刹那、わき腹に鈍い痛み、残った1匹の角が刺さっていて、瞬時に身をよじったため深くは刺さっていないが。腰に左手を、ミセリコルデを振り下ろす。もちろん右手にはダークランスを、傷がついた部分に振り下ろした闇の槍は、虫を深く貫いて。
カブトムシ、当然固い甲殻と頭殻には繋ぎ目がある。逆手持ちしたミセリコルデは刺さり、細く、そして固い針状だったのが功を奏したのか、深くに。小指付近が甲殻に触れる、ミセリコルデは刺さったが向こうの角も左手に刺さっていて上腕筋が貫かれている、痛み、HPがかなり削られている。
2匹は討伐できた、しかし代償は大きく。MPは3000近く消費して、筋肉を貫かれた左腕は使えない。近接戦闘は避けたほうが確実によさそうだ。使えない左手を盾にすればいいという話もあるが、それは失うことと同義。教会に行けば回復してもらえるとはいえ、欠損部分は生えてこない。切断されたものをくっつけるのなら時間が早ければできるとのことだが、盾替わりにした場合つぶれてしまっているだろう。それでは残念ながら回復は見込めない。それに痛覚は死んだわけではない。モンスターの死体が消えることにより左手に突き刺さる角も消える、それと同時に血が噴き出す。とりあえずとして布を巻くことで圧迫して止血はしたが。それでも布が次第に赤く染まっていっている。早急にしっかりと止血しないと貧血でただでさえよくないパフォーマンスが悪化する。
ガルムは、ビッグモスの幼虫を3匹追加で討伐したらしく、アイテムを咥えてくる。
「ガルム、サラを引き摺ってでもいい、街道まで連れて行け。テンもその護衛にまわれ。シェムは俺と共に。限界までひきつけ、戦おう。」
前衛であるガルムを使うのはかなりの戦力ダウンにつながるだろうが、とりあえずサラをなんとかする必要がある。最悪、おいつかれるかどうかはわからないが走って逃げればいい、自分だけなら。完全に足手まといとなっている邪魔なウドの大木をどける必要がある。パーティープレイでの弊害が早くもでてしまった、いや逆を考えるとこうして危険な場合でも助けてもらえる、そういう利点とも考えることもできるか。ただどちらにしても助けるほうは非常に負担がかかる。起きた時には文句をしっかり言わせてもらおう。
サラの鎧の皮部分を加え、ガルムは街道のほうへ。根っこ等に引っかかった場合テンが燃やしてくれるだろう、そのためにつけたのだ。
自分もゆっくりと街道のほうに下がりつつ、モンスターを見る。奥の草を揺らしていたのは、ビッグモスの成虫とフォレストセンチピードだったよう。その両者とももう既に動かない身になっている。おそらく近づいてきていたであろう彼らを殺したのは、1匹の蟷螂。フォレストシザーマンティス、その腕についた鎌にビッグモスの成虫が刺さっている、どうやら消えないところを見ると、これは人族の時だけの特殊な事象なのだろうか。それとも。
蟷螂の口は、細長い物体を咀嚼している、哀れなフォレストセンチピードロード、モンスターの捕食は初めて見た。自分たちがああならないようにしなくては。そう考えつつも、足をゆっくりと後ろに下げていく。
なぜこんなに悠長に考えていられるのか、モンスターが異常かつ強さを滲み立たせているからで。
その蟷螂は、鎌を持った腕が4本あった。
通常の蟷螂は、地球と同じく足は6本、そのうち2つが鎌になっている。ただただ地球のものを大きくしたにすぎない、しかし目の前のこれは足が8本。そういえば、聞いたことのある。時折、突然変異種がでることがある。非常に稀な確立で発生する種から、よく発生する種までさまざまだが、おおよそそれらの強さは元のものよりも遥かに上。
センチピードロード、アレも突然変異の1種、頻度が高い為そこまでレアでもないが。フォレストシザーマンティスの突然変異種は聞いたことがない、本当に稀なのだろう。討伐したあとの素材は非常に高く売れるのだろう。
蟷螂は、ビッグモスの成虫の咀嚼に入っている。その姿は堂に入っていて、食べつつもその大きな複眼はこちらを確実に捉えている。あれを食べ終えた瞬間、こちらに襲い掛かってくるのだろうか、それともこちらの動きを待っているのだろうか。
<フレイムランス>
<フレイムランス>
<フレイムランス>
食べ終わる前に、攻撃を仕掛けておきたい。息つぐ暇もなく、フレイムランスを連射する。総勢5発の槍が蟷螂に。
それが蟷螂にささる刹那、鎌を振り、槍を振り払う。槍といえど火、鎌によって掻き消える数、総計4本。4つの鎌を総動員した結果だが、5発撃ったのが功を奏したのか、1本は直撃する。よろめく蟷螂、そこに必死に連射するはフレイムランス。ダークランスは投げるまでの動作が必要、故にこれを。
さすがは突然変異種、ほとんど掻き消していく、
「化け物か・・・」
そう呟いたのと同じころだろうか、蟷螂が前に出てくる。知っているだろうか、蟷螂は当然飛べる、地面を駆けるのではなく、相当な速さで飛んでくるその鎌4本を、杖で受け止め、切れずに1本が刺さる。いや、切られたといったほうがいいか。5メートルは離れた場所にいた蟷螂は、10秒もせずに自分の背後5メートルほどまで。先ほどの左わき腹が、大きく裂かれていて。血が流れ出す、内臓はまだ飛び出てはいない、なんとか筋肉までで止まったらしい。心臓の鼓動に合わせ、左半身が大きく脈打つ。体をねじりつつ受け止めようとしたため、浅くで済んだわき腹に左腕。前腕部も大きく裂かれていて、灼熱に晒されたかのような痛みが思考を阻害している。
それでも、やめるわけにはいかない、フレイムランスを延々と乱射する。無限に等しい量、シェムも遅ればせながら麻痺の煙を放ってくれたおかげで蟷螂の動きが止まる。一体どのくらい止まるのかわからないが火槍を放つも未だ倒れず。
放ちながら、近くの木にもたれかかる、立つことも辛くなってきた足、失血が続いた場合、全量の3分の1で生命にかかわる、今はどれだけ失っただろうか。蟷螂は麻痺とフレイムウォールによって動きを止められ、火槍が直撃している。それでも鎌で結構な数を掻き消しているあたり、他のフォレストシザーマンティスより遥かに強いのだろう。
魔法を放つ右腕が支えられなくなってきたころ、既に地面に座り込み、木がなければ倒れているほど消耗している。回復ポーションを使いたくとも、魔法は止められず左手は動かせない、故に回復できず、シェムは麻痺と毒の煙を放ち続ける。
もう何発放っただろうか、50は確実にはなったであろう頃、急激に意識が遠のく、それだけは、避けないと、死が近づいてくるのを感じる。
意識が闇に落ちる寸前、かすれた視界の奥で、蟷螂が倒れる様が・・・・
「アスカッ!」
この1日で聞きなれた声が、遠くに聞こえた。
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル2>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度上昇>、<共通語>、<筋力強化>、<俊敏性強化>、<体質強化>、<知恵強化>、<鑑定魔法>
Level: 94
HP: 13/3500
MP: 4350/26500
Constitution: 35
Wisdom: 265
Strength: 15
Intelligence: 240
Quickness: 20
Bonus Status Point: 2
Bonus Skill Point: 1
テン(ハイ・フレイムスライム) Level:81
シェム(ハイ・スケルトン・フェアリー) Level:91
ガルム(ダークウルフ) Level:83




