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或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
1 召喚、地固め
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40

ついに40話 全く話が進んでいないんですけどね・・・

 寝惚け眼を擦りつつ、窓から首を出して空を見上げる、見渡す限りの1面の青空。雲1つない、一瞬で目が覚める。水差しから1口、口を濯いで外に吐き出す、不快感も消えたところで改めて1口。昨日の天気はどこへやら、最高の天気だろう。

 都市にいる間は、こういう天気にももちろん遭遇はしていたが、所詮都市での話、外に出るといっても狩り程度、今馬の背に乗って駆け抜けたらどんなに気持ちのいいことだろうかと気分が高揚する。

 村に正確な時計なんてものはない、日の出と共に起きだして日の入りと共に寝るのが村での生活なのだから、故に必要がない。宿の前においてある日時計、刻みは3時間ごと、を見る、朝の6時ごろ、そんなところだろうか。食堂に降りると、昨日のカップルはもういて。パンと肉詰め、野菜の簡単な朝食をとる。この世界に来て、心なしか空腹の度合いが小さくなったような気がする。日本にいたころは、天丼とカツ丼!だったり、ラーメン大盛りに替え玉2つ!みたいなことをしていても平気だったが、今は毎食パンを3つか4つほど食べるだけで腹が満たされる。おそらく今日本のときのような油濃い物を食べたら、胃もたれを起こすこと間違いないだろう。一体何が原因なのかわからない、が食費がかからないのは良いことだろう。


 朝食を済ませ、鎧を着込み、宿を発つ。馬小屋から連れてきたケーナの背に跨り、カップルに別れを告げる。彼らは徒歩なようで、ここからディセまで6日近くかかるかもしれないな。

 彼らの後姿を少し見つめた後、ケーナを操り逆方向へ。村の外に、いや、門などないのであくまで雰囲気だが、出たところでケーナを常歩から速歩にさせる。どんどん遠ざかっていく村、次に来るのは4月後ごろ。


 草原を、一面の緑の中を、疾駆する。最初は速歩程度で進ませていたが、4時間ほどだろうか、休憩を挟んで少ししたところで、本当に気持ちよくなってきてしまって。故に、駈歩で草原を貫く1本道を駆け抜ける。日差しは暖かく、そして風は涼しい、決して暑すぎもせず、寒すぎもせず。ケーナも心地よいのか、のびのびと足を動かす、隣で並走するガルムも本当に気持ちよさそうだ。全力疾走ではないとはいえ、馬の速度についてこられるガルム、素晴らしい。空気は澄み渡っていて、日本にこんな場所はあるだろうか、いやない。この世界でしか体験できない、日本に居ては一生経験し得なかったであろう瞬間。


 太陽があるので、大体の時間が掴みやすい、今は昼過ぎ。調子に乗ってケーナを存分に走らせ続けた結果、先の村から50キロほどにあるという次の宿場村は、とうに通り過ぎていて。何も考えずにただ気の赴くまま駆け抜けた結果がこれ。宿に泊まろうと思っていた、計画を諦めることに。今日はこのまま少しばかり進んで野宿。おそらく、80キロ近く進んでいるのでは。ケーナの疲労も考慮し、ここからは常歩で動く。夕方、日没まで進めばおそらく100キロ近く今日だけで進んでいることだろう。そう考えると、明日は残り100キロ、駆け抜ければ4日で着くことができる。随分とケーナには負担をかけてしまうかもしれないが、許してほしい。ウルムス村に着き次第、野菜や果物を買ってお礼として渡そう、そう思いながらケーナの背に揺られる。


 左手を見ると、遠くに他の山並みから飛び出る、巨大な山が見える。天気が非常にいいため見えたのだろう、遥か彼方にあるであろうその山は、それでも尚強大な姿を日の下に晒していて。おそらく、あれが噂に聞く、ヴァーミリオン大帝国北部国境である山脈の中でも最も標高の高い山、アデル。

 彼の山には伝説がいくつもあるそう。おばさんに世界の伝説を聞いているときに聞いた話だが。その中に1つの伝説がある。


 アデルは、山脈の中心部にあるうえ、周りを低いながらも山々や森林に覆われているため人が未だまともに探索できていない土地。そんな山の麓まで、何の因果か辿り着くことのできた冒険者がいた。彼が目にしたのは中腹部を飛び交う巨大なワイバーン、今まで見たこともないような、一目見てわかるほどの強大なそれ。それらは、何かの合図のように一斉に空に飛び立ち、彼の周りに着地する。彼とてかなりの実力者であった、それ故一瞬で勝ち目がないことに気が付く。おそらくこの内の1頭と1対1でやったとして、どれだけ耐えきれるか、5分か、10分か。それが周りに100頭近く、死を覚悟したその時、山の中腹部から1匹のワイバーンが下りてくるのに気が付く。周りのワイバーンの2倍の大きさがあるそれは、空の王者として相応しい物で、緑の鱗を日に輝かせ、優雅に、そして己の力を誇示するかのように降りてくる。そして飛龍は告げる、我こそは古代飛龍の長である、矮小な人間よ、ここは貴様らの来る場所ではない、今回は生かして返す、その意味を考えるがいい、と。

 そうして生きながらえた冒険者は、旅の前後で30歳ほどは老け込み、そして古代飛龍の長エンシェント・ワイバーン・ロードの言葉を他の冒険者に告げるほかは、一切の言葉を発しなくなったという。故に、アデルには近づいてはならぬ。


 他にも、様々な伝説がアデルにはある、例えば、頂上には古代飛龍の長でさえ勝てないとされる竜が住んでいるとか、アデルの麓には人の精神を害す兎がいるとか、そういう類のもの。その全てに共通するのは、絶対にアデルには近づいてはならない、という1つの事実。それだけアデルは強大な畏怖の対象であるのだろう。ちなみに、プルミエ大森林を破壊した古代飛龍は、そこに住む内の1匹、決して長ではないという。


 そんなことを思い出しつつ、馬を進ませる。

 日も落ちようとするころ、進むのを止め、野宿の用意をする。火魔法で薪に火をつけ、パンを温めつつ肉を炙る、その間にテントを張り、夕食に。香辛料を買っておけばよかったと今更ながら後悔をし始める。塩味の聞いた肉、胡椒やハーブが有れば高級料理に一瞬で変わったかもしれない、それほど美味い。

 今までは、ただパンに挟んできただけだったが、今日炙ってみて正解だった、これからも毎日炙ろう、そう思う。どうせ明日にはつくだろう、そう考え明日分の水以外を存分に使ったため、ケーナやテン、ガルムは存分に喉を潤せる。自分はスープを、塩漬け肉を水の中に入れて煮込んだだけのものだが。それでも、スープを飲むだけで体の芯から温まる、いや寒くはないのだが。


 日没とともに、雲が少しばかりどこからか。おかげで、月が隠れて星が見える。満点の星空、古代エジプト人は星空を見て、宝石箱のようだと感じたらしいが、仕方のないことだろう。ここまで大量の星が空に浮かび、幻想的な光景を見せられてはそれも仕方ない。あながち間違ってもいないだろう。いつか、トリスともこの光景を共に寝転んで見たいな、とロマンチックなことを考える。早く彼女に会いたい、しばらくはウルムス村に居るので、手紙を送ってみてもいいかもしれない。もしも、自分が鳥のモンスターを所持していたならば、楽々文通できたのに、そう思う。eメールが懐かしい、あれさえあれば一瞬で連絡が取れたのに。そんな魔法はないのか、今度調べてみよう、次ディセに行くのはかなり先だが。


 そんなことを考えながら、夜は過ぎる。次の日は、朝からケーナを走らせ、夕方にはウルムス村に。天気は普通、夕暮れに染まったウルムス村は、かなり大きな村、しかし都市とまではいかない、なぜなら大きな壁もないから。一応の柵、人の身長より高い程度、それを越えて村の中へ。家屋は30軒以上、宿屋も2,3軒はあって、プルミエより2回り、3回りほど小さいくらい。もう少し時がたてば都市になるのだろうか。1番大きな宿屋に向かい、ケーナを返して部屋をとる。当然ながら感謝をこめて食料を買い、ケーナに与える。感謝をつげ、別れる。いい馬だった、次借りるときがあるならあのくらいの馬を借りたいものだ、そう考える。

 夕方、そのまま夕食をとり、体を洗ったり歯を磨いたり、そして寝る。明日からの冒険に心躍らせつつ。


今のところ考えている大筋の内やっと2割かそこいらです


中盤くらいに置きたいなって思っている大筋しかできていない一番やりたい話はいつかけるのか・・・


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