37
昨日中の配置、階層すら変わったダンジョン、それでも変わらずに挑戦する人は多い。宿屋から防具屋へと歩く道すがら、門のほうに進んでいく人々を幾人も、幾人も見かける。今日明日は、ダンジョンには入らない、いやもう入ることはないかもしれない。この2日で、防具を新調し、馬車か馬を借りてハルニレ大森林まで行く準備をしなければ。
購入すべきものは、防具、野営具、そして食料。まずは防具、金自体は銀貨80枚弱あるので、まぁある程度のものは買えるだろう。やはり、金属を加工して作る防具などは高額なようで、ただこちらのほうが需要が高い分少しは安いのだろうか、相場はだいたい地球の中世時代より少し安い程度。防具屋に入る、プルミエのものより大きく、より多くのものが並べられている。もっと高ランクになれば、鍛冶師と直接交渉、というものもできるらしい。
ショールームよろしく大量の甲冑が立てられた店内、店員がすぐに駆けつけてくる。
「何かお探しでしょうか?」
「あぁ、防具を選びたいんだが、銀貨65枚程度で、動きやすく、ある程度の防御性能があるものを頼む。短剣使いをしていてね、プレートアーマーみたいな重量級はやめてくれよ?せめて全部で15キロ付近に収めてくれないか?」
「短剣をお使いですか、承知しました。重くなく、関節を邪魔せず、それでいて多少の防御性能をもつもので、見繕わせていただく、ということでよろしいでしょうか?」
「あぁ、頼む。」
店員に頼んで、探してもらっている間、暇を持て余したので、マントを見る。おそらく今回もマントは必要だろう、今つけているのは血で染まり、ところどころ切れている場所もある。歴戦の勇士のような見てくれだが、折角鎧も新調するのだ、マントも一緒に新調してしまおう。
マント、背中のみを覆うもの、背中と両肩まで覆うもの、腕全てさえも覆うもの、各種様々な色がある。今回は、背中と両肩を覆うもの、あまり前回と変わっていないが、を選ぶ。色は同じく漆黒、価格は50大銅貨、流石布は鎧に比べると非常に安い。
どうやら終わったようで、店員が話しかけてくる。見せられた防具は、5つほど。プレートアーマーを非常に薄くしたようなもの、それでも20キロはあるらしい、却下。スケイルアーマーがもう一度、重さは10キロほどらしい、鱗1つ1つが小さくなっており、防御性能も上がっているそう、胸部は鉄板のようになっている。ほかには、皮でできたスーツ、運動性はすこぶるよく、要所要所は鉄で覆われている。あとは、鎖帷子を2重にしたもの、悪くはないが、2重にしたことで耐久性は落ちるらしい、却下。最後に、鎖帷子の要所要所を鉄で覆ったもの、動きやすく、何より着やすいそう。
却下した2つ以外はどれもよさそうで、特に何も問題の内容に見える。試着はできないが、見た目、さわり心地から、スケイルアーマーにすることに。慣れた形、というものもあるが、考え自体は鎖帷子に似ていて、かつ見た目も悪くない、胸部も鉄板で覆われている、おそらく使いやすいだろうとこれを選ぶ。確実に今まで使っていた防具よりも材質がいい、段違いだろう。銀貨50枚。鎖帷子は、しっかりと少し奮発して購入、銀貨5枚。グローブとブーツは、前回と同様に鎧ではなく皮でできた物を、柔らかくそれでいて破れそうにない、しなやかなものを2つ、銀貨2枚で購入。ズボン、膝と脛部に鉄板が綺麗に縫いこまれてある、ある程度の防御能力があるとの店員の折り込み付きで、アースリザードの皮製のものを購入、銀貨3枚。他にも、下に着る衣類などをそこそこの数を購入し、防具屋を後にする。納品は3日後のようで。やはり大都市、鍛冶師が結構いるのだろうか。
次は、道具屋で野営具を購入する。テント、布製の薄く簡単な作りのものを1つ。それに加え、松明と薪を10日分ずつ、そして地面に敷く布と毛布を購入する。これらはまとめて銀貨2枚。地球ならば、これらを背負って行軍するとなると、重く、速度もだせないだろうが、この世界にはアイテムボックスがある。すべて仕舞い、ポーションも50個ほど購入、銀貨1枚、店をでる。
アルト達にあった日、アルト達は物資を馬車に積んでいた、これはアイテムボックスも容量の限界があるからで、これは生まれながらの運で量が決まるそう。自分のものは、1層目に400ほどのパネル型にしたアイテムが入るようだが、その先はどうなっているのか。2層目はあるのだろうか、一般人は100程度が最低、多い人は、戦鬼などがそうらしいが、1000近くはいるらしい。うらやましい、それだけあれば、延々と狩り続けられるだろうから。
アイテムボックスを整理して、ふと見つける、はるか昔に手に入れた「ゴブリンの鎌」。これはレアドロップだそうで、低確率で手に入るアイテムで、鍛冶屋に持っていけばいい素材になるそう。なので取ってある。ただ鎌なので何に使うかわからないが。
残りは、銀貨15枚もない。一応、緊急用として12,3枚は残しておきたい、食料を売る店に辿り着く。この世界のいところは、食料はアイテムボックスにパネル状に入れているかぎり、腐らないということ。まずは、ライ麦パンを、10日分朝昼夜で30個購入、それに加え、塩漬け肉を20センチ×20センチほどの大きさのものを3つほど購入。切り分けるための薄い小さなナイフも購入。菜っ葉やキノコ、ハーブなども購入し、全てで銀貨2枚。安いものだ。
ナイフで思い出したが、食器も、やかんさえもない、それらを購入、大銅貨50枚。
最後に、ガルム用の生肉をブロックで大量に買いあさり、兎肉、銀貨1枚と大銅貨70枚分。相当重い、50、60キロは最低でもあるだろう、どこにいくのかと笑われたが。おおよそこれで、森林付近での分も含め、1か月はもつだろう。それまでに、生肉の入手先を探しておかなければ。それか毎日角兎を乱獲すればいい。今回買った肉は兎80匹分ほどなのだから。ただ大変だろうが、なぜならそれだけ進む速度が落ちる故。
その他雑貨も少し購入し、ほくほくとしながら宿に帰る。部屋に戻ったら、ガルムに餌をやるか、最近知ったのだが、ガルムは3日に1度ほどで食事はいいそう、と思いながら。




