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短いです 更新明日できないかもです
ダンジョン、最下層、おそらく。それは、前回が30階層までだったからで。移動した先は、ドーム状になった大広間、四隅がある、四角形になっているのか。広さはかなりのもので、野球の内野より広いだろう。
四隅には松明が掛けられていて、煌々と暗闇を照らしている、灯りはそれだけ。部屋の中央部には玉座。揺れる松明に照らされるそれは、独特の危険な雰囲気を醸し出していて、近づく。石でできているのだろうか、黒色に近い色、松明の輝きが反射している、ひどく冷たく、滑らか。大きさは、人が座るには一回り大きい、そんなところだろうか。あまりにも質感が硬すぎて、長時間座っていることなどできそうもない。部屋には、何もいないようで。
はてさて、ボスモンスターでもいるかと思ったのだが。探索の邪魔であろう、テン達を、一旦転移陣の中に仕舞う。
「ランツ、ここには、何もいないようだぞ?」
「うん、僕もここには何かいるかと思っていたんだけどね。見たところ、この玉座だけ、ということかな。ところで、アスカは気が付いてる?ここ、出口ないよ。」
「えっ、本当か!?」
急いであたりを確認する、松明の灯りでも十分確認はできる、本当に存在しないようで。
「なんで、何かランツは知ってるか?」
「いや、まったくわからない。今までの踏破者の中には、たしかに最下層でモンスターに会ってない人はいた、だけど出口もない人なんて聞いたことがないよ。しかも、玉座なんて、こんなところに、玉座なんてあったって、出口もないのに、誰がいたっていうの?」
出口のない部屋、ランツの言葉の最後は、半ば悲鳴と化していて。いや、待て、さっきランツは何といったのか、出口のない玉座、誰がいたのか、ダンジョンの最深部で外に出ないで座っていられるもの、王。ダンジョンの、王。
「ランツ、落ち着k「なんで落ち着いていられるのさッ!」
「落ち着け、1つ質問がある、出られるかもしれない。」
驚いたのか、こちらを睨むように見つめてくる、確信はない。
「お前、ここの世界に、今までダンジョンを作り出せるスキルを持っていた人はいたか?」
「なんでそんなこと・・・もしかして、ここはそんなスキルがッ?」
「おそらく、そうだろう。ここには、ダンジョンの主、王がいたんだ。今はどうかわからないが。」
「だって、ここができたのは、かなり昔だって話だよッ?それから、ずっと誰もここには辿り着かなかったっていうのッ?」
確かに、それはそうだ。ごもっともな話。誰も辿りついたことのない部屋、なぜ自分たちが。何か要因があったのだろうか。考え込む。
それから、考えても、案は出てこなかった。ランツは、さっきから壁を延々と調べている、何もないだろうに、もう3周目。足が疲れ、どこかに座りたくなる。地べたでもいいが、折角の玉座、少し休憩をさせてもらおうと、腰を下ろした瞬間、
『システム起動・・・緊急脱出装置を起動しますか?』
機械音声、無機質な広間に響く声、ランツが振りかえり、近づいてくる。それと同時に、玉座の左腕置き横の部分から板。中には、煌々と点く画面が付いていて、YesとNoの文字が書いてある。この世界に来て、初めてみる文明の利器。
「アスカ、それ・・・何?」
「わからない、唯一わかるのは、ここでYesを押せば、緊急脱出装置が起動する、ということだけ。つまり、出れるかもしれない。」
「本当!?早くでようよ!僕はもうここには居たくない。なんか嫌な感じがするんだ。」
まるで言うことを聞かない赤子のように、でることを勧めてくるランツ、何かに怯えているのか、それとも閉所恐怖症だろうか。仕方ない、Yesの文字に指を伸ばし触れる、タッチパネルで、間違っていなかったようで。
『緊急脱出装置を起動します。移動先は、最終ポータル前、移動人数は現在部屋にいる生命反応全て』
玉座に座る、自分の腹部に魔方陣が展開されていく、ランツも同じようで、
『緊急脱出装置起動、移動5秒前、4』
カウントは進む、最終ポータル前、最後の魔方陣という意味と同義なのか、確認しなければ。そう思う心と裏腹に、非情に時は刻まれて、
『2、1、移動』
目の前が、急激に光を失っていく、視界がブラックアウト、刹那、体に衝撃、目の前が急に明るく。どこか、魔法の灯りがある部屋に、まるで宙から落とされたようで、地面に叩きつけられた格好。ここは、何の部屋だろうか、3メートル四方の小部屋、目の前には、魔方陣。おそらく、外にでるためのものだろう。
「ここは、アスカ!ここが踏破していた人がいっていた、最後の部屋だよ!ここから出た時に、アイテムボックスに自動でアイテムが入っていて、それと同時に、ダンジョンが組み替わるんだ!僕たちは出れたんだよ!!!」
はしゃぐ、ランツ、立ち上がると、そのまま魔方陣に入って行って、遅れないように、自分も追いかけ、魔方陣の中に入り、外にでる・・・
「クリアおめでとう、これでエンディングロール、長い長い迷宮探索も、冒険者のおかげで一区切りを迎えるのでした、さぁスタッフロールを用意しなきゃね」
ケラケラ笑う若い男の声が、後ろから聞こえた気がした。
目を開けると、入口の外にいて、目の前には、どんどん冒険者が放り出されてくる。おそらく、中で狩っていた人たちだろう、後ろを向くと、ダンジョンの入り口自体が光っていて、
「組み替わる、ダンジョンが組み替わるぞ!」
「誰かが踏破したんだ、誰だ?」
「今日Bランク昇格依頼受けてた2人組いたでしょ!」
そんな外野の声が聞こえてくる。自分達が踏破したので、組み替わるのか。今度はどんなになっているのか、考えつつ、他の冒険者に捕まって事情を質問される前に、呆けたランツを引っ張って町へと走っていく。




