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或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
1 召喚、地固め
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 「いやぁ、アスカならOKしてくれると思ってたよ。」


 ダンジョンまでの道すがら、ランツは言う。


 「初めて見たのは結構前かな、ダンジョンへの入場待機列で、僕の後ろに並んだよね。珍しいんだ、このダンジョンにソロで挑む人。やっぱり、モンスターとの遭遇を避けづらいから、戦闘回数も増えて、んで長時間効率よく潜るためにはパーティが効率いいんだよね。」

 「ただ、パーティでダンジョンに潜る奴らって、だいたいは皆でワイワイ楽しくって感じでさ、自分の生命を賭けて生活を受け取る、こんな危険なことをしているのに、低層で遊んで金貯めて街中で遊んで、だから嫌でパーティ組んでなかったんだ。そんな中さ、毎日、凄まじい数のドロップアイテムを売り払って、休まずにダンジョンに入っているアスカを見て、正直尊敬して、少しでもあの域に達しようって頑張って、今やっとその機会に恵まれた。提案、受けてくれてありがとう。」

 「いや、そんな俺は褒められるような人間じゃないさ。俺は、目標の為に休んでいる時間がなかったから、こうしているだけで、パーティを組んでいなかったのも、理由があったんだ。俺さ、記憶喪失でね。だから常識も怪しくて、それが理由。」

 「そうだったんだ。ちなみに、休んでいる暇のない、アスカの目標って、聞いてもいいかな?」

 「あぁ、恥ずかしい話なんだ、笑うなよ?俺は、前にいた街に、彼女を残してここにきた。半年以内にAランク冒険者になって迎えに来るっていう約束してね。」


 この話をしたのは、ランツが初めて。なぜか、ランツとは話しやすい。おそらく、ずっと心の片隅で気にかけていたからだろう。


 「へぇ、ロマンチックだねぇ。いいなぁ、そういう恋、僕もしてみたいよ。」


 そんな当たり障りのない会話を続けながら、ダンジョンの前へ。

 時間は今日の夕方まで、故に25階層から、できるだけ急いで向かう。いままで、ほとんど探索のしていなかった25階層、中級上位のモンスターが蠢く階層。そこへの一歩を、踏み出す。



 25階層は、サソリのような低級中位モンスター、ケイブスコーピオンが生息する地域。


 「アスカは、魔術師だよね?噂では、火魔法を乱射している姿を見たって人もいるし、モンスターを従えてたって人もいたけど。」

 「あぁ、俺は、ちょっと特殊でね、闇魔法も火魔法も使うし、モンスターも使役するよ。ハイ・フレイムスライムとハイ・スケルトンフェアリーと、ダークウルフだ。」


 ケイブスコーピオンを、なぎ倒し、殲滅しつつ会話は弾む。

 「召喚魔法と、火魔法と闇魔法、すごいね、それにMPも結構な量、神に愛されているのかな?それとも努力の賜物か。あと、使役できるモンスターの種族は言わないほうがいいよ、ある程度、見た目で予想はできるとはいえ、嫉妬されちゃうしね。」

 「忠告ありがとう。前者だよ、恐らく。」


 笑って答える。前者で、しかし愛されてはいないのだが。


 「どちらにしても、かなりの実力者だよね、レベルは70超えてるって、情報屋から聞いたんだけど。」

 「73かな。ところで、情報屋って何だ?」

 「知らないの?鑑定の魔法を習得してて、金を払うと対象のステータスを見てくれるんだ。それだから、アスカの異常なステータスも知ってるよ。あ、安心して、情報屋は、信頼が命だし、僕も他言はしないから。」

 「そんなものがあるのか、知らなかった。このステータスは、ユニークスキルの賜物でね。」

 「やっぱり、ユニークか。僕も、一応ユニークは持っているんだけど、そこまで効果の大きなものではないみたいでね。」


 その後も、出てくるケイブスコーピオンは、障害にもならず、バランスが良すぎるのだ。ガルムが攪乱、もしくはランツが薙ぎ払い、シェムが動きを止め、テンと自分が止めを刺す。全く危なげがない。道を間違えつつも、1時間もかからず、余裕で26階層への魔方陣を見つける。


 26階層は、ケイブスコーピオンに加えて、ケイブマンティス、24階層の広間にいた百足を小さくしたような中級上位モンスター、ケイブセンチピードが生息していたが、そこを自分たちは突き進む。ランツが剣で組み合い、薙ぎ払い、テンやシェム、ガルムも援護して、自分が魔法やミセリコルデで止めを刺す。


 「ただ、アスカのステータス、人の口に戸は立てられないっていうし、いつか、何かが来るかもしれないよ。騎士団単位かもしれないし、国家単位かもしれない。そのレベルで、そのステータスはレベルが上がった時に確実に脅威になるだろうから。」

 「そんなレベルなのか。ほかに、こんな異常な力を持つ奴らは世界にはいないのか?」

 「その現時点でも膨大なMPが、もっと増えうる物ならの話だけどね。周りの人の数倍、下手すると何十倍もMPを持つ人間、戦争の時に、いや平常時でのお守りにも使える。狙わないほうがおかしいさ。少なくとも、僕がどこかの王様なり帝王なりだったら狙うね、なんとしても国に組み込む。そんな代物さ。」

 「一応、この世界にアスカに匹敵するユニークスキルを持っていたり、そのくらいの強さを誇っている人は、昔からいるし、今もいる。でも、ここら近辺では、今はアスカだけじゃないかな?」

 「へぇ、どんな奴がいるんだ?」


 近づいてきたケイブセンチピードを、剣でランツが吹き飛ばし、そこにダークランスを投げつけて殺す。


 「えっと、今生きてる中で、トップクラスに有名なのは、ヴァーミリオン大帝国の“勇者”とウィステリア皇国の“戦鬼”かな。勇者はレベル1500を超えてる人類最強の男で、戦鬼はレベル自体は350くらいなんだけど、どうもステータスが大変なことになっているって話。どちらも会ったことないんだけどね。」

 「その名前、覚えておくことにするよ。ありがとう」

 「アスカもそこに名前が連なるくらいになってよ!僕周りに自慢できるし。」


 ケラケラと笑うその姿は、まるで小学生のようで。穢れのない、澄み切った、笑い声が心を癒してくれる、そんな気分がした。

 そんな、会話をしつつも、圧倒的な戦力で26階層を踏破、27階層へ。



 結論から言うと、27、そして28階層は、口笛を吹いて、ピクニックができそうな勢いで進めた。出てくる敵が、自分たちと相性がよくなかった、いくら中級上位モンスターとはいえ。出てきたのは、27階層は、グール。動きが緩慢なこのモンスターは、組し易い格好の的で、精神衛生上、気分よく口笛を吹いていないと持たなかった、という一面もあったが。28階層は、26、27階層の総集編、哀しいことに1時間半の間蹂躙される運命に。


 29階層についた時点で、昼過ぎ、1時前後。パンを食べ、水を飲む。小休止をしたあと、歩き出す、29階層。モンスターの影もない。ただただ一本道。はるか遠くに、光る影、おそらく魔方陣だろう。となると、30階層はボスモンスターでもいる、というわけだろうか、一応警戒しながら進んだが、20分ほどまっすぐ歩いたところで、魔方陣の前に。

 もう一度、休憩をとり、ランツと顔を見合わせ、1、2の、3で。

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