33
自分が25階層に辿り着いてから、早くも5日がたった。受付のおばさんはあれ以来3日間、受付にも近寄るな、と言わんばかりの眼光をこちらに向けて一切の言葉を発さずに応対してくれるため、やりにくいことこの上なかった。
別に、もう1つの受付を使えばいいのだが、自分がギルドにいくと必ず他の冒険者がその受付に長蛇を成して並び始め、雑談を始めてしまうので使えなかった。おそらく、自分が気絶させてしまった時を見ていた冒険者が、酒の肴にして、それが広がった。その後、自分がおばさんと気まずいのをいいことに、それを酒の肴にするためわざとやっている、というのが真相だろう。
ちなみに、件の百足、あれは上級下位のモンスターで、名前をセンチピード・ロード。何故あの場所にいたのか、あそこはランダムで、ディセ近辺に住むモンスターを召喚するらしく、非常に運悪くここ周辺最強のあの百足がきてしまった、ということらしい。ここ周辺最強、ということで、あまり狩られることがなく、故にあのおばさんは久々に見ることとなり、あの惨事が起きた、というわけ。上級下位のモンスターに勝てた理由、属性の相性と、異常な量のMPだろう。
はてさて、この5日間、日中は依頼を達成しつつ、20階層から23階層で狩りを続け、夜はガルムを抱き締めて眠る、ということを繰り返してきた。宿にバレるとまずいのだろうが、ガルムの体毛のもふもふ加減、尻尾のふさふさ加減が最高で。狼は、体温が高く、40℃近く、素晴らしい抱き枕に。
狩り自体は、ケイブマンティス含め、モンスターを乱獲するだけの作業、素早い動きを見せるガルムが撹乱させ、シェムが動きを止める。かなり安定してきた、MPも1日狩って使用量は6000弱。時折傷を負うも、支障はなく、問題は防具の劣化。所々問題点、スケイルアーマーの鱗の欠落、鎖帷子の解れ、腕部装甲の傷、が出てきている、グローブは買い換えた。Cランク依頼を毎日5つ達成、ドロップアイテムの売却、金銭はある程度、銀貨70枚近く、貯まっている、そろそろ、防具を買い換えようと思う。
ランクが上がると、報酬も上がる、Cランクの依頼でだいたい1つ大銅貨30枚から50枚近く。自分は、1日に大体大銅貨400枚前後稼いでいる、Cランクでだ。この世界がジンバブエドル状態になりそうに感じるが、これはMPが異常な量あることに加え、モンスターを使役してソロで動いているからで、普通のパーティに属する冒険者は、1日大銅貨70枚前後らしい。ただ、基本的にこの世界において、高ランク冒険者はトップクラスに給料がいい、というのは事実らしいが。
そして、昨日、ついに規定数の依頼を達成、Bランク昇格試験の挑戦資格が手に入った。総計50を超える量、Cランクへのものから一気に増えた、出てくるモンスターのレベルが、非常に高くなるためらしい。
朝、いつも通りの時間に目覚め、武器を持ち、鎧を装着する。朝食を食べてギルドに向かう、Bランクに昇格したら防具を買い換えよう、いい機会だ。ギルドにて、おばさんに挨拶をしつつ、依頼を受注しようと手続きをしていたところ、あの大剣使いが話しかけてくる。
「君は、例の魔術師だね、百足を討伐したっていう。」
「あぁ、そうだよ。あなたは、ソロでよく行動している大剣使いさんで間違いないかな?」
「そうそう、よく見てるね。僕はランツ。見ての通り、ツーハンデッドソードを使ってる。今日、話しかけたのは、一つ提案があってね、君と僕、お互いに25階層まで行ってる、あ言ってなかったね、昨日僕も25階層まで行ったんだよ。話を聞いてると、どうやら25階層以降下の階層へはまだいってないそうじゃないか、情報も少ないしね。そこでなんだけど、君はどうやらBランクへの昇格試験を受けるんだろ?僕も受けられるんだ、だから協力しないかい?君は聞いたところ遠距離攻撃がメインだそうじゃないか、前衛の僕もいい加減辛くなってきたんだ、だから今回は協力しない?」
ランツ、そう名乗る男は、近くで見るとなかなかの好青年、身長と同じくらい、だいたい1.8メートルはある両手剣を背中に背負い、プレートメイルを背負っているのでかなりの迫力を受ける。鑑定の魔法、この魔法は人にしか使えないようで、テンたちに使っても効果がなかった、で、MPを500消費し、ステータスを盗み見る。
Name: ランツ
Title:
Level: 68
HP: 5500/5500
MP: 700/700
Constitution: 55
Wisdom: 7
Strength: 83
Intelligence: 7
Quickness: 10
鑑定の魔法の、悪いところは、スキル関係が全く見れないところだ。それでも、他の数値は見れる。ランツは、力のステータスが飛びぬけている、恐らくユニークスキルの影響だろう。効果は低いながらも、ユニークスキル自体は意外と結構な確立でついている冒険者が多いのは、ここでの生活で教わった。アルト達は、3人の内セロしかついていなかった、あれは完全に彼らが運の悪い人たちだったか、若しくはブラフを言っていたかのどちらかだろう。8割に近い人たちにユニークスキルが付いている、とおばさんが言っていた。但し、効果についてはピンキリで、本当についていても微弱なものから、異常なものまで。分布的には微弱なユニークスキルが多数を占めているとも言われた。ランツは、結構効果のあるユニークスキルが付いているのだろう、それかスキルを力強化一辺倒にしたか。レベルは68、自分より低いが、この酒場では最高クラス、今回の提案は、寄生とかではなく、本当に辛くなったのだろう。又は自分が踏破して中の様子が変わって攻略し直しになるのを防ぐため、か。別段断る要素はない。
ちなみに、自分のステータスおよびテンたちのステータスはこちら。
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル2>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度上昇>、<共通語>、<筋力強化>、<俊敏性強化>、<鑑定魔法>
Level: 73
HP: 2300/2300
MP: 20500/21000
Constitution: 23
Wisdom: 210
Strength: 15
Intelligence: 210
Quickness: 20
Bonus Status Point: 0
Bonus Skill Point: 1
テン(ハイ・フレイムスライム) Level:56
シェム(ハイ・スケルトン・フェアリー) Level:59
ガルム(ダークウルフ) Level:52
こう見ると、ユニークスキル<魔力増大>の壊れ性能がよくわかる。この世界には、このクラスの壊れユニークスキルがまだまだあるのだろうか、それとももっと上があるのだろうか。
「いいよ、組もう。俺も、前衛がほぼいなくてね、困っていたんだ。」
「そうか、ありがとう!君と僕が組んだ以上、相当なスピードで進めるはずだよ。MPの消費も抑えられるんじゃないかな?魔法を乱射すると噂の君に関係あるかはわからないけど・・・」
その後、簡単に自己紹介を交わし、依頼、Bランク昇格試験を受注する。パーティで行く場合、依頼を受ける際に申請すればいいそうで、それもすぐ終わる。
・Bランク昇格試験
目標:ディセ東ダンジョンの踏破
期限:受注した日の夕方6時の鐘まで
報酬:Bランクへの昇格
試験は、Cランクのものより時間制限もきつくなっていて、これが失敗した際はしばらく受けられないそうだ。こうして、実力のない冒険者が上のランクに行って虐殺されるのを防いでいるのだろう。
護衛任務以来、初めてのパーティ行動、それが今始まる・・・




