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次の日になり、朝前の屋台の親父と話して教えてもらったことが1つ。
未鑑定品、何があるか、どんな性能なのか、誰にもわからないもの。昨日、市場であの商人から買った3つのリング、どんな性能なのか、早く確かめたい衝動に襲われている。確かめる術は、2つ。
まず、鑑定の魔法が込められた札を、MPを消費して使う方法。非常に楽ではあるが、札自体がある程度高額、銀貨1枚で、 防具のために金を貯めようと思っている自分には、あまりとりたくない手段。
もうひとつは、鑑定の魔法自体を習得するという荒業。<鑑定魔法>というスキルを習得することで使えるようになるが、15レベルにつき1しか貰えないスキルポイントをこの魔法のために使うかどうか。対象のステータスを確認できる、という効果もあるので有用らしいが。
金銭面的な問題なら、取っておいて後々鑑定の札を使えばいいと言われればそうなのだが。折角素晴らしい効果もあるので、スキル<鑑定魔法>を残していた1ポイントを使用して習得する。
鎧を装着しつつ、鑑定の魔法をリングに掛ける。くすんでいたリングが色付き、鑑定が終わったことを示す。鑑定自体は、MPを消費せずに使えるようで、他者に使う場合はMP500消費だそうだ。リングに備えついた効果自体は、アイテムボックスに入れて選択することで確認できるようで。
・銅のリング
・銅のリング
・聖なるリング <光魔法強化>、<闇魔法弱化>付与
3つの内、2つは只の普通のリング、最後の1つは、使い道に困るもの。光魔法は、使えないし、闇魔法弱化は困る、故にアイテムボックスの肥やしに。こういう使いにくいものはある程度集まり次第露店でも開こう、そう思う。
ギルドに向かい、Cランクの依頼を受注する。今日は、
・マッドゲッコー10匹の討伐 大銅貨52枚
・ハイ・スケルトン・フェアリー7匹の討伐 大銅貨50枚
・ケイブゲッコー10匹の討伐 大銅貨 52枚
・ハイ・フェアリー7匹の討伐 大銅貨 40枚
・ハイ・フェアリーウォーリア5匹の討伐 大銅貨30枚
の5つを受注。ケイブゲッコーはマッドゲッコーの亜種で、中級下位相当、16階層に生息している。ハイ・フェアリーとハイ・フェアリーウォーリアは17階層に生息している低級最上位モンスター、ハイ・スケルトン・フェアリーは、まだ行ったことのない18階層に生息しているという。19階層は、15から17階層まで、20階層は15と18階層のモンスターのサラダボウルだそうで。今日、この5つを達成した時点で、全部でCランクの依頼を目標数の半分は達成したことに。Bランクへの昇格試験は、ここでも受けられるそうだが、ここの場合ダンジョンの踏破、他の場所だとその場所に応じた試験になるそうで。例えば、このディセが位置するライラック王国の東側にある、ラセット王国の王都トランテの場合、ここより難しいものになるらしい、事実かどうかは別にして。
ギルドを出て、ダンジョンに向かう。現在、ダンジョン15階層付近において、特に苦戦はない。15階層から20階層までは、中級下位のモンスターがメインで、25階層を越えてくると、中級上位のモンスターが幅を利かせるようになるそうだ。まぁ、26階層から先は前の状態での情報らしいが。故に今日は、もっと下の階層にいってみようと、そう思う。18階層に生息しているというモンスターの依頼をうけ、20階層までは進むつもりだ。
ダンジョンに着き、魔方陣で15階層まで移動する。テンとシェムの協力を仰ぎながら、討伐していく。17階層あたりに、先日あのソロの大剣使いがいたのを見つけたが、今日もいるだろうか、それとももっと下の階層に行ってしまったのだろうか。麻痺させたマッドゲッコーを、テンのフレイムで削り、近づいてミセリコルデで滅多刺しにしてとどめを刺す。15階層は、これが基本のスタイル。2体以上で来た場合は、魔法を開放し、悉く殲滅する。そうでなくてはMPが、いくら常人に比べ圧倒的にあるとはいえ、尽きてしまう。
マッドゲッコーを12匹ほど狩ると、16階層への魔方陣が見えてくる。流石に、17階層までは行っているので、道も覚えている。踏破した人数が少ない、というのは、折角覚えた道を無駄にしたくない、という心境が働いているせいもあるのだろうか。16階層も、特に変わりはない。ケイブゲッコーと名前が変わっただけで、マッドゲッコーと同じように、基本的に爪を使った引っ掻き攻撃か、噛みつき、あとは尻尾を叩きつけてくるだけ、違いは一回りほど大きい、1.2メートルほど、というだけか。この階層も、道を覚えているので、楽々17階層へ。ここまでだいたい1時間ほどだろうか。
17階層は、一応来たことはあるが、探索をしたことはない。基本的に、入口付近、歩いて5分ほど、の場所を往復して狩っているだけな為。しかし、今日は18階層まで進もうと思い、前に進むが、いきなり行き止まり。17階層にもなると、枝分かれが増えて、道に迷うことが多くなる、記憶をしたり、印をつけて対処はしている。それに加えて、ハイ・フェアリーと、ハイ・フェアリーウォーリアが厄介、2匹以上で基本的に行動しているため。どうやら、これが死んで復活したのが、ハイ・スケルトン・フェアリーという設定なのだろう、羽が6枚。状態異常攻撃は、なぜか行ってこないが、ハイ・フェアリーは火水風土の各種属性魔法を撃ってきて。ハイ・フェアリーウォーリアは両手で持つ、20センチほどの棒の先から、黒い刃、恐らくダークソードを出して襲ってくる。属性魔法は、予備動作、魔方陣を描く、がわかりやすいため、一応避けられる。ウォーリアのほうも、近づいてくる必要があるため、その前に打ち落とせばいいのだが、いかんせん2匹以上でいるので、同時に対応するのが面倒くさい。故にあまり17階層の奥に行っていなかったのだが。
1時間ほど、時折休憩を挟みつつ、戦闘も何とか制し、時折シェムの煙で奇襲を掛けつつもなんとか魔方陣まで。一度、罠に引っかかり、大量のハイ・フェアリーウォーリアが来たときは肝を冷やした。冷静にフレイムウォールを置いたら、飛んで火にいる夏の虫、そんな光景が拝めた。17階層を踏破して、感じることがある。後衛ばかりで、前衛がいないため、戦闘が面倒くさくなっている。ここで、盾持ちの前衛なんかが1匹いるだけで、かなり楽になるだろう。パーティを組んでいると、そういう利点がある。できれば前衛モンスターを召喚したい、夜試してみよう、いかんせんランダムだが。
18階層、シェムと同じハイ・スケルトン・フェアリーが支配する階層。ハイ・スケルトン・フェアリーは、中級下位のモンスターだが、毒の煙を放出したり、麻痺の煙を放出したり。直接の攻撃方法を持たないため安全といえば安全だが、毒の煙によりHPを削られポーションを大量に消費したり、毒のダメージでダンジョン外に排出されたり、ということが良く起きるそう。前情報通り麻痺の煙で動きを止められ、毒をくらいHPが削られ、ポーションを飲みつつも、辛くも撃破する、ということを繰り返すこととなり、ダークランスを下がりながら投げて攻撃をするという燃費の悪い方法で後半を踏破した。二度と、この階層には来たくない、そう思わせるだけの酷い階層。おかげで1時間半ここで時間を食われてしまった。
19階層に入り、先ずは食事を摂る。パンを食べつつ、水筒で水を飲む。ステータスを確認するとレベルが3つ上がっていたので、知恵と知能にふっておく。
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル2>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度増加>、<共通語>、<筋力強化>、<敏捷性強化>、<鑑定魔法>
Level: 49
HP: 2000/2000
MP: 14050/15500
Constitution: 20
Wisdom: 155
Strength: 15
Intelligence: 160
Quickness: 20
Bonus Status Point: 0
Bonus Skill Point: 0
昼を過ぎたため、MPが回復している。あと、行動するのは2、3時間ほどだろう。できれば、明日に支障のないようにMPを節約したいが、ここからの階層、そういったことは許してはもらえないだろう。今の内に、追加のモンスターを召喚しておいてもいいかもしれない、召喚魔法のレベルは1だが、低級モンスターを召喚できるようになっている、たしかテンとシェムが30になったあたりからだろうか。おそらく、火魔法と闇魔法のレベルが2に上がったこと、召喚したモンスターのレベルが30になったこと、が原因だろう。
≪低級闇属性モンスター召喚≫
闇属性を選んだのは、火属性のモンスターをまた召喚しても意味がないだろう、と思ったからで。低級闇属性モンスターが、何がでるのかわからないが、スケルトン・フェアリー系列なら、亜種族に進化させればいい、そう考えたからでもある。・・・本音を言うと、MP消費が多い、この魔法は、MPを3500も消費した、ほうが、強いモンスターがでるのでは、という期待があったからだが。
前衛モンスター来い、と願っている自分の前で、魔方陣が展開する。テンとシェムのものよりも、一回り大きいだろうか。黒い煙は、魔方陣全体を覆うように立ち込め、2メートルほどだろうか、そんな高さまで立ち込めた煙は、一時を境に薄れ始める。中から見えてきたのは、1メートルほどの黒い狼。体が、半分くらい出てきたところで、自分に飛びかかってきて。焦る自分を置いて、鼻面を自分の腹に押しつけてくる。前衛モンスターではない、いや、一応牙も生えているようだし、爪もある、前衛といえば前衛モンスターだが、召喚した以上、気に入らないから名前も付けずに消滅させる、なんてことは、できない。
所持モンスターのステータスを確認する、鑑定魔法を使えば、詳しいステータスもわかるのだろうが、1回MP500消費、先ほどの召喚で3500消費してしまった今では、明日中に回復できる量で抑えるため、使用を控える。
テン(ハイ・フレイムスライム) Level:36
シェム(ハイ・スケルトン・フェアリー) Level:39
ダークウルフ幼体 Level:20
さて、召喚したモンスターは、ダークウルフ。よくあるネーミングだと思いながら、レベルを見ると20、最低級はレベル1からだったので、そこから育てない分楽だと思う。問題は、幼体、という文字があること。つまり、これはまだ子供。確かに、顔も丸みが見え、毛皮ももふもふ、先ほどから、自分に纏わりついている様はまるで子犬のようだが。1メートル近い大きさのある、幼体とは果たして、成体になったときどれだけ大きくなるのか。
名前、名前、この、狼に相応しい名前。テンは妖怪から、シェムは悪魔から、故に、この狼は神話から付けてあげようか。ガルム、北欧神話に出てくる、猟犬の名前。フェンリルでもよかったのだが、いまいちありきたりなため、ガルムでも十分ありきたりだが。これで、所持モンスターは以下の3体。
テン(ハイ・フレイムスライム) Level:36
シェム(ハイ・スケルトン・フェアリー) Level:39
ガルム(ダークウルフ幼体) Level:20
どうやら、喜んでくれたようで、尾を千切れんばかりに振ってくれている。が、そこまで時間もないので先に進むことに。19階層は、15から17階層までのモンスターのサラダボウル、特に怖い物はいない。故に殲滅繰り返し、前進する。ガルムは、まだレベルが低いながらも、狼故素早さが高いのかモンスターの周りを飛び跳ね、お陰でこちらに攻撃があまり来なくなり戦闘がより楽になった。
30分ほどだろうか、前に進む。剣戟の音、近づくと、あの大剣使い。会釈をして、通り過ぎる。彼は、ここでレベル上げか、それとも先に進んでいるのか、恐らく前者だろう、自分より前にいた人に追いつく、つまり向こうが止まっていたからだろうから。
そこからまた30分ほど、いや、もっとだろうか、結構自分の体内時計も、時計がないことに慣れてきて。正確になっているのでは、という自負がある。やっと見つけた魔方陣。この階層から、行き止まりどころか、元の場所にもどるような道もできていて本当に面倒くさい。そろそろ肉体的な疲労も見えてきた。おそらく、外は2時過ぎではないだろうか、依頼は既に達成できるだけ、いや2回報告しても余る量のドロップアイテムは余裕である、目標の20階層まであと1歩、行って、少し狩って、今日は終わりにしようと考える。MPを、今日は結構使ってしまったので。
20階層に入り、マッドゲッコーとケイブゲッコーのペアを2組ほど倒したところで、魔方陣を使って入口に戻る。体内時計は狂っておらず、太陽は西の方向、45°ほど。ダンジョンから、ギルドに向かって歩く。テンとシェム、ガルムを転移陣にしまい、門を通り、都市の中へ。おそらく、だが、ガルムは獣系のモンスター、それ故何か食料が必要だろう。今までは、シェムは何も食べなくても、テンは水さえ与えておけばよかったが、これからはそうもいかない。おそらく肉、確か狼は成体でも一日一回でよかったとどこかで見た、毎日食べさせるか、出費が増えることに頭を抱えつつ、依頼を報告する。依頼の報酬だけで、224枚の大銅貨、全てCランクの依頼だったため、かなりの額になっていて、そこに、ドロップアイテムを売り払い、254枚の大銅貨を追加。MP消費が馬鹿にならず、明日一日は休むか、低階層で狩りをするしかない、という代償があるが、それにしてもいい稼ぎだと思う。毎日この稼ぎができれば、防具もすぐではないかと思いつつ、酒を飲み、ガルムの餌代わりの生肉を購入して、宿に向かう。
部屋でばれないように、転移陣からガルムを召喚し、肉を与え、戻す。あの毛皮に、くるまって寝たいなと思いつつ、今日も夜は更ける。
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル2>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度増加>、<共通語>、<筋力強化>、<敏捷性強化>、<鑑定魔法>
Level: 51
HP: 2000/2000
MP: 14050/15500
Constitution: 20
Wisdom: 155
Strength: 15
Intelligence: 170
Quickness: 20
Bonus Status Point: 0
Bonus Skill Point: 0
テン(フレイムスライム) Level:37
シェム(ハイ・スケルトン・フェアリー) Level:40
ガルム(ダークウルフ幼体) Level:24
2012-12-15修正
2013-3-12改稿




