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宣言した話数付近でパーティ組むまで進めないなら、文字数を増やせばいいじゃない、というわけで今回は7000字です涙 次話でまた時を加速させてパーティ組ませます
翌日、慣れたもので、この時刻が当然となった。日の出とともに起床。いつも通り体を拭い、口を濯ぎ、洗濯、朝食。一旦部屋に戻り、防具を装備していく。やはりというべきか、慣れていないゆえ30分ほどだろうか、結構な時間がかかってしまった。ギルドに向かう、いつもより遅いためか、掲示板の前にいる人数が少しばかり多い。いつもと違い、今日はDランクの依頼を確認する。
今まで、Dランクの依頼をこなしてこなかった理由、それは場所が変わるからで。基本的にFランクは南東、南西の森、Eランクはプルミエ平原及び前述の2地域、それに対しDランクは要塞都市プルミエの東に位置するプルミエ荒地とプルミエ森林の2地域となっている。おそらく、ランクによって地域をわけることで、競合することがないようにとの配慮なのだろう。モンスターのレベルがあがる可能性がある以上、防具無しで進むことに危険を感じたのだ。
受付嬢に昇格申請をしつつ、依頼を選ぶ。受付嬢曰く荒地のほうがモンスターの数は少ないそう。それにしても、防具、変えたんですね!そんな言葉が受付嬢の口から漏れ出る。そんな些細な、一介の流れ者の変化に気が付いてくれた上に、声までかけてくれるとは随分といい娘だと思う。少し上から目線だが。
数はEランクに比べると、少ないものの、20枚ほどはあって、その中からまず荒地での依頼としてこれら2つを選ぶ。
・ウェイストリザード4匹の討伐 15大銅貨
・ウェイストマウス20匹の討伐 23大銅貨
次に、森林での以来の中から、
・フォレストリザード4匹の討伐 15大銅貨
・フォレストウルフ3頭の討伐 17大銅貨
・フォレストスパイダー3匹の討伐 10大銅貨
これら3つを選び、出てきた受付嬢に渡す。受付嬢は、依頼を受注した後、鉄製の銀に光るギルドカードを渡してきた。これより自分はDランク、結構な速さでの昇格だそうで、15回依頼をこなせばCランクへの昇格試験、Cランク以降は試験が必要になるそうで、それを受けることができるそう。その後受付嬢から少しばかり情報をもらい、ギルドを出る。いってらっしゃい、そんな声が聞こえて結構やる気が湧いてくる。声1つで相当違うものだ。毎日のように買っているパン屋は、自分を待っていてくれて、いつもの通り購入する。大南門をでて東に、細い道を通って1時間ほどで着くようだ。
眼前に、山が見えていた。いやそれは目の錯覚で、あったのは広大な森林だった。木々の形は少しばかり風にあおられたように森の外の方向へ傾いていて、森林の中央に荒地が広がる、という情報を受付嬢にもらっている。
120年前まで、プルミエ森林は要塞都市プルミエの東側に広がる広大な森林だった。古代のころからあるこの森林は、地域一帯に恵みをもたらしていた、そんな場所だった。120年前、古代飛龍と呼ばれる強大な翼竜とβと呼ばれる不死者の王の1人、歴史上不死者の王は未だ3体しか確認されていない、が、プルミエ森林の上空に戦闘を繰り広げながら出現した。戦いは熾烈さを極め、瀕死の重傷を負った古代飛龍が、なんとか地面に叩きつけた不死者の王に向けて撃った、全ての力を振り絞った呪いの火球は、不死者の王ごと森林の中央部を飲み込み、焼き払った。その戦闘により、不死者の王は行方不明、一説では火球に飲み込まれ死んだとも、森林の中央部は荒地となり、少しばかりの雑草が生えるのみとなった。何度か植樹を試みたものの、半月も持たずに枯れ落ち、古代飛龍の呪いが解けるいつの日かまでは、木々は生えないと言われているという。
そんな伝説の残る森林は、南西の森や南東の森とは違い、木々の1本1本が太くそして大きく、高さ30メートルはあろうかという大木たちが、その隙間を縫って漏れた光を浴びる小さな樹木たちが、並んでいるその光景は、まさに壮観だった。森は一刻一刻、牛歩の如き速度ながら、広がっているようで、森の外周には、細い、しかし力強い苗木たちが並んでいる。プルミエをでて街道を歩いているときに感じた、暑さすらも、森に一歩足を踏み入れた途端気にならなくなった。日光が地表まで届かないためか、非常に薄暗く、湿気の濃い、冷気が鎧を包み込む、そんな森。足元にはシダが鬱蒼と生えていて、所々に転がる石や倒木は、悉く苔生している。木々の間を、虫が飛び交い、原生林、そんな言い方をしたほうがいいだろうか、そんな印象を受ける。
一応、冒険者が入ることがあるため、荒地に向かう、とされる1本道が森林の中をとおってはいるが、そこから外れるとまるで迷宮のよう、一瞬で迷いかねない、そういう危険も感じる森。これは、たしかにFランクやEランクの子供では、大人は平気だろうが、迷い込み外に出れなくなるだろう。
1本道を歩き出す。受付嬢の話では、この森には3種類の肉食動物、フォレストリザード、フォレストウルフ、フォレストスパイダー、と、ビッグモス及びフォレストモンキーが生息しているそうだ。3種類の肉食動物は、ビッグモスとフォレストモンキーを餌にしていて、互いにいがみ合い、殺し、食い合う存在なのだそうだ。
フォレストスパイダーは、体長1メートルほどの巨大なクモのモンスターで、木々の間に巣は貼らなく、そのかわり木々の低いところだが、上から糸を噴射し、絡めて餌をとる。フォレストウルフも体長1メートルほどで、2、3匹で行動し、その連携と素早さで獲物を仕留める。フォレストリザードは、ある程度なら木々をのぼり、地表も結構な速度で動き回る1.2メートルほどのトカゲ型モンスター。その3匹が食物連鎖の頂点でしのぎを削っている、それがこのプルミエ森林だそうだ。
1本道を道なりに進む。行きにモンスターに会うようなら、それを狩ればいいし、まずは最初に荒 地に向かおうと思っている。
かれこれ、1時間ほどの行程の内の中ごろだっただろうか。頭上の木がしなる音、顔を上げると、蜘蛛。シェムの麻痺の煙が蜘蛛を覆うのと、蜘蛛の糸が自分にかかるのがほぼ同時、糸が粘りつく腕を無理矢理動かし、何とか杖を向け、フレイムランスを放ち、テンのファイアをくらっていた蜘蛛に直撃、地表にさながら殺虫剤を吹き掛けられた虫の如く、ポトリ、と落ちた。もがく蜘蛛にフレイムを走らせ、近づいていき、ミセリコルデで頭部分を突き刺した。どうやら、頭を潰されると死ぬようで、いや死んでもらわなくては困る、節足も、動きを止めた。蜘蛛の糸は、粘着質で、0.5センチほどの太さがあり、さながらロープのようで、鎧に、特にマントについたものを剥がすのに苦労した。ドロップアイテムは、フォレストスパイダーの頭。ミセリコルデの刺し痕は残っていないが、複眼がまるで王冠のように頭頂部に並んだ頭は見ていて気分のいいものではなく、アイテムボックスに入れたくもなかったが、泣く泣く収納した。その後は、戦闘もなく無事荒地に。
森が突然途絶え、目の前には赤茶けた大地。ところどころ草が生えているものの、岩のほうが多いのではないだろうか、という程度。100年以上たってもこれでは、たしかに呪い、そう見える。奥までは400メートルほどだろうか、所々岩もあるが、動く影もある。歩き出す、確かウェイストマウスと呼ばれる虫を食べる30センチほどの鼠と、それを食料とするウェイストリザードが生息するこの荒地は、歩きやすく、先ほどまでの森に比べると気温が高い。荒地を探索し始めてすぐ、岩場の影から鼠の群れ。おおよそ10匹以上、ドブネズミに似た外見の、これがウェイストマウス、というわけか。囲まれ、一歩ずつ狭められていく包囲網。しかし、こちらには魔法がある。
「シェム、後方に向かって麻痺の煙を、テンはそこにファイアを放て。」
そういいつつ、前方の鼠たちに向かって魔法を放つ。
≪フレイムウォール≫
ファイアウォールよりも勢いの強い火、いや炎は、眼前の鼠5匹ほどを飲み込み、自分はそれを見届けるかどうかで右にいる鼠に攻撃を放つ。
≪ダークソード≫
左から右に薙ぎ払う右手の剣は、鼠の胴体を裂き、魔法の持続時間が切れるが早いか、ミセリコルデ抜きはらい、標的を突き刺す。シェム達は、3匹を煙に巻き、麻痺したうちの1匹にテンがとどめを刺す、その瞬間、テンが残りの鼠1匹にかみつかれる。牙が、刺さっているのを見た自分は、迷わず駆けより鼠の頭部を突き刺す。シェムに残りの鼠にも麻痺の煙を放つように命令し、未だ麻痺している鼠2匹にもとどめを刺した自分は周囲を確認する。残った鼠は逃げ出し始めている、1匹にフレイムランスをあて、テンの様子を見る。死体は消えていたため、もう牙は刺さっていないが、視線が弱弱しい。モンスターに効くのかわからないが、ポーションをふりかける。転移陣を生成し、テンを中にしまう。ポーションが効けば、傷は治るはず、そして転移陣の中なら安全で、時間の進みはわからないが、森を出るまでは出さないほうがいい、そう思いつつ、シェムが麻痺させた鼠のほうを向くと、大柄な体。麻痺した鼠を口に挟んだその獣は、鼠を一飲みし、こちらに威嚇をする。刺々しい鎧を身にまとったそのトカゲは、ウェイストリザードだろう、此方に近づいてくる。
「シェム、麻痺を、早く!」
その距離は2メートルほど、瞬時に黄色い煙に覆われたトカゲ。しかし、歩みは止まらない、麻痺は効かないのだろうか、焦り、フレイムランスを放つ。確かに刺さる、そのはずが、鎧で止まっているのか、飛びかかるトカゲを回避できず、押し倒される。重量が増えていたため、未だバランスを取りかねていたのが災いし、トカゲにのしかかられる形に。フレンドリーファイアを警戒してか、魔法を撃てないシェム、爪が鎧をひっかく。鱗状にした鉄を組み合わせたスケイルアーマー、これがなければ体は血の海、安心しつつ右手をトカゲの腹にあて、一言。
≪ダークソード≫
地表にする形となるトカゲの腹は鎧も薄く、ダークソード1発で貫ける。スケイルアーマー、鎖帷子、ギャンベゾン、下着を越え滲む、トカゲの生暖かい血、臓物が腹から飛び出している、息絶えたトカゲを体から降ろし立ち上がる。息が荒い、まさか麻痺が効かないとは思ってもみなかった。鎧は、魔法や状態異常を軽減するのだろうか、肩にシェムが座る。周りに広がる惨状を確認し、ドロップアイテムを拾う。ウェイストマウスの尻尾が12本、ウェイストリザードの頭が1つ。なぜこうも気持ち悪い部位がドロップアイテムなのだろうか、古代飛龍の呪いかと笑う。
その後、太陽が頭上を覆う頃、1時間ほどたったころ、4匹目のトカゲを殺す。有効打が見つからなかった故、毎度毎度のしかかりをくらい、頭か腹にダークソードを突き刺す、という簡単な作業を行っていたため体力は残り1000。ポーションを飲み、回復して昼食に。今のところ、フォレストスパイダーの頭1つ、ウェイストマウスの尻尾23本、ウェイストリザードの頭4つ、昼食を食べたら森林に戻ろうと考える。
森林にもどり15分ほどしたころだろうか、眼前にフォレストリザードが出現。地球にいたコモドオオトカゲを思わせる巨体、体つき。爪は長く、口からは舌をちらつかせている。ウェイストリザードとは違い、鎧はないようで、シェムの麻痺をくらい、動きを止めたところにミセリコルデで頭部を滅多刺し。黒いグローブが鮮血で染まるが、気にせずに滅多刺し。これもドロップアイテムは頭。勘弁してほしいものだ。
フォレストウルフに出会うことなく、森を出口に向かって歩いていく。フォレストリザードは、相変わらず麻痺させて頭部滅多刺しで5匹追加で討伐し、蜘蛛はフレイムランスを麻痺させたところに集中砲火することを繰り返し、3匹討伐。そろそろ森の出口も見えてきたころ、シダの林をかき分け、銀に輝く毛皮をまとった狼、正面と左右から合わせて3頭あらわれて、これがフォレストウルフか。
何も言わずとも、麻痺の煙を吹き掛けるシェム、正面の狼は麻痺し動けなくなる、そこにフレイムランスを放ちつつ、左から飛びかかる狼に右掌を向け、
≪ダークソード≫
掌から伸びる黒き剣は、狼の顎を突き破り、宙に浮かせる。持続時間は終了し、狼が地面に落ちた刹那、足に感じる痛み、最後の1頭が足にかみつき、噛み千切ろうとしていた。グリーブのおかげか、脛部は痛みはないが、ふくらはぎに牙が刺さっているようで、激痛が走る。体をひねりダークソードで体を突き刺す。未だ動きを止めない狼の目に、ミセリコルデを突き刺す、何かを突き破る柔らかい感触が鉄越しに感じられ、狼は体を痙攣させる。顎から力が抜け振り払うも、皮のズボンは赤くそまり、結構な量の出血、正面の狼にフレイムランスを2発放ち、息の根を止めつつ、グリーブを外しズボンをめくり上げる。ふくらはぎには、牙が刺さっていたであろう咬傷が7か所ほどあり、血が流れ出していて、ポーションを1つかけても止まらない。もう1つかけたところで、やっと血が止まり、ポーションを2本飲む。戦闘前1600あり、800まで減った体力も、これで2000まで回復。左足は血が止まったとはいえ、痛みは残っており、びっこを引きながらドロップアイテム、フォレストウルフの毛皮を回収。
アイテムボックスには、これで、
・フォレストウルフの毛皮 3枚
・フォレストスパイダーの頭 4つ
・フォレストリザードの頭 6つ
・ウェイストマウスの尻尾 23本
・ウェイストリザードの頭 4つ
依頼自体はこれで完了、都市に向かって歩き出す。時刻は3時ほどだろうか、夜の森で狩りをするであろうパーティとすれ違い挨拶をする。鎧を鮮血で染め上げ、左足を引きづって歩く姿は、さながら幽鬼のようだったらしく、驚かれた。
ある程度、歩いたところでステータスを確認。確実にレベルは上がっているはずで、見てみると、
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル1>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度増加>、<共通語>
Level: 25
HP: 2000/2000
MP: 8500/8500
Constitution: 20
Wisdom: 85
Strength: 10
Intelligence: 80
Quickness: 15
Bonus Status Point: 6
Bonus Skill Point: 1
レベルは今日だけで6つも上がっていて、やはり向こうのほうがレベルが高かったのか、そしてそろそろボーナススキルを選ぶべきなのではないだろうか。都市に帰り、情報をあつめてからスキルは取得しよう、そう思いつつ、6のボーナスポイントを知能に4、知恵に2振り分ける。
Name: アスカ
Title:
Unique Skill: <魔力増大>
Skill: <召喚魔法レベル1>、<闇魔法レベル1>、<火魔法レベル2>、<MP回復速度増加>、<共通語>
Level: 25
HP: 2000/2000
MP: 9500/9500
Constitution: 20
Wisdom: 95
Strength: 10
Intelligence: 100
Quickness: 15
Bonus Status Point: 0
Bonus Skill Point: 1
テンとシェムのステータスも、ついでに確認する。
テン(フレイムスライム) Level:17
シェム(スケルトンフェアリー) Level:21
どうやら、後半狩ったのが大きかったようで、シェムは20を超えていた。はたして、彼らに入る経験値は、おそらく自分と共に狩った場合は、3分の2彼らに、3分の1自分に。彼らがいない状態で戦った場合、彼らには一銭足りとて入らない、ということで正しいのだろう。故にテンはレベルが1しか上がっていないのだ。
テンを転移陣から召喚、ポーション、最後の1本をふりかける。随分良くなったのか、元気にはなっていたが、本調子ではないだろう。もう1度、今度はシェムもともに仕舞い、休んでいてもらうことに。
そうこうしているうちに、プルミエへ帰還。門番にも驚かれたが、中に入れてもらい、ギルドまで歩く。ギルドに入り、驚く顔の受付嬢に依頼の報告をする。最初は心配そうにこちらを見ていた受付嬢だが、ドロップしたアイテムを出しているうちに、血の気が引き顔面蒼白に、フォレストスパイダーの頭を手渡しする際に、ふとした拍子に手元が滑る。飛んでいく蜘蛛の頭、それが彼女の手の中にべっとりと落ちたのを見て、彼女は倒れてしまった。うら若き乙女には、やはり気色悪いか、こちらでさえ気持ち悪いのだから、仕方ないだろう。代理のおっさんにアイテムを渡し、大銅貨80枚を受け取る。次に、ウェイストマウスの尻尾3本を売り大銅貨3枚、フォレストスパイダーの頭、フォレストリザードの頭は1つ大銅貨3枚で売れ、大銅貨9枚に。今日だけで、92大銅貨。今日は相当早く帰ってきたため、慣れればもっと金は入るだろう、Dランクに上がり、相当報酬はおいしくなったように感じる。
ギルドをでて、宿に。今日は、これからの時間は酒でも飲んでゆっくりしておこう、そう考える。ここまでの日々の内に、未成年という考えは消えた。こちらの世界では16で成人だそうだ、地球の考えは消え、酒の旨味を知ったのだ。
Dランク昇格祝いは、自分と、暇そうにしていた女将の2人で楽しく行われた。
2012-11-29日修正
2013-3-5改稿
2013-3-9改稿




