表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
1 召喚、地固め
23/239

23

 ギルドに戻り、4時の鐘がつい先ほど鳴ったようで、ギルド内は少し人気が多い。受付嬢にまずは依頼の報告を。わき腹に破った服を巻き、袖なしでふら付きながらも入ってきた冒険者に対し、その場にいたほかの冒険者パーティからの、視線は暖かい、同情と憐憫だろうか。受付嬢も、失敗したのかと勝手に勘違いしたようで。

 まずは、討伐依頼の達成を報告する。兎肉10個、ホーンドスネークの角10本、ホーンドスネークの捩れた角1本、ゴブリンの牙2本を渡し、38枚の大銅貨をもらう。昨日、Eランクに上がったばかりの新米冒険者が、一応傷つきながらも、しっかり討伐依頼をこなしてきたからであろう、受付嬢の目に驚きの色が広がる。流石は、やりなれているからだろうか、その色はすぐに隠れてしまったけれど。

 次に、5ツ葉のクローバー1枚を渡す。非常に運が良かった故採集できたもの、もう2度とやらない。しかし彼女には驚くべきことだったようで、それはそうだろう、あれだけ見つかりにくいものなのだから。大銅貨30枚を手渡しする際には、受付嬢の言葉の端から今までのような無感情の仕事用のものではないものが見え隠れしていた。

 そして、ゴブリンの牙2本を大銅貨10枚で売り払い、ホーンドスネークの角を31本ほど、番台に積み上げたその時、受付嬢は今までの受動的な姿勢を初めて崩してくれた。


 「これは、全てホーンドスネークの角、ですね。全部で31本、一応ホーンドスネークは集団で行動するモンスターですが、プルミエ平原に住むものは多くても10体ほどの群れ。しかもあまり数はいないので、大変だったのではありませんか?」

 「いや、なぜかわからないけれど、40匹近いこれがリーダーに連れられて。南西の森のほうから来て、それを殲滅したんだ。この傷もその時のものさ。」

 「南西の森の方角からですかッ?」


 受付嬢が、少し声を張り上げる。傍目から見ても興奮状態に入りかけているのが丸わかり。


 「ホーンドスネーク自体は、最低級中位ほどのモンスターで、少数で行動することが多い故、ある程度の戦力になり、それに40体ほどの群れ、リーダーもいたとあれば、彼らがすむような森の区域には、彼らを超えるモンスターはいません。それが森から出てきた、それが意味することは逃避です。なにか彼らの大規模の群れを討伐できるような、脅威が森に発生したということ認識で、間違っていないでしょう。」

 「何か、彼らより強い脅威ね、ビッグモスの成虫は?」

 「ビッグモスの成虫も、Eランク冒険者が戦えるモンスターの中では、強敵に入りますが、数の多いホーンドスネークが優勢になることが多いです。故に彼らの脅威とは言えず、もっと強い、大規模の群れでは低級上位クラスにもなりうるものを超えるレベルのものがいる可能性があります。」


 そして、受付嬢はこう付け加える。


 「昨日の貴方が連れてきた、少年。彼は南西の森で、大きな虫に出会い怪我をしたそうです。目撃証言と、今日の報告から察するに、南西の森にシザーマンティス系統のモンスターが発生した可能性があります。ここらには存在しえないモンスターで、中級下位に属する、Cランク相当のモンスターです。明日より、南西の森は討伐するまで進入禁止となるでしょう。」


 また、プルミエの森の危険度も少し上昇するようだ。そんな物騒な話を聞き終え、ホーンドスネークの角を、1本大銅貨1枚、31本で売却する。兎肉は、1つ小銅貨50枚で9つで大銅貨4枚と小銅貨50枚。

 これで、総計大銅貨113枚と小銅貨50枚。昨日に引き続き色々運が良かったからとはいえ、日給1万円を超えたのである。日本において、学生ではそうそう達成できえない金額が、こちらではまだEランク、そんな簡単に稼げる。価値観、そういうものが少し揺さぶられた瞬間。


 明日からの依頼は、少し注意をして受注お願いします、そういう言葉を聞き、ギルドを出る。本当に心から心配しているような、そんな声色を聴いて少し気分が浮付いてくる。可愛い女の子に心配されたら誰だって嬉しいだろう。今はおそらく5時ごろ。まだ何とか時間がある、今日稼いだ大銅貨109枚の内、薬屋でポーションを5本購入、2本を傷に塗り、飲み、残り3本をしまう。残り大銅貨104枚。その足で防具屋へ。

 上半身に着こむ、鎧は購入済み。同様に脚部も、グリーブとサバトン替わりのブーツは購入してある。本当ならば、プレートメイルを購入すればいいのだが、重く動きにくいため部分部分のみ購入しようと思っている。それは店員にもいってあり、前回と同じ店員を呼ぶ。どうやら、奇異な注文をする客ということで覚えていたらしく、まだ防具はできてなくもう少し待っていてほしいと言われる。感謝と了解、こちらが早く来たのだ、次の部位を購入する旨伝える。

 自分の考えでは、先ず上半身は、腕の半分までを覆う鎖帷子を着こみ、その上に先日購入したスケイルアーマー、手は柔軟性を重視した皮の薄目のグローブ、靴も同じように皮製の靴を着込み、脛および前腕部には鉄製の防具をつけ、最悪の場合の盾替わり程度に。そんな形にしようと思っている。脚部は、皮でできたズボンをはこうと思っている。大腿部までは、スケイルアーマーの裾が伸びているので、それで。〆は上からマントをはおり、日射で金属が熱を持つのを防ぐ。これでも、重量は相当な重さになるのではないだろうか。

 この中で購入済みなのは、スケイルアーマーとグリーブ、ブーツ。金は104枚の大銅貨と50枚の小銅貨があるが、とりあえず今日は鎖帷子を買おうと思う。網目の広く、柔軟性のあるものを選び、どうやら薄手のギャンベゾン、鎖帷子の下に着る衣類もついてくるようで、大銅貨80枚。今日の儲けはこれ一つで終わってしまった。

 どうやら店員もこのふざけた鎧構想をいたく気に入っているようで、1部位ずつだが、頑張ってそろえていってくれと嫌がらない。感謝をしっかり述べて、防具屋を後にする。ほかのものも見せてもらったが、漆黒に染め上げたマントは大銅貨40枚、グローブは大銅貨30枚、前腕部の鎧は大銅貨45枚。あと、大銅貨115枚近くも必要だと判明した。来週中には全身そろうはず、それまではこの布の服でがんばろうと思い、宿に帰った時点で、今日破いてしまった分の布の服を買うことに忘れたことに気付くも後の祭り。

2012-11-26修正


2013-3-9改稿

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ