15
大南門を出て、先ずは南西の森に向かう。街道を歩き、30分ほどで左右が森に覆われる。そこの西側が南西の森、東側が南東の森と呼ばれているそうで、街道にほど近い場所はともに最高でも低級モンスターしかでないが、奥には上級モンスターが闊歩していることもあるらしい、そんな森。ちなみに街道を歩いて森を抜けると、道が分かれそこからラツィア村にいけるのだが。
森への道すがら、転移陣を生成し、テンとシェムを呼び出す。2匹とも寂しかったのか、転移してきた途端、肩の上に、腕の中に、飛び込んできて。うれしいながらも少し恥ずかしい。2匹に労いと感謝の言葉、何があったのかを話していると、30分は矢の如く過ぎ去り、周囲は森に囲まれ。まずは西側、進行方向に向かって右側の森に入る。木々に光を遮られ、少し薄暗く感じる森、ラツィア村の裏にあった森と同じように足元は凸凹としていて、キノコを探すにも覚束ない。ポジキノコ、一体何に使うのかわからない、どこにあるのか。木の下か、草むらの中か、木の中ほどか。サルノコシカケのようなキノコではないことを祈りながら、探す。採集依頼、植物から、果ては鉱物、何かの卵まで色々種類があり、どれも討伐ほどの危険は基本的にない。これが昨日自分が市場で仕入れた情報で、些か舐めていた点もあったようで、キノコの形がわからない。とりあえず見つけたキノコを全て採取しておこうと思いつつ、テンとシェムに指令をだす。
「俺はキノコを探すからテンとシェムは2匹で周囲を警戒していてくれ。もしも5メートル以内に敵がきたら先制攻撃を、勝てる相手勝てない相手、生存本能でわかるだろう、仕掛けてくれ。もしキノコを見つけたら引っこ抜いて一まとめにしておいてくれ。」
2匹とも了解したようで、自分と少し距離を置く。もしも強敵が現れた場合、したくはないが、最悪の場合、囮になってもらう可能性もあり。そのために少し離れて警戒してもらうことに。
キノコ。自分の知っている限り、木の根元に生えるもの、倒木に生えるもの、地表に生えるもの、樹木の中央部に生えるもの、色々様々な種類があり、あまりとりたくないものとしてたとえば冬虫夏草、とれないものとしてたとえばサルノコシカケ、一概にどこにあるとはいえない。なので、森をしらみつぶしに探すことにする。探しはじめてどれくらいだろうか、街道がなんとなく見えなくなったあたりで、最初のキノコ。白いイボがある赤い傘に白い柄、まるで女の子が好きそうな水玉模様の傘のようで、どうみてもベニテングダケ。猛毒としてあまりにも有名なこれは自分も知っている、絶対に食べない、死にはしないが、辛い症状が待っていると聞く。とりあえず、絶対違うと思いながらも採集しておく。アイテムボックスに入れると、パネルになり、名前はアカミズタマキノコ、なんとも命名センスがない、気の抜けるようなキノコ、決してポジキノコではなかったようだ。一応なにかの役には立つか、売れるかするだろう、と採集する。しばらくあたりを探したが、その後キノコは見当たらず、もしかして、街道に近いからなのか、奥に入ることにする。テンとシェムも散々な様子で、1本アカミズタマキノコを採集していたが、ついてくる。街道も見えなくなり、木々の大きさ、量も増えてきて薄暗さに拍車がかかる、先の場所から100メートルも奥に入っていないのに。採集を始めると、薄暗い故か、キノコが結構生えていて、ほとんどアカミズタマキノコだが時折違うもの、3本に1本ほど、純白の細い5センチほどのキノコが生えている。これがポジキノコかと採集してみたところ、大当たり。周辺のキノコを根こそぎ採集し、テンとシェムも採集していたようで、整理する。やはりアカミズタマキノコは多く、総計43本、ポジキノコは6本、ここで落とし穴、ポジキノコと思って採集したキノコに、ネガキノコというのが混在、違いは傘の付け根に小さな襞が付いていないか、いるか。わかりにくいため、ネガキノコだけで8本も集まってしまった。その後、場所を変え採集し、ポジキノコ15本。目標数集め終わり、ついでにアカミズタマキノコが109本、ネガキノコが20本、さて街道に戻ろうかと思った矢先にモンスターに遭遇。
緑色の柔らかそうな長い胴体をもち、頭は硬質で僅かに差す光を反射している、頭の付け根付近から足が大量に生えていて、しかし足は短い、体長1メートルほどのモンスター。3メートルほど前の倒木の影から顔を出す、何のことはない、巨大な尺取虫を想像していただけたら幸いである。登山にいって、木から降ってくる尺取虫、糸を吐いているために服について、発狂しかけたことは一度は通る道だと思う、それが巨大化して出てきたのだ、危うく嫌な記憶が思い返されるところだった。尺取虫の体液は緑色、それで察してほしい。テンがすかさずファイアを放つ、シェムは目の前に魔方陣を描き、そこから紫の煙を噴射する。虫に火属性魔法は、効く気がするが、どうなのだろうか、見極めよう、と思った矢先の煙。虫は煙に覆われよく見えなくなり、5秒後、煙が晴れた時、虫は斃れていた。この世界では、モンスターは死ぬとドロップアイテムを1つ以上、ランクによって決まる、落とす。そののち地表に死体は取り込まれていく、と教わった。これもオルケー神の思し召しなのだろうか、剥ぎ取りをしなくて良い分楽なのだが。死体は消え、残ったのは頭殻、15センチほどの部分、非常にグロテスクで触りたくなかったが、アイテムボックスへ。予想外だったのはテンとシェムの強さ。あの煙はなんだったのか、2匹で1匹のモンスターを、相性もあったのか不明だが、倒してしまった。彼らにもレベルがあるので、いいことなのだが、自分には経験値は入るのだろうか。街道へと進む。先ほどの戦闘で目立ったのか、虫が、全てあの幼虫だが、結構な数、6匹ほど集まってきてしまい、彼らが掃除する。鎧袖一触、街道に戻った時には、頭殻、ビッグモスの幼虫の頭殻、が7つも集まっていた。あのモンスターのランクはわからないが、多少は金になるだろうと、次は東の森へ。召喚モンスターのMPというものはどうなっているのだろうか、MP切れとかはあるのだろうか、という疑問を考えながら。
2012-11-24修正




