表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
7 北上-地球人と変革-
117/239

117


 蜜柑の香りを体に纏い、自分の横に立つのは右手に杖を持った少女。

 白銀の鎧を身に纏い、頭部は何もつけず、金髪が風になびくままになっている。その頭頂部付近には2つの耳。


 「でも、いくらなんでも自分を過剰評価しすぎだよ?こんなんじゃあダメダメだよ。」


 そう言って少女は杖をくるりと回す。痛みも忘れて、その横顔を見る。美少女、それもその中でも上位に属するような。少し大きなぱっちりした目、鼻は高く、口からは少し尖った犬歯が覗いている。顎は鋭く、頬はすっきりとしている。全体的に細い顔立ち、眉は薄く、化粧の影も見えない。しかしそれでいて未だ成長期のような、10代前半の幼い顔立ち。

 右腕に暖かい光、トリスの回復の光。


 「ふふふっ、お掃除だっ!」


 杖をもう一度くるりとまわし、杖の先端をガルムに襲い掛かろうとしているオーガに向ける。


 ≪ホーリーアクア≫


 凄まじい水の奔流がオーガを弾き飛ばし、そのまま段差を登ろうとしているオーガ達を飲み込む。そしてオーガスさえも。バケツをひっくり返したどころではない、数百リットルにも及ぶ水の奔流。

 一瞬で崖を登っていたオーガはいなくなり、オーガもオーガスも、リーダーでさえ体制を崩し倒れ込んでいる。少女が杖で地面を叩き、もう一度くるりと回す。


 ≪マイクロバースト≫


 突如オーガ達が倒れている場所上空に魔方陣が現れる。そして顔に感じるのは強風、目もあけてられなくなるほどの。強風が止み、やっとこさ顔を抑えた左手を外し前を見る。半ばぬかるみ、水たまりだらけの場所に上空から暴風を叩きつけられたオーガ達は泥に塗れ、ぬかるみに突っ伏している。

 少女はもう一度地を叩き、杖を回す。


 ≪ソイルバインド≫


 見ればわかる、何が起きているのか。オーガ達に纏わりついた泥が固まり、地面からも泥が彼らに纏わりつく。そして固まり、動きを阻害する。


 見ていればわかる、少女が唱えているのは水、風、地属性の特殊な系統の魔法3種。全てヘルフレイムと同じスキルレベルで覚えられる魔法。


 少女が杖をもう一度回す。くるり、くるり、2回転。


 ≪アイシクルレイン≫


 オーガ達の上に魔方陣、そしてそこから落ちてくる無数の氷柱、氷柱、氷柱。オーガ達の皮膚を容易く切り裂き、刺し殺していく。


 数秒後、そこにいたのは人型のモンスターの塊ではなく、モンスターの死骸の山でしかなかった。


 右腕を抑え、ガルムの元へと向かう。


 「トリス、俺の右腕はいったんおいておいて、ガルムを頼む。」


 ポーションを振りかけ、ガルムの様子を見る。消耗はしているが、平気なようだ。シェムも平気らしい、煤に塗れながらも自分の肩にとまる。振り返り、少女に感謝を述べる。


 「ありがとう、助かった。おかげで命を長らえることができた。」

 「いい案だったと思うよ。でも、少し見通しが甘かったかなー。気を付けてね?」


 少女は笑う。白銀の鎧が陽光を反射している、胸にはマークがある。盾とそこから生える8枚の羽。何のマークだろうか。


 「名前を聞いてもいいか?」


 問う。命を助けてくれた人、感謝してもしたりない。


 「私はリヒト!助けたのは、面白そうだっただけだからだよ、アスカくん。随分とまぁ珍しいユニークスキルみたいだね、ただ私の劣化版だけれども。」


 何故、この少女は名前を知っている?いや、鑑定魔法か。ということはステータスも見られ、故に予想も付けられた、と。では劣化版の意味は?鑑定魔法をかけるも、表示されない。


 「あぁ、見えないよー妨害スキルもってるもん。」

 「待って、リヒト、そのマーク……まさか、大長老様ですか?」


 トリスが慌てたように問う。大長老、8枚の羽……まさか……


 「ん~そうだね。そういう名前もあるね、じゃあ自己紹介するよ。私はリヒト、人族最高戦力集団“8翼”の第5翼、“大長老”だよっ!」

 「8翼……」


 人族最高戦力集団、そのうちの1人。自分とは軽くレベルが違う。一体なぜここに?


 「なんでここにいるのかって?そりゃぁ今から任務だからね。最北の砦まで行かなきゃならないんだ。その途中に運よく出会ったってわけ。あ、だから私そろそろいくね!じゃぁね!」


 手を振り、にこやかに去ろうとする少女。ふと振り返り、


 「ちなみに、私のユニークスキルは<魔力増幅>、20倍だよっ!」


 そういって走り去っていく。圧倒的速度、見る見るうちに見えなくなっていく姿。嵐のように去り、残されたのは自分たちとオーガ達の死体。20倍、自分の4倍の速度で成長していく……壊れ性能すぎやしないか?


宣伝

新作「異世界にひとり……」投稿しました

よかったら読んでください



※これも向こうもエタらせるつもりは毛頭ありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ