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またしても明朝。井戸から汲んだ水を湯に。何のことはない、金盥の下からファイアの魔法で熱しているだけ。体を拭くにしても、やはり湯のほうが気持ちがいいのは自分が日本人だったからか。程よく温まったところで体を拭う。トリスにしても同じ。そういえば、とシェムを呼び出し、共に拭う。ガルムも洗ってやりたいのだが、召喚するには随分と大きすぎる。底が抜けるか、それとも壁が壊れるか。抜け毛もあるだろうし、また今度にしておこう。結構稼ぎはあるので、石鹸を購入した。地球のものに比べると、泡立ちもよくもなく、香りがしっかりとついているわけでもない。それでも確実に無いよりはマシだろう。価格は大銅貨30枚、小さな豆腐ほどの大きさで結構するものだ。
朝食はパンに干し肉。それに新鮮な野菜が付いてきている。もうこの世界の野菜には慣れた、基本的に苦いものが多い。大根のようなものは水分が多く、菜っ葉は非常に苦い。基本的にその2つが多く、レタスもあるが瑞々しく、そして苦い。ドレッシングのようなものがあるが、それでも隠しきれないほどの苦さ。トリス曰く、安価であるから仕方がないという。高級旅館にでも行けば変わるのだろうか、ただそこに金をかけるほど儲かっていないのも事実だし、そんな旅館は数少ないのも事実。
防具にしても、武具にしても、面にしても。回収するのは今日の夕方。ならばそれまでの時間どうしようかと考えるも、折角なので金を稼ごうということに。ギルドに向かい、依頼を確認する。宿屋でゆっくりとしていたためか、人が結構多く、依頼がどんどん剥がされていく。まぁ多くはE,Dランクのものばかり、BやAランクのものはあまりなくならない。その中で、Bランクのものを3枚選ぶ。
・フォレストオーガリーダー5体の討伐 銀貨10枚
・フォレストオーガ30体の討伐 銀貨10枚
・フォレストオーガスメイジ15体の討伐 銀貨10枚
何のことはない、ここらにもオーガがいるということ。そして、数が多いのはこちらのほうがより繁殖しているということか。受付に持っていく。はてさて、トリスをどう誤魔化すか。
「これらを。」
「ギルドカードを拝見させていただいてもよろしいですか?」
「ふむ、銀、Aランクのアスカ様ですね。確かに。お1人ですか?」
「いや、妻と行く。妻はDランクだが、これをすぐに上げるためにはどうすればいい?」
「ふむ、ではレベルのほうを一応。ふむ、これならば、この3つを達成しだいCランクにさせていただきます。」
鑑定魔法だろう、そのおかげで彼女のレベルを把握したようだ。レベルが高く、Cランク相当のレベルがある時点で、特例ながらCランクに上げてもらえる。そのためには、そのランクよりも上のランクの冒険者と共に行うことが必要。そんなレベルの低い依頼をわざわざその為にやってやる心優しい冒険者は少ないし、それにそうすることの危険性を冒険者は理解しているため協力しない。だから有名ではない方法だが、トリスがその抜け道を知っていた。まぁこれも、レベリングを行ったことによりできたことだが。
街を抜け、狩場へと歩き出す。場所は森林、彼らと別れた場所の方角。パッと依頼を見たところ、Aランク依頼にしても、南部のこの森が対象ではない。つまりそこまで強力な敵がいないことの裏返し。確かに思い返しても、この街にくるまでモンスターには遭遇しなかった。これには理由が2つあり、1つは運が良かったということ。そしてもう1つは、大規模な山狩りの後だったということ。最初気にしていたこの街の防護壁と堀、それはやはり対モンスター用のものだったそうで。ここらへんは数か月に1度、大規模なモンスターの大発生が北部洞窟より発生するらしい。そしてモンスターの大規模な軍勢は人間を求め街に襲撃をかける。そのための巨大な堀と防壁だそうだ。そして、それのせいで付近のモンスター討伐が追いつかないため、年に2回程度周りの森林の大規模な山狩りをしているそう。丁度その後で、あまり数が増えていなかったというのが大きいそうだ。しかしそれならば、彼らは後々面倒なことにならないものだろうかとも考えたが、まぁあの結界でどうにかなるだろう。そう勝手に考えて話を終わらせておくことにする。
そんなことを考え、トリスと雑談を交わしているうちに森林の前に。転移陣からテン達を召喚する。近くに川を見つけたら、ガルムを水浴び、そして体を洗ってやろう、そう考えつつも森に足を踏み入れる。
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