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或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
7 北上-地球人と変革-
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 図書館。ネリカのそれは、プルミエのものより大きい。何が違うか、先ずは建物が1戸建てであること。1階建ての小さなもの、蔵書のスペースはサッカーコートのペナルティーエリア程度の大きさだが。蔵書の種類も全然違う。宗教じみたものも数多くあるが、魔導書などのものも様々存在する。では似通っている点は何か。礼拝堂が存在するところ、それになにより教会に併設されていること。やはり、この世界では読書というものはそこまで素晴らしい趣味として認識されていないらしい。

 受付はない、ここも神父に一声かけてから使うものらしい。それでも、中に入ってみると自分たち以外に2人ほど本を読んでいる人を見かける。少なくとも、プルミエよりかは読書は浸透しているということだろうか。トリスとともに中に入り、読む本を探す。


 トリスは自身の習性が書かれた本を探すそう。イミテーション・ヴァンパイア、恐らくヴァンパイアに関連した本ならば書いてあるだろうと言っていた。自分は魔法に関するものを読んだ後にモンスターに関する本を読もう。当然イミテーション・ヴァンパイアのも含めてだが。

 

 探している内容の書物は意外と簡単に見つかった。まずは「魔導書~四元素~」から。内容は魔法が大量に並べてあるもの。魔法の効果、気を付ける点、どのくらいで習得できるのかということが羅列されている本。

 四元素、地球では遥か昔1人の科学者が提唱した世界を構成する4つの成分。火、水、風、土。当然自分が生きていた時代はそれから遥か後、そのころには世界がどれだけの元素でできているのか、かなりの数が解明されていて。科学者の言ったことは文化の革新を促した特筆すべき素晴らしい提言であるが、内容は所詮未発達のものであったという認識である。自分もそれをなんとなく聞いていただけだった。しかし、今この世界に来てその提言は現実味を帯びてくる。自分が使える魔法は火、水、闇の3種類。そして残った魔法の種類は風、土、光。闇と光を除けば、なかなかどうしてその四元素のみが残ってくる。

 その本をパラパラと流し読みする。残念ながら全てじっくり読んでいる暇はない。細かな魔法の区分を確認しつつ、それぞれの簡単な特徴を見て、あとは目についたものを見る程度しかできないだろう。詳しい魔法の効果、種類は見ていられない。

 本によると、トリスの言っていた通り魔法にはスキルのレベルが5までの小魔法と呼ばれるものと、6以上の大魔法、そして禁忌魔術に分類される。なぜ小魔法と大魔法に分けられるのか、それは威力と消費するMPに違いがあるため。そして習得方法が変わってくるらしい。

 スキルレベル1から5までは、その属性の魔法を使用し、モンスターを討伐することでゆっくりと経験値がたまり、それが一定値に達するごとにスキルのレベルが上がっていくらしい。そこで覚えられる魔法は基本的なもので、通常系統、槍系統、壁系統のもの。フレイムやファイア、ファイアランスなどだろう。スキルレベル5になるころには通常系統の魔法3種、槍系統の魔法3種、壁系統の魔法2種、特殊な系統の魔法3種が扱えるようになるそうだ。それら基本的な魔法は、基本的故にMPを多量に消費せずに済み、威力もそこそこ、扱いやすい魔法であるそうだ。しかしながらスキルレベル5になった際に覚えることのできる特殊な系統の魔法は威力も結構あり、使い手によっては十分な主力になりえるそうだ。たとえば、土属性魔法を見ていたときに見つけた隕石召喚(メテオ)、“黒白夫婦”が使用していたものがそう。小魔法に限り、それを全てマスターしている魔術師に弟子入りすることで使用することができるようになる可能性があるらしい。それ以外にはスキルポイントを使用して使えるようになることも可能だが、これは才能がないと無理だそう。

 大魔法は1発1発がかなり高い威力を持ち、そしてその分消費MPが馬鹿にならないほどの魔法だそうだ。それを習得するためにはスキルレベルを6以上に上げる必要がある。スキルレベルを1上げるごとに対応した魔法が2種ずつ解放されるそう。スキルレベルは最終的に10まで存在し、それを習得するには多大な努力が必要だそうだ。当然必要とされる経験値は莫大なものとなり、簡単にはスキルレベルは10にならない。何より、5レベルまでと違うのは、経験値が一定値まで達しても、レベルを上げるためにスキルポイントを消費する必要であるということ。1レベル上げるごとに必要なスキルポイントは2、例外としてスキルレベル10に上げるためには5必要。6種全てスキルレベル10にするためには1170レベル分のスキルポイントが必要なことに。ただそれだけの代償を払って価値ある魔法。スキルレベル1から5までの魔法が小魔法とひとくくりにされるのに対し、大魔法はそこから区分が存在する。上級魔法、特級魔法、超級魔法、覇級魔法。覇級魔法に至っては使えるようになった人が少なく、情報が不足しているほどのレベルのもの。自分には6種全て10にする必要はないんじゃないだろうか。

 禁忌魔術はこの本には詳しく書かれていなかった。存在するというだけ。


 次に「魔導書~光と闇~」と呼ばれる本を手に取る。ふとトリスを見ると、人間とヴァンパイアの恋を描いた物語を熱心に読んでいる。年頃の女の子、そういうのが好きなのも当然だろう、本に目を戻す。

 光魔法にしろ、闇魔法にしろ内容はほとんど四元素と変わらない。仕様もほぼ同じ、習得する方法も変わらない。しかし、違う点が1つだけ存在する。習得できる魔法の種類だ。

 小魔法において、闇魔法は近接攻撃魔法と攻撃補助魔法しか存在しない。唯一の例外はシェムが使っているであろう黒い火球。ダークファイアと名付けられたその魔法はスキルレベル4にて解放されるそう。あとは全てダークソードのような近接攻撃魔法か、グラビティやポイズンミストのような補助魔法。光魔法は回復魔法と支援補助魔法に分けられる。遠距離魔法も闇魔法と同じように1つだけ存在するそう。それ以外は、回復か味方の活動を補助するバフ効果の魔法しか存在しない。魔法の数は四元素より1つ少ないそうだ。

 大魔法においては両方遠距離攻撃魔法が習得できるようになるそうだ。1レベルごとに遠距離攻撃魔法及び補助魔法が1つずつ追加される。


 最後に手に取るのは一番薄い本。「魔導書~禁忌魔術」、そう名付けられた本は、禁忌魔術の存在が書かれた本。1つ1つが強大な力を有し、そして看過できない代償を秘めている魔法の数々。しかしこれらは通常の方法では習得できず、様々な方法で覚えるそうだ。具体的な方法は書かれていない、それはそうだろう、禁忌なのだから。数自体は1つの属性につき結構な数あるそうで、名前のみのものも多い。具体的な効果が書かれているのは、光属性禁忌魔術第3番 絶対防御-人身御供-と他いくつかのみ。習得方法が書かれているのはこれだけ。十分な光属性魔法のスキルレベルを持ち、かつ教団に認められることにより習得することのできる魔法だそうだ。あの神父はやはり結構な人だったわけか。


 そこまで読み終えた時点で、日が傾いていることを確認する。時間が経つのは早い、いや、午後様々なことをしていたからというのもあるだろう。丁度読み終わったトリスと共に退館し、宿に戻る。

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