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或る世界の軌跡  作者: 蘚鱗苔
1 召喚、地固め
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1

 鬱蒼とした森、あまりに木が茂り過ぎていて薄暗い森、熱帯にある、数え切れないほどの虫が飛び交い植物は自由気ままに生えている未開の地、神秘の溢れる地、化学に支配されていない地・・・ジャングルと言われて人々が想像するのはそんな光景だと思う。

 ではコンクリートジャングルはどうか。確かに森林の如くビル群が立ち並んでいるが、ジャングルとは真逆だと思う。ビルに木々のように日を遮る効果などほぼないといっても過言ではない。確かに日陰は作るが所詮その程度。それどころかガラスは光を反射させ、また地表は熱を持ち、蟻のごとき探検家を炒めている。なかなかどうして、随分と皮肉の利いた名称を付けたものだと思う。ジャングルとは真逆じゃないか。

 青年はそんなことを考えながら通いなれた通学路を進んでいく。学校に近くなってきたからだろうか、青年の周りには人が増えてきている。ジャングルの中にある巣に向かう蟻の行軍は、段々と大きさを増しつつあった。百匹ほどに増えてきたあたり、突然蟻たちの足元から地面が持ち上げられた。

 そして地面ごと蟻たちは虫かごの中に放り込まれていくのだった。










「ん・・・・う・・・・?」


 目覚めると森林だった。何かの鳴き声が聞こえる。鳥だろうか、猿だろうか、まぁ猿の鳴き声なんてネットでしか聞いたことなかったが、聞き覚えのない声だった。痛む体の節々に鞭を打って立ち上がるが見たこともない景色。何が起きたのかわからないが、自分は学校にいく途中だったはず、服装は乱れていない。少ないながらも一応数人はいる友人のうちの2人と並んで歩いていた記憶はある、そして気が付いたら森林の中にいた。

 笑えてくるじゃないか。周りには誰もいない。自分が倒れていた場所の草がなくなっている、他は生えている、これらが意味するのは誰もいなかったということだろうか。五体は満足、服装も制服、とくにおかしな点は見当たらないが周りは森の中。原生林というほどでもない、見たこともないが。しかし手が入っているようには見えないように感じる。大きめの林、みたいなものだろうか。鳴き声が頭に響く、頭が痛くなってきた。女の叫び声に似ているんだよ、と脳内で毒づく。姦しい女は好まない。

 周りを見渡せども、知らない樹木と女の嬌声、空は青い。うっすらと月が見えるが2つ重なっているように見える。昼なのに出ているあたり月ではないのだろうか。ふと気が付く、荷物が何もない。バックも、携帯も、定期も、あるのは無事な服のみ。

 落ち着こう。状況を整理しようか、と冷静なのは自分のキャパシティを超えているためか。

 名前は…明日香。年は17、高校3年生、日本人で両親に弟が1人。苗字が思い出せない。思い出そうとすると頭痛がひどくなってきた、頭痛薬はバッグの中。

 思い出せないのなら諦めよう、異常なまでの冷静さに自分でも怖気がする。まずは周囲を精査すべきだと思う。



 30分ほどだろうか、頭痛は収まってきたようだ。それくらいをかけて調べた結果、ここは日本ではないという結論に至った。小学校や中学校で登山もしたし、生物などの教科を選択していた自分が知らない植物しかないのであれば、ここは日本ではないということになる。自分が無知なのは重々承知だが。では他国か、と問われても違う気がする。少なくとも自分は背丈ほどもある葉をもつ樹木なんて聞いたことないし、リンゴ、いやきっとそうだろう、そんなものが地面から生えているなんて知らないからだ。つまり異世界・・・?だとしたら納得できる。自分が気が付いたらこんな場所に放置されていたのにも、知らない樹木にも囲まれていることに説明が、ついてはいないが納得できるから。日頃自分はよく異世界に飛ばされるお話というものを読んでいた。決まってそういう世界ではRPGのようなお約束に縛られている。


 「ステータス表示」


 そんなお約束に漏れず、自分がそう呟くと右手の甲の上に幅20センチ程度の正方形の枠が表示されていた。液晶ではないし霧等に投影しているわけでもない。魔法か何かか、魔法ならばRPGか、自分の大好きだったジャンルだ、と勝手に一人ごちる。


 Name: アスカ

 Title:

 Unique Skill: <魔力増大>

 Skill: 

 Level: 1

 HP: 1000/1000

 MP: 5000/5000

 Constitution: 10

 Wisdom: 50

 Strength: 10

 Intelligence: 50

 Quickness: 10

 Bonus Status Point: 10

 Bonus Skill Point: 5


 やはりRPGか何かをベースにしてあるだろうステータス画面を見て、ログアウトと呟いたが何も変化が起きない。つまりだ、やはり自分は異世界に飛ばされ、もう戻れないという認識をしたほうがいいということだ。しかし名前、がおかしいのはなぜだろうか。苗字を覚えていない故なのだろう、しかし何故カタカナなのか。そしてなぜ苗字を忘れてしまったのか。自分はアスカなんていう女っぽい名前は好きじゃない。せめて苗字が残ってくれればよかったのにと後悔する。タイトルは称号という意味だろうか、どうやって取得できるのか。

2012-11-21修正


2013-1-27修正

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