第三話
「ここで少し待ってろ」
ある部屋の障子の前で私を降ろし、部屋に入ってなにやら中にいる人に指示している青年。
しばらくすると、すっと障子が開いて部屋に導かれる。
部屋には二つの棺があった。
「こっちが母親」
恐る恐る棺の窓を開けると、母の綺麗な死に顔があった。
「かあ…さん…っ」
「経とか色々済ませてある。顔だけで悪いな」
フルフルと無言で首を横に振る。
最後に見た母は血まみれだったし、大分傷ついていたと思う。配慮してくれたのだろう。
「父親の死に顔を見る覚悟をしておけ」
父は顔に大きな傷があった。縫い合わせてあるが、思わず口を覆った。
『逃げろぉお!!』
最期の父の叫び声が頭の中に響いた。
「…っあ…あぁっ!」
「…泣け。待ってやる」
しばらく泣いて心の整理がつき、いつの間にか青年の肩を借りていたことに気がついた。
「ご、ごめんなさいっ。濡らしちゃって…」
「いい。落ち着いたのならば色々これからのことを話さなければならないのだが」
頷いて青年の後を着いていく。着いた部屋には桔梗さんを含めて三人の人がいた。
私を見た瞬間、皆立ち上がって礼をした。驚いて何が何だかわからぬが、一応礼を返す。
私は青年の隣に座るように促されて座る。
「まず、改めてご無事で何より。俺の名は華月蓮夜。蓮夜でいい」
青年の自己紹介に慌てて返す。
「あ、私は華宮水桜です。あの、色々よくしてもらってありがとうございます」
「それが我々の義務ですからね。あ、桔梗仁と申します」
桔梗は名字だったらしい。
蓮夜の隣に座っていた、…事件のときにもいた青年が口を開く。
「俺は牡丹修介。修介でいいから。姫さん本当に怪我ねえな?」
よく見ると、修介は金髪に染めた髪に一房赤のメッシュを入れていた。
「はい。あの、姫さんって…」
「それは後。姫、お初にお目にかかります。蘭光義と申します。光義でも、ミツでもお好きなように。寂しいときは呼んでください。すぐに駆けつけましょう」
修介の隣の色気ムンムンの長髪の男の人に手をぎゅっと握らる。
「蘭、自重しろ」
「華月は頭が固くていけねぇな」
「…本題に入るぞ」
二人の間に火花が見えた。




