↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/60

第21話:縁側のある暮らし。村の大工と前世の知恵

空が高く澄み渡り、常闇の森の木立が黄金色と深い緋色に彩られる、穏やかな秋晴れの午後だった。

風はひんやりと冷たいが、南向きの窓から注ぎ込む日差しは、まるで焼きたてのパンのようにふわりと温かい。千尋は、ルゥの抜け毛から丹念に縮絨(しゅくじゅう)させて仕立てた純白のフェルトシューズに足を包み、居間の日だまりにペタンと座り込んでいた。


「……ふあぁぁ……あたたかい……」


膝の上には、丸々とした白銀の毛玉――ルゥが、お腹を上に向けて仰向けになり、無防備に手足を投げ出して「ふすぅ……」と寝息を立てている。

千尋の指先が、ルゥの柔らかい喉仏から胸元へと滑るたび、ルゥはとろけきった表情で前足を小さくパタつかせた。神獣の極上の体温と、足元のフェルトブーティがじんわりと蓄える温もり。そしてパイン無垢材の床の滑らかな感触。

すべてが完璧だった。すべてが至福だった。


だが――千尋の目は、部屋の中から南側の庭へとまっすぐに注がれていた。


(……惜しい。ものすごく、惜しいのよね……)


千尋はルゥの耳の裏をくすぐりながら、小さく溜息をついた。

小屋の南側には、手入れした家庭菜園と、日当たりの良い柔らかな草地が広がっている。天気のいい日は外の空気を吸いながら日向ぼっこをしたい。けれど、今の構造では、外に出るためにはわざわざ靴を履き替え、庭の草地の上に腰を下ろすか、切り株の上に座るしかなかった。

部屋の中にいれば靴を脱いでくつろげるが、外の広がりは感じられない。

外に出れば開放感はあるが、靴を履いたままの緊張感が足元に残る。


(室内と屋外のあいだに……靴を脱いだまま、素足やスリッパで腰掛けられる『中間の場所』があればいいのに)


千尋の脳裏に浮かんだのは、前世の実家――祖父母の古い日本家屋にあった、あの懐かしい空間だった。

庭に面して長く伸びた、白木の縁側。

春には心地よい風に吹かれながらお茶をすすり、夏には夕涼みしながら風鈴の音に耳を傾け、秋には日だまりで猫を撫でながらうたた寝をし、冬には低い日差しを浴びて温まる。

内でもなく、外でもない。暮らしと自然が緩やかに溶け合う、日本建築が誇る最高のくつろぎの装置。


「……よし。縁側(ウッドデッキ)、作っちゃおう」


思い立ったら即座に行動するのが、元社畜の千尋の美徳であり業(ごう)でもあった。

千尋は膝の上で蕩けていたルゥをそっと座布団の上へと移動させ、物置の古いデスクへと向かった。


取り出したのは、前の住人が残していった厚手の羊皮紙と、木炭を削って作った即席のデッサン用木炭ペン、そして真っ直ぐに削り出したパイン材の木片(定規代わり)だった。

千尋はインテリア雑貨・生活用品メーカーで六年間、数多の家具図面や店舗のレイアウトパース、空間デザインの仕様書を穴が開くほど見つめ、設計担当者と施工現場の板挟みになりながら、ミリ単位の寸法調整を叩き込まれてきた叩き上げの営業事務だ。

どんな寸法の家具が人に安らぎを与えるか。風がどう抜け、光がどう差し込むか。その理屈は、理屈を超えて身体の細胞に染み付いていた。


「まずは、敷地の測量値から逆算して……」


サッサッ、と木炭の先端が羊皮紙を走る。

木片を当て、正確な平行線が何本も引かれていく。

千尋が描き出したのは、単なる素人の日曜大工の落書きではなかった。

平面図、南側立面図、そして床下の断面詳細図。


千尋のこだわりは、細部にこそ宿っていた。

第一に、『軒(のき)の出』の絶妙な計算。

ただ板を外に張り出すだけでは、夏場は直射日光で床板が焼けて座れなくなり、冬場は雪に埋もれてしまう。千尋は、このエルダリア王国の緯度と季節による太陽の南中高度を逆算し、夏至の高い日差しは深い軒先で遮りつつ、冬至の低く柔らかな日差しだけを部屋の奥深くまで迎え入れるための、絶妙な軒の張り出し角度を割り出した。


第二に、『雨仕舞(あまじまい)と床板の目透かし張り』。

屋外に面する縁側にとって、最大の敵は雨水による腐食だ。板と板のあいだに、あえて五ミリから八ミリほどの絶妙な隙間(スリット)を等間隔で空けることで、雨水が表面に滞留することなく下へと落ち、同時に床下の湿気が抜ける通気構造にする。

さらに、束石(つかいし)の上に束柱(つかばしら)を立て、地面から床下までの空間を十分に確保することで、湿気と害虫の侵入を物理的に遮断する高床式の知恵。


第三に、『引き戸との連動による動線計画』。

現在のはめ殺しに近い窓枠を取り払い、壁一面をフルオープンにできる二枚引き込み式の木製ガラス戸(あるいは障子風の薄木引き戸)へと改修するプラン。戸を全開にすれば、十畳の居間と南側の縁側が完全にフラットに繋がり、視覚的な広がりは二倍以上になる。


「……ふぅ。こんなところかしら」


二時間後。

羊皮紙の上に仕上がったのは、現代の建築工学の合理性と、日本の伝統的な木造建築の粋が融合した、極めて緻密で美しい「山小屋増改築設計図」だった。

寸法線にはエルダリアの度量衡(ピードとキュビット)への換算値が細かく書き込まれ、木材の継ぎ手や仕口の噛み合わせまで丁寧に図解されている。


「設計図はできた。問題は……私の腕力じゃ、基礎の穴掘りと太い梁の加工が無理ってことね」


千尋は腕を組み、うーんと唸った。

自分には【住空間の調律】があるが、それはあくまで「素材のポテンシャルを引き出し、空間を整える」スキルであり、何もない空間から大黒柱を生み出す魔法ではない。木材を切り出し、正確に墨付けをして刻み、組み上げる作業には、プロの大工の腕が必要不可欠だった。


「……村へ行こう。腕のいい大工さんがいるって、行商人のイヴァンさんも言ってたしね」


◇


翌朝、千尋は麓の開拓村へと足を運んだ。

常闇の森の境界から歩いて一時間ほどの場所にあるその村は、木材の伐採と素朴な農業で生計を立てる、活気あふれる集落だった。

村の広場で聞き込みをすると、村人たちは誰もが口を揃えて同じ名前を挙げた。

「大工なら、村はずれの作業場にいるベルントだ。無口で愛想はねえが、腕前だけは領都の一級宮大工にも負けねえよ」


案内された作業場には、香ばしい挽きたての木の匂いと、小気味よいカンナの削り音が響いていた。

作業台に向かって一心不乱に木を削っていたのは、日に焼けた逞しい体躯を持つ、三十歳前後の男だった。

無駄な脂肪の一切ない分厚い胸板、筋骨隆々の腕。無精髭を生やした彫りの深い顔立ちに、職人特有の鋭利な眼光が光っている。男の名はベルント。この村の家屋の半分以上を手がけてきたという、無口な棟梁だった。


「……何の用だ、嬢ちゃん」


ベルントはカンナの手を止めず、視線すら上げずに低く問いかけてきた。

ぶっきらぼうで、他者を寄せ付けない職人気質の壁。普通の村娘なら気後れして逃げ出すような威圧感だったが、前世で気難しくて頑固な町工場の職人たちと納期交渉を繰り返してきた千尋にとって、この程度の塩対応は日常茶飯事だった。


「初めまして、ベルントさん。森の廃屋に住んでいる千尋と申します。……小屋の南側に、増築工事をお願いしたくて伺いました」


「……あ?」

ベルントの手がピタリと止まった。

削り節を吹き飛ばし、値踏みするように千尋をギロリと睨みつける。


「森の廃屋だと? ……あそこは数十年放置された、呪われた監視哨の跡地だぞ。あんな湿気とカビにまみれたボロ家に、増築だと? 金と資材の無駄遣いだ。せいぜい雨戸の腐れを直して、隙間風を藁で埋めるのが関の山だ。素人がおままごとで大工仕事を頼むんじゃねえ」


冷淡な拒絶。

だが、千尋は眉一つ動かさず、むしろ「そう来るわよね」と納得したように微笑んだ。

本物の職人ほど、中途半端な仕事や無意味な普請を嫌うものだ。言葉でどれだけ熱意を語ったところで、職人の心は動かない。彼らを動かすのは、いつの時代も「仕事そのものの質」だけだ。


「おままごとかどうかは、これを見てから判断していただけませんか?」


千尋は懐から、丁寧に折りたたんでいた一枚の羊皮紙を取り出し、作業台の上の木屑をサッと払って、ベルントの目の前へと静かに広げた。


「……あん?」


ベルントは鬱陶しそうに眉をひそめ、作業台の紙へと視線を落とした。

断るための口実を探すように、適当に視線を走らせた――その、次の瞬間だった。


「…………っ!?」


ベルントの太い眉が、跳ね上がった。

鋭い茶褐色の瞳孔が、カッと見開かれる。

男は吸い寄せられるように作業台へと両手をつき、顔を紙面すれすれまで近づけた。


「な……なんだ、この図面は……!?」


ベルントの喉から、掠れた声が絞り出された。

羊皮紙の上に黒炭で緻密に引かれた線。

それは、ベルントがこれまで見てきた、領都の高名な建築士が描くような「見た目だけの豪奢な飾り絵」とは、根本から次元が異なっていた。


「……おい、嬢ちゃん。この南側の屋根の角度は何だ? 軒の出が、通常の規格より二尺近く深いぞ。これじゃあ、真夏の直射日光を遮る代わりに、部屋が薄暗くなっちまうんじゃねえのか?」


試すようなベルントの鋭い問いに、千尋は淀みなく、澄んだ声で即答した。


「いいえ、暗くはなりません。この土地の冬の太陽高度は、夏に比べて約三十度低くなります。計算上、夏至の直射日光は縁側の端でピタリと止まり、室内に余計な熱を入れません。逆に冬至になれば、低い太陽光がこの深い軒の下を通り抜けて、居間の奥の壁まで差し込みます。屋根の庇(ひさし)そのものが、季節に合わせた天然のエアコンになるんです」


「……っ……! 天然の……何だと……!?」


ベルントの背筋に、ゾクリと悪寒のような鳥肌が立った。

太陽の傾きを計算して軒の出を決める。言葉で言うのは容易いが、それをこれほど正確な数値として図面に落とし込んでいる人間など、王国の建築士ギルドにも一人として存在しなかった。


だが、ベルントの驚愕はそれだけに留まらなかった。

太い指先が、断面図の床下の部分を激しくなぞる。


「……じゃあ、この床板の隙間は何だ? 板と板のあいだに、五分ほどの隙間を空けて並べるなんざ、隙間風が入ってくる欠陥じゃねえのか?」


「そこが一番のポイントです」

千尋は身を乗り出し、ベルントの荒れた指先の隣に自分の指を置いた。


「縁側は、雨風に晒される半屋外の空間です。板を隙間なく敷き詰めれば、雨水が表面に水たまりとなって残り、そこから腐食が始まります。あえて隙間を空けることで、雨水は速やかに床下へ排水されます。さらに、地面からの湿気を通風によって逃がすため、木材が常に乾いた状態を保てるんです。……木は、生き物ですから。呼吸をさせてあげないと、どんなにいい材木を使っても腐ってしまいます」


「…………木が、呼吸する……?」


ベルントは雷に打たれたように硬直した。

木が呼吸する。

その言葉は、三十年間、木と向き合い、木を削り、誰よりも木を愛してきたベルント自身の魂の叫びそのものだった。

王都の偉そうな建築士どもは、いつも「隙間なく塞げ」「豪華な漆喰で塗り固めろ」と命じてきた。その結果、湿気の逃げ場を失った木組みは内部から蒸れ、十年も経たずに土台から腐り落ちていく。ベルントはその度に「木が泣いている」と悔し涙を呑んできたのだ。


だが、目の前の娘が描いたこの構造はどうだ。

束石の上に束柱を立て、風を床下に通し、雨水を逃がし、太陽の光を味方につける。

自然の力を力任せに拒絶するのではなく、自然の循環を受け流し、調和させるための完璧な設計思想。


「……仕口(しくち)の継ぎ手も……釘を一本も使わねえ、『蟻継ぎ(ありつぎ)』と『腰掛け鎌継ぎ』の構造になってやがる……。材木同士が噛み合い、地震の揺れをいなして、年月が経つほどに締まる木組みの技術……」


ベルントの手が、興奮で小刻みに震えていた。

図面を凝視する眼孔の奥に、かつてないほどの激しい炎が燃え盛っていた。


「……嬢ちゃん。あんた、一体何者だ?」


ベルントが顔を上げた。

その顔から、先ほどの不審や見下しの色は完全に消え去っていた。

そこにいたのは、遥かな高みにある「真の匠の知恵」を前にして、魂を揺さぶられた一人の男の顔だった。


「こんな構造、教本のどこにも載ってねえ。王都の大聖堂の宮大工だって、こんな知恵は持ってねえぞ……! この設計通りに木を刻んで組めば……木が呼吸し、雨風をいなし、百年……いや、二百年はびくともしねえぞ!!」


「ふふ。昔の、私の故郷の大工さんたちが残してくれた知恵なんですよ」


千尋は照れくさそうに笑った。

前世の日本の宮大工や、町家を造り続けてきた名もなき職人たちが、千数百年の歴史の中で磨き上げてきた知恵の結晶。それを、この異世界の気候に合わせてアレンジしただけだ。


「……資材は、どうするつもりだ?」

ベルントが、すがりつくような目で千尋を見つめた。

「あの森の湿気と寒暖差に耐えるなら、安物の杉材じゃダメだ。芯まで油が回った、樹齢百年の赤松か、水に強いヒノキモドキの心材が必要になる。……普通の材木屋で買えば、金貨数十枚は下らねえぞ」


千尋は、申し訳なさそうに視線を落とした。

「う……やっぱり、それくらいかかりますよね。私、あまり現金は持っていなくて……手持ちのハーブ石鹸とか、保存食の物々交換で、少しずつ資材を分けてもらいながら、何ヶ月もかけて作ろうと思ってたんですけど……」


「金なんぞ、どうでもいい!!」


ドォン! とベルントが作業台を拳で叩いた。

あまりの剣幕に、千尋が「ひゃっ」と肩を竦める。


「金の話なんざしてねえ! 俺に……俺に、この図面の建前をやらせてくれ!!」


ベルントは千尋の両肩をガシッと掴んだ。

職人の分厚く、タコの固まった掌から、凄まじい熱気が伝わってくる。


「俺の作業場の裏に、先代の親父の代から寝かせてある、極上の『香月木(こうげつき)』の乾燥材がある! 水に強くて、虫も寄らねえ、最高の銘木だ! 使い道がなくてずっと眠らせてたが……この図面のためなら、全部タダで放出してやる!!」


「えっ!? タダ!? い、いいんですか!?」


「俺が作りてえんだよ! こんな面白い仕事、他の大工に渡してたまるか!」

ベルントの顔は、少年のように輝いていた。

「基礎の掘削から、木組みの刻み、建て方まで、全部俺がやってやる! 手間賃なんざ、嬢ちゃんのその美味い飯と、完成した縁側で一杯飲ませてくれりゃあそれで十分だ! ついでに、小屋の傾いた屋根瓦と雨戸の調整も、俺が全部まとめて叩き直してやるよ!!」


「べ、ベルントさん……!」


千尋の瞳が、感動で潤んだ。

前世の社畜時代、理不尽なコストカットと値引き交渉ばかりを押し付けられ、「安く買い叩くこと」しか許されなかったビジネスの世界。

けれど今、目の前にいる職人は、ただ「良いものを作りたい」「この知恵を形にしたい」という純粋な情熱だけで、己の技術と最高級の資材を惜しげもなく差し出してくれようとしている。


「ありがとうございます、ベルントさん! 私、毎日美味しいご飯とお茶を山ほど用意して待ってますから!」


「おう! 任せときな! 明日から道具一式担いで、森へ乗り込んでやるからよ!」


ベルントは破顔し、丸太のような腕で千尋の背中をバシッと力強く叩いた。

痛かったが、その痛みすらも、頼もしい職人の温もりに満ちていた。


◇


その日の夕暮れ。

村からの帰り道を急ぐ千尋の足取りは、羽が生えたように軽かった。

足元のフェルトシューズが、カサカサと乾いた落ち葉を踏みしめるたびに、小気味よい音を立てる。


森の境界を抜け、清浄な空気の満ちる山小屋の前庭へと戻ってきた時――。

小屋の前に、見慣れた二つの長身の影が立っていた。


「……あ、千尋殿! お帰りなさいませ!」

駆け寄ってきたのは、副官のユーグだった。

昨日の激しい胃痙攣が嘘のように、その顔色はツヤツヤと輝き、すっかり健康そのものの血色を取り戻している。腰には公務用の書類鞄を提げていたが、その表情は忠犬のように明るい。


そして、その少し後ろ。

薪割りの斧を片手に、少し所在なげに佇んでいたのは、主君のアルヴィスだった。

千尋の姿を認めた瞬間、その冷徹なサファイアの瞳が、パッと春の陽だまりのように緩むのを千尋は見逃さなかった。


「……無事だったか。人里へ下りたと聞いて、心配していたのだ」


「ふふ、大丈夫ですよ。ちょっと村まで、お買い物と大工さんの手配に行ってきただけですから」

千尋が笑いかけると、アルヴィスは安心したように息を吐き、少し気まずそうに視線を逸らした。

「そうか。……丸太の補充は、すでに裏庭に手配しておいた。いつでも割れるぞ」


(……この人、本当に大型犬みたいになってきたわね……)

千尋は心の中で苦笑した。

帝国最強の騎士が、千尋の留守中に薪割りの準備をして待っていたのだ。その不器用な健気さが、なんとも微笑ましい。


足元では、ルゥがトコトコと駆け寄ってきて、千尋のフェルトシューズにスリスリと頭を擦り付けて甘えてくる。

「くぅぅん」と喉を鳴らすルゥを抱き上げ、千尋は夕焼けに染まる山小屋の南側の庭を見渡した。


「アルヴィスさん、ユーグさん。明日からね、ここに素敵な『縁側』ができるのよ」


「……エンガワ……?」

聞き慣れない異国の言葉に、アルヴィスとユーグが揃って首を傾げる。


「ええ。靴を脱いで、風に吹かれながら、みんなでお茶を飲める最高の場所よ。楽しみにしててね」


茜色に染まる秋の空の下、パチパチと煙突から立ち上る煙が、穏やかな夜の訪れを告げていた。

職人の情熱と、前世の知恵。

限界社畜OLの愛する山小屋に、またひとつ、極上の安らぎをもたらす奇跡の空間が生まれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。