ん:んー……いざ死んでみると、後悔しかねえや。
死にたくなるような雨の降りしきる、それはあれからちょうど一年経った月曜日だった。
おれはその場に立ってた。なかなかいねえもんだな、お仲間ってのは。
みんなさ、そんな健全なワケ? 雨が続く陰鬱な感じにさ、嫌気が差したりしないワケ?
おれはさ、雨嫌いなんだよ。月曜日も大っ嫌い。嫌いがダブルできちゃったらさ、うぜーってなんじゃん。死にてーってさ。
なーんか何もかも嫌になってさ。授業サボってやろうとしたら、体育館裏に先客がいたワケよ。そりゃそうだよな、土砂降りだし。
それで、おれは屋上を選んだワケだ。right or left、これがおれの人生最高にして最後の別れ道になったね。
うぜー+うぜー=どーでもいい。おれの頭ん中に出来た数式ね。いやー、実に頭ワルい。屋上だから当然ズブ濡れでさ。
なんだってんだよ。段々腹が立ってきた。
体育館裏に人がいなけりゃ、おれの明るい未来は守られたってのか? おれ今日誕生日なんだぜ?! けど家族以外に誰からも祝ってもらった事、ねえっての!!
したい事もハマる事も大切な友人も出掛ける場所も何もない、ただ空っぽに過ぎる毎日。空っぽのおれ。
飛んじまえ! どうせ何も残せない人生、一回くらい盛大に自分を飾ってみせろ!!
おうよ!! 自分の挑発に背中を押されて、おれは飛んだ。
だってさどうせ、このおれだぜ? 屋上のへりを落ちない様に気を付けて歩いてるくせに、つい足を滑らせて落ちるようなバカげた展開しかねえんだって。だったらさ、自分の意志で飛んだ方が数倍やりきった感、あんじゃん。
落ちてくおれ、なんて爽快感!! おお、走馬灯。……って、よみがえる思い出もねえよおれ!! もう地面!!
――こうして、死にたくなるような雨の降りしきるあの日に死んでから、一年。おれはいつだってここにいんのに。思い悩んでなかなか飛べない、誰かの背中を押してやる為に。
けど、さ。誰もいねえの。誰も来ねえの。
みんなさ、そんな死にたくねえワケ? 誰か一人くらい悩んでふらっとやって来ようよ?! 生きてても死んじまっても誰にも必要とされないおれってさ……。
自分の意志で飛んだくせに、自縛霊になってるおれ。案外素直に足踏み外して落ちて死んでた方が、自由にどこでも行ける霊になってたとか? ここでもまさかのright or left?!
ご丁寧に、降ってきやがったぜ雨が。だ・か・ら・さ・あ、おれはー、雨がっ、だいっ嫌いなんだっつうのーっ!!
……ああ。死にてえ……




