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足枷

[警告:システムの法則が維持できません。エネルギーが体内に溢れています。]

[警告:直前のセーフエリアで復活できません。体の再構築を行います]

[エラー:雷神のエネルギーが再構築を邪魔しています。強力な力によって強制的に復活します。]


体内に流れ込んだ膨大な雷のエネルギーは、大地に流れず、逃げ場を失ってブリンクの体内で停滞・圧縮され始めた。肉体が雷のエネルギーを保存する電池のようになっていた。


ブリンクは、激しい痛みを伴いながら、意識を取り戻した。


「ハッ……!」


彼は都市の復活地点ではなく、見慣れない不思議な広場に寝かされていた。広場には飾り気がなく、ただ広場の中央に、複雑な魔方陣が描かれているだけだ。


「ここ、は……」


彼はすぐに異変に気づいた。


[デバフ] 《神罰:重力の鎖》が適用されました。敏捷ステータス:-99%。


敏捷のステータスがかなり下がっている。足に鉛が詰まっているかのように重い。立ち上がろうとしても、すぐに膝をつく。彼の全てを賭けた敏捷性が、失われている。装備によって上がっているステータスも含めた数字が減らされている。元々初期で設定されているステータスよりも低い。もはやこの敏捷ステータスでは普通に歩くことも出来ない。現実の世界で感じていたあの足の不自由さをゲームでも無理やり感じさせられていた。


「嘘だ……俺は、ゲームでやっと歩く力を手に入れたんじゃないのか……?」


そのとき、彼の視界に新たなシステムウィンドウが張り付いた。


[成長型クエスト:【神速の試練:停滞からの脱出】]


目的: 制限時間内に、この封印空間を1周せよ。


残り時間: 09:58


報酬: 職業:???、スキル:???、《神罰:重力の鎖》の解除


ペナルティ: 時間切れ、または失敗時、キャラクターデータ永久消滅。


出てきたのはクエスト通知。しかも成長型。

このゲームにおける成長型クエストとはクリアしていくことで次なるクエストが発展していくもの。メインクエストに設定されてることが多いがこうしてメインではないクエストに設定されてることもある。


このクエストの気になる点はいくつかあるが、とりあえず2つ。

このクエストの成功報酬が???の職業とスキルであること。このフリューゲルにおいて、転職クエストでしか就くことのできない職業は幾つかあるが、???と明記される職業はこれまでにない。つまり未発見の職業であるということ。当然スキルについても同じ。

もうひとつは失敗のペナルティが異常であること。デスペナなんてものではなく、アカウント、存在が消えてしまうという、えげつない罰。


しかももう時間は進み始めていた。落ち着くまもなく、立ち上がっては歩こうとするけど、俊敏のステータスのデバフは足枷のように重たかった。


そのとき、空間の隅から、静かな足音とともに、あの神官ライゼルが姿を現した。


「無駄だ。雷神の教義に背き、我々の裏をかこうとした汚物が。プレイヤーと呼ばれるやつはこれだから嫌いだ。」


「あの時の!即死級の攻撃をしてきた方じゃないやつ!お前達が俺をここに呼んで、こんなクエストを?」

ブリンクは重い足を引きずり神官を睨んだ。


ライゼルはブリンクの足元を見下ろし、冷たい表情で言った。

「そのとおりだ。そして、その『重力の鎖』こそが、お前が、お前の中にある雷神の力が暴走しないための枷だ。愚かにも、その肉体の力でこの試練を乗り越えようとするか? 雷神の力は、大地に連なる重き存在には扱えぬ」


ライゼルの言葉は、ブリンクを試練から脱落させようとしている。だが、同時にそれは、核心を突くヒントでもあった。

ブリンクは動かない体をむやみに動かしてもこのクエストをクリアできないことは分かっていた。1にも満たない敏捷ステータスは体を動かせないだけで、頭を働かせることは出来た。


07:35


「大地に連なる重き存在…。今の俺の体には雷神の力があるのか?」


「そうだ。雷の速さならこの試練など時間があまりすぎて寝れるくらいだ。お前たちプレイヤーと呼ばれる汚物にはイメージすることも出来まい。」


ブリンクは、必死に体内の異変を探った。ある、確かに存在する。あの《審判の雷》によって、体内に圧縮され、暴発寸前のエネルギーの塊が。心臓か、胃なのか、どこかの内臓から身体中を駆け巡るエネルギー。


ブリンクの意識が、自身の体内に強制的に集中する。呪い《重力の鎖》は、俊敏のステータスだけではなく雷の力も抑えつけていた。それは雷のエネルギーを過剰に圧縮させている。


「イメージ…。これは走るんじゃない。肉体を動かせないこの停滞を打ち破る、瞬間的な移動のイメージ!」


ブリンクは、敏捷性という肉体の鎖を捨て、体内の雷のエネルギーを、ただ一瞬、特定の方向へ推力として解き放つイメージに全意識を集中させた。それは、現実で動けない彼が、ベッドの上で何千回も夢見てきた「停滞をぶち破るイメージ」だった。


体内に流れる不思議な力を後ろに飛ばす。現実には不思議な力は存在しないけど今は雷の力がある。


キュオォォン……!


彼の足元から、微かな青い光が溢れる。そして、まるで稲妻が地面を走ったかのように、ブリンクの体が一筋の雷の線となって、座標の中心へと突進した。それは、「走る」という行為をやめて、瞬間的な「超加速」へと昇華させた、雷神の移動術だった。


ブリンクは、制御が効かず止まれないまま中心座標を通過。子供の頃から推進力を使って前に進むことばかりイメージしていたものの、とまることまでは考えてなくて。すぐに体を反転させ、再び雷の力を放出して元の座標へと移動する。そして広場の端にあった壁に強くぶつかって停止した。


「壊せない壁にぶつかりました。

貴方は深刻なダメージを受けました。イベント進行の影響で体力が1残ります」


ライゼルは、信じられないものを見るように、沈黙した。


[システムメッセージ]


【神速の試練:停滞からの脱出】を達成しました。


《神罰:重力の鎖》が、<雷神の枷>へと変質し、体内の雷の力を完全に制御可能になりました。


<雷速の選定者ライトニング・セレクター>の職業を習得しました。


固有スキル【神速:ブリンク(マッハ・ブリンク)】を習得しました。


呪いは消え、ブリンクの足は自由になった。彼は体から青い残光を放ちながら、ライゼルに向き直った。その目は、病に侵された少年のものではなく、光速の自由を知った者の輝きを宿していた。


「……見事だ、ブリンク。まさか、あの呪いを自らの意志で打ち破る者が現れるとはな。しかもそれがプレイヤー…。お前はただのバグではない… 神に選ばれる資格を得たものだ。雷神の生まれ変わり、雷速を身につけしものだ。」


ライゼルは、冷たい表情を崩し、わずかな笑みを浮かべた。


「この神殿は、雷神に関するあらゆる知識と、その力を制御するための秘術を司っている。今後、お前の『雷の速さ』を磨きたくなったらいつでも来い。ただし、安くはないぞ。」


ブリンクは、雷の力を宿した足で、力強く地面を踏みしめた。金策の必要性。そして、止まることのできない神速という新たな課題。彼の物語は、今、始まったばかりだ。

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