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月待ちの灯(あかり)  作者: しゅう


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柚子

主人公 牧野 賢治

妻 牧野 志津

12月22日、冬至の朝。一年で最も夜が長かった一日が過ぎ、清浄な光が八戸の街に満ちる。

志津は、賢治が銀行へ出た後、静かに湯殿の準備を整えた。賢治の仕事は年末最終営業日まで続くため、張り詰めた緊張は完全に解けていないだろう。志津の願いは、この節目に、家庭の安寧が、外の冷たさに勝ることだった。


(今日は、母に顔を見せに行こう。)


冬至という節目に、娘として母の顔を見、母の温もりを感じてくることが、今の志津には必要だった。そして、賢治のために用意する柚子湯に必要な、清々しい柚子を分けてもらうためでもあった。


志津が実家に着くと、母はすでに台所に立っていた。長年使い込まれた台所からは、八戸の家庭特有の、質朴で温かい海と土の匂いが漂っている。

「志津かい。よく来たね。今日は冬至だからね、かぼちゃをいつもより時間をかけて煮ていたんだよ。」

母はそう言って、志津をねぎらい、火鉢のそばへ座らせた。

「賢治さんは元気かね?銀行の仕事は、この季節、骨が折れるだろう。特にあの人は、ああ見えて色々なものを背負い込むからね。」

母の言葉に志津は、胸が熱くなった。

母は、志津のために煮込んだかぼちゃを、大きな器にたっぷりとよそい、さらに昨日獲れたばかりの海藻を添えた。

「これは『おすそわけ』だよ。少しは持っていきなさい。」

それは、母の純粋な愛情が詰まっていた。志津が賢治のために心を込めて煮たかぼちゃとは違う、生家から受け継いだ、揺るぎない温かさの象徴だった。


志津は、母から分けてもらったかぼちゃと海藻、そして清々しい柚子を抱え、再び賢治の家へと戻る。

八戸という同じ街の中にいながら、実家で感じた「娘」としての安堵と、賢治の家で築く「妻」としての責任。二つの温もりが、志津の中で鮮やかに交錯した。

(私のかぼちゃ。母のかぼちゃ。)


冬至の夜。実家からの「おすそわけ」も交えた夕食を終え、賢治は柚子湯に浸かった。

八戸の母の情が煮詰まったかぼちゃと、妻の愛情が整えた清らかな柚子湯。

読んでいただきありがとうございます。

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