じゅね餅
主人公 牧野 賢治
妻 牧野 志津
その日、牧野志津は八戸の市場の裏手で、ふいに足を止めた。冬の漁期を終えたばかりの街は潮の香りが強いが、それを突き破るように、香ばしく、力強い薫りが鼻をくすぐった。
「じゅね餅かえ」
屋台の七輪で、串に刺した餅がこんがりと焼かれ、黒々としたじゅね味噌が塗られている。それは、幼い頃、冷害の年に祖母が囲炉裏で焼いてくれた故郷の、質実な記憶の匂いだった。
志津は立ち尽くし、その匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
夜半、賢治は隣で深い寝息を立てている。志津は布団の中で、昼間に嗅いだじゅね餅の薫りを何度も反芻していた。
明日、つくろう。
翌朝、賢治を銀行へ送り出し、志津はすぐに台所へ向かった。
まず、いもの粉百匁 二十匁に塩を混ぜ、
湯を一合ほどかけて手早く練る。
固まり具合をみながら、ぬるま湯を少量ずつ足し、
耳たぶほどの固さにこねあげる。
次に、じゅねの味噌だれだ。五十匁のじゅねを炒り、
すり鉢で丁寧にすり、油分が出て皮がよくのびるまで労力を惜しまない。
砂糖十五匁ほどと、自家製の味噌大さじ一杯強を加え、練り合わせる。
湯を沸かし、薄切りにした餅を茹でる。
浮かび上がった餅に、じゅね味噌を丁寧に絡ませ、
志津は全ての作業を終えた。
出来上がったばかりのじゅね餅を竹籠に盛り付け、志津は卓袱台の隅にそっと置いた。
外はもう夕刻だ。もうすぐ、賢治が帰ってくる。
「お父さんは、美味しそうに食べてくれるだろうか」
読んでいただきありがとうございます。
郷土料理的なものを書いてみました。
作り方はたぶん合っていると思います。
間違っていたらごめんなさい。
こんな感じで物語をすすめていきたいと考えております。
これからもよろしくお願いします。




