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第一話 美女の死体

 「運命手繰りの指輪デステニーリングってのはいつ頃、現れるんだろうな兄貴。新宿の鬱陶しい雑魚共を殺しまわってるけどよぉ。そんなもの現れる予兆がないぜ」

 坊主頭の巨漢が路地裏でぼやく。

 男の体躯は2メートルを超えていた。

 碧い眼をぎょろりと動かし、周囲に転がっている魔法使いの死体を眺める。

「魔法使いを殺していけばいずれ向こうから現れる」

 答えたのはもう一人の男だった。

 兄貴と呼ばれた男は巨漢の弟よりも一回り小さく、フードを被っている。

 包帯で顔を隠すその姿は異様としか言いようがなかった。

「けっ、魔法使いと言わずに普通の人間だったら楽に殺し放題なのによ。東京は人がわんさかいて鬱陶しいたらありゃしねえ。ちょっとばかり殺した方が居心地が良くなるってもんだ」

「我慢しろ」

「へいへい、メトゥスの兄貴には従うさ。血の繋がったたった一人の実の兄貴だもんな」

「そこの女ならば知っているかもしれないぞ、ライラス。なんせあの女は向こう側の人間だからな」

 メトゥスが指を指す。

 壁に縛り付けられた銀髪の美女に向けて。

 美女は真っ赤な鎖によって、縛り付けられていた。

「わたしがお前たちになにか助言でもすると思うか」

「思わねえな。だから、死んでくれや。レイメア。新宿の幹部が死ねばてめえらのボスの臆病者の遠藤も出てこざるをえなくなる。自警団気取りのてめえら新宿のマジックギャングさえくたばれば俺たちは好き放題できる」

「ふん、それなら渋谷のアンダーデビルにでも入ればよかっただろうに。おっと貴様ら、外国人にはできない相談だったか」

「てめえも似たような立場のくせによく言いやがるぜ、魔界人さんよぉ」

 ライラスはじりじりとレイメアに近づく。

 両手の拳骨から骨が皮膚を裂いて伸びていく。

 ナイフのように先端が鋭くなり、爪のようにどんどん伸びていく。

 鋭くなった骨をレイメアの心臓めがけて突き刺した。

「てめえの死因は俺たちアルバーノ兄弟に会ったことだぜ。最後になにか言うことはあるか」

「地獄に落ちろ、クズ共」

 そう言って、レイメアは事切れた。

 銀髪が力なく垂れ下がる。

「これでこの東京は俺ら足立ブラッティーボーンズのものだ」

 そう言って、路地裏から鼻歌交じりに上機嫌に立ち去るライラスとメトゥス。

 後には死体だけが残った。


○○○


「東京には慣れた? かなたっち」

「ああ。美姫のおかげでね」

 放課後。僕、此岸彼方は同じクラスメイトの花菱美姫と一緒に学校から帰宅しようとしていた。

 一週間前に東京に出てきた僕に美姫は懇切丁寧に東京のことを教えてくれた。

 正直、九州の片田舎から出てきたばかりの僕にとってはこれいじょうないくらいありがたかった。

「それにしてもまさか、オンラインゲームで出会ったフレンドが僕と同じクラスメイトだったなんて、なんて凄い偶然なんだ」

「にゃははは。本当にすごいよね」

 美姫とはオンラインゲームでたまたま出会って仲良くなり、リアルを教えるようになったらなんとも奇遇なことに僕が通う高校のクラスメイトだった。

 こんなの宝くじを当てるよりすごい確率なんじゃないだろうか。

「これもあたしとかなたっちが運命の赤い糸で結ばれたがゆえの奇跡なんよ」

「まさか、そんな……」

「かなたっちは信じてないの運命とか奇跡とか」

「僕はそんな非科学的なものは信じないかな」

 運命なんてものは眉唾だ。

 僕はそれをはっきりと知っている。

 すべては誰かが為した行動の結果にすぎないと。

「ちぇ、つまんないのー」

「ごめんね」

「謝る事はないけどさ。でも、だったらこういう噂も信じないよね。今、東京で魔法使いたちがギャングをしているって話」

「……魔法使いがギャング? 魔法使いなんているの?」

 僕はあえて知らないふりをした。

「本当にいるらしいよ。そいつらが東京で抗争を起こして、死体が山ほど出ているとか。テレビじゃ報道されないけど、ネットでは噂がもちきり。きっと報道規制とかかかってるんだよ」

「なんのために?」

「うっ、それはわからにゃいけど」

 僕はため息をつき、

「ネットの噂ばっかり信じてたら、馬鹿になるよ」

「そんなことないもん。とにかく、かなたっちに言いたいことは今、東京は危ないってこと。裏路地とか人気のないところにいっちゃダメだよ。これは友人としての警告なのです」

「僕は大丈夫だよ。安心して、そんなところに行かないから」

「それならいいけど。せっかく出来た友達が次の日死体だったなんて嫌なんだからね」

 そう言って美姫は顔を暗くする。

 この様子、なにかあったな。

「……かなたっちが転校してくる前に、隣のクラスの子がさ路地裏で死体になってたのを知ってからさ。あたし、怖くなっちゃって。しかも、その娘は全身から血を噴き出して死んだんだって。こんなの魔法使いの仕業以外に考えられないよ」

「……大丈夫、魔法使いなんていないよ」

「ほんとに? 信じていいの」

「うん。だって、魔法使いなんて見たことないだろう」

「それはそうだけど……」

「じゃ、いないんだよ。でも、念のため帰り道には気をつけた方がいいかもね」

「うん、あたし気をつける。かなたっちも気を付けてね。じゃあ、あたしはこっちだから」

 大通りの方を行く美姫。

 あの広い通りなら、魔法使いに襲われることはないだろう。

 それにしても、東京は思った以上に混沌化しているな。

 いったいなにが起きているんだ。

 魔法使いは目立った行動を避けるはず、それなのに組織を作って一般人にも被害が出ているなんて。

 それにさっきから死の香りがする。

 近くで誰か死んでいる。

 急がなきゃ。今なら助けられるかもしれない。

 僕は美姫との言いつけを破って、路地裏へと向かった。

 死の匂いが一層濃くなった。

 路地裏には魔法使いと思しき男たちがなにかに貫かれて殺されていた。

 この人たちは可哀想だけどもう駄目だな。

 奥の方へ行くと銀髪の女性が胸をなにかに貫かれて死んでいた。

 まだ体温が温かい。

 死んだばかりだ。

 この人なら助けられる。

 美姫、ごめん。

 魔法使いはいるんだ。

 僕がその魔法使いなんだ。

 銀髪の女性に向けて手をかざし、こう唱えた。

『リ・ボーンズ』

 胸の穴がみるみる塞がっていく。

 そう、僕は魔法使いだ。

 ただし、ネクロマンサーだけどね。

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