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ゼロから始める軍神少女  作者:
第一巻:二つの戦場、二人の将軍 (だいいっかん:ふたつのせんじょう、ふたりのしょうぐん)
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二人だけの寝室

女王の寝室でミリエルは鏡に向かい、領主学院の制服の小さなリボンを一分の隙もなく整えていた。彼女が、彼女に言わせれば「二人の最初の繋がり」を象徴するこの飾りの角度を微調整するのは、これで三度目だった。


コーナは傍らで、まるで大切なデートにでも行くかのような、緊張と期待が入り混じった君主の様子を見て、合点のいったような意味深な笑みを浮かべた。


「コーナ、後でシミアが来たら、入口の衛兵を全員下がらせてちょうだい。私は彼女と二人きりで話したいの」


「はい」


「それから、今日の午後は自由に過ごしていいわ。もう来なくても大丈夫よ」


「……はい」コーナの口調には、一筋の小さな、仲間外れにされたような寂しさが混じっていた。


彼女は静かに女王が不要になった資料を片付け、去り際に、まだ鏡の前で一心不乱に身なりを確認している、もう一つの「戦争」の準備をする君主の姿を、最後に一瞥した。


……


シミアが寝室の扉をノックした時、扉はほとんど瞬時に開けられた。


彼女の目に飛び込んできたのは、同じく制服を着たミリエルだった。彼女の美しい銀白色の長い髪は丁寧に爽やかなポニーテールに結われ、その顔には隠しようのない明るい笑みが浮かんでおり、シミアは思わず心の中で疑問に思った。(何か……良いことでもあったのかしら?)


「お久しぶりです、ミリエル様……」相手の視線から一筋の「警告」の冷たい気配を感じ、シミアは急いで言い直した。「……ミリエル」


「お入りなさい」


ミリエルの足取りに従い、シミアは初めて女王の寝室をじっくりと観察することができた。巨大な本棚、見るからにこの上なく柔らかそうなソファと絨毯、そして女王にとっては少し質素すぎるような大きなベッド。


ミリエルはシミアをソファの前まで案内して座らせた。まるで雲に抱かれているかのような心地よさの中で、シミアの連日張り詰めていた神経が思わず緩んだ。


「シミア」ミリエルは開口一番に言ったが、その声には一筋の見逃せない、探るような響きがあった。「今回の辺境での大勝利の褒美について、あなたは本当に……あのルルト家のミレイユの自由だけを望むの?」


シミアは身を起こし、真剣に頷いた。「はい。彼女はただ家族の貪欲に利用された道具に過ぎません。彼女の人生があのように終わるべきではありません」


もう一人の「ミリエル」をこれほどまでに擁護するのを聞き、女王ミリエルの目に素早く一筋の不快感がよぎったが、彼女はそれを巧みに隠した。


「であるならば、没収したルルト家の本邸を彼女に返すというのはどうかしら?」


「そのように提案はしましたが、彼女は断りました」シミアは少し困ったように頭を掻き、地下牢での対話をかいつまんで復述した。


「ほう? 彼女は虚ろではかない『未来』一つで満足したと? 実に無欲なお方ですこと」ミリエルの口調は称賛しているように聞こえたが、しかし氷のような嘲笑を帯びていた。彼女は一息置き、有無を言わせぬ女王としての口調で言った。「あなたの考えを支持するわ。彼女の旅費は王室が持ちましょう」


「本当に、よろしいのですか?」


「もちろん」ミリエルは頷き、随即、話の矛先を変えた。「ではエグモンド家のことは? 今回ミラー様は私たちに大きな助力をしてくださいました。それからアルヴィン将軍も。彼の理解がなければあなたの計画も実行できなかったでしょう」


「はい。彼らの功績はわたくしよりも遥かに大きいです。もし彼らが……」


「違うわ」ミリエルは彼女を遮り、その声には一種偏執的な肯定があった。「この勝利はただあなただけのものよ、シミア。あなたがこの全てを一手で画策したのだから」


「でも、わたくしは重大な過ちを……」


シミアはまるで師に過ちを必死に打ち明けようとする学生のように、自分がカシウスをいかに軽信し、最終的にシャルを誘拐されるに至ったかの経緯をありのままミリエルに告げた。彼女がシャルが連れ去られ、自分が絶望に陥ったと話した時、ミリエルは顔色一つ変えずに彼女のそばに座り、そっと彼女のあの冷たい手を握った。


「大丈夫よ、シミア」ミリエルの声はまるで水が滴るかのように優しかった。「あなたが教訓を得たのであれば、カシウスの逃亡もまた受け入れられる代償と言えるわ」


ミリエルの接近が、慣れ親しんだ彼女特有の紅茶の香りをもたらし、シミアを優しく包み込んだ。彼女はミリエルのあの理解と慰めに満ちた銀色の瞳を見たが、しかしやはり堪えきれずに首を横に振った。


「でも……最後にわたくしは決心を下すことができませんでした。なにせカシウス先生は……彼はわたくしに多くのことを教えてくださいましたから」


その言葉を聞き、ミリエルの心中の、あのたった今鎮まったばかりの「嫉妬」という名の炎が、また「ボッ」と音を立てて燃え上がった。


「そう……あなたはまだ、あの『先生』のことがとても好きなのね」


「好きではありません!」シミアは急いで弁解した。「わたくしはただ……彼がわたくしを裏切ったという個人的な理由で、彼の命を奪いたくなかっただけです」


シミアのあのもじもじとした、まるで何かを庇っているかのような様子を見て、ミリエルの心中の炎はますます燃え盛った。


(またカシウス……なぜこんな時にあの男の名前を出すの?)


「その話はもうやめにしましょう」彼女は強引に話題を切り替えた。「そうだわ、帰りの道中、エグモンド家で数日間泊まったそうね?」


「ええ、トリンドルがとても親切で。皆、あの数日間はとても楽しく……」


「皆……」


ミリエルはその言葉を呟いてソファから立ち上がった。彼女はシミアに背を向け、その声はどこかくぐもって聞こえた。


(トリンドル、皆……どうしてあなたの口から出るのは他の人ばかりなの? まさかあなたは、王都のことが……私のことが、知りたくない、とでも言うの!)


「シミア、今日は王宮に泊まっていきなさい。私は……今回の辺境で起こった全てのことを、じっくりとあなたから聞きたいの」


「申し訳ありません、ミリエル」シミアは困ったような顔をした。「実は今夜はトリンドルと約束がありまして。彼女に魔法について詳しく教えてもらいたいと思っているのです」


「トリンドル?」ミリエルの肩が気づかれないほど微かに震えた。「私の魔法は彼女よりもずっとすごいわよ」


「存じております。しかし……すでに約束を。本当に申し訳ありません、ミリエル」


その丁寧だがこの上なく断固とした拒絶を聞き、ミリエルはようやく振り返った。彼女の顔にはすでに再び、あの完璧な女王としての微笑みが掛けられていた。


(トリンドルとの約束でさえ、私の誘いより重要だというの……)


「分かったわ。それなら無理強いはしない。でもあなたは遠路はるばる来たのだから。せめて私が自らあなたのために淹れた紅茶を一杯飲んでからお行きなさい?」


「は……はい」


ミリエルが去っていく背中を見て、シミアの心中に何とも言えぬ悲しさが込み上げてきた。彼女はどうも今日のミリエルは少しおかしいと感じていた。


彼女は茶几の上の本を手に取り、自分の注意をそらそうとした。それは国家経済に関する理論書だったが、しかし本の中のあの難解な理論と見慣れない名詞が彼女に一陣の目眩を感じさせた。彼女はまた別の本に持ち替えた。それは十一英雄に関する哲学的な分析……同じように理解し難かった。


(普段、ミリエルはこんな本を読んでいるの?)


彼女がとりとめもなく考えていると、今までどの時よりも濃厚で甘美な紅茶の香りが彼女の鼻腔に流れ込んできた。彼女は本を置き、ミリエルが一杯の湯気の立つ紅茶を手に微笑みながら彼女に歩み寄ってくるのを見た。


シミアは紅茶を受け取った。その滑らかな茶湯は清らかで透き通っており、口に含むと、魂さえも伸びやかになるような奇妙な香りが瞬時に口の中に弾け飛んだ。


「ミリエル……ごめんなさい。わたくし、来てからずっと自分の話ばかりしていたようで」


ミリエルはまるで驚いたかのように彼女を見た。


「え?」


「カシウス先生の件、ずっとあなたに謝りたいと思っていました。あなたが真っ先にわたくしに注意してくださったのに、わたくしは……わたくしは独りよがりにそれを心に留めず、結果的に大失敗を犯してしまいました」


ミリエルは空っぽの茶杯を見て、しどろもどろに言った。「い、いいのよ。あの時は私も実は何の根拠もない推測だったのだから」


「それからミレイユ・ルルトの件も。あなたの立場からすれば、彼女を残しておくことは禍根となるかもしれないのに、わたくしは……」


「シミアを信じているわ。でなければ同意などしない」


「今日……わたくしはあなたを不機嫌にさせてしまいましたか?」


ミリエルはシミアのそばに座り、あの芳醇な紅茶の香りがシミアを完全に包み込んだ。彼女は自分がまるで温かい海の中に沈んでいるかのように感じ、少し眩暈がして、身の傍らの、いつも余裕のある笑みを浮かべていた顔が、今しかし真っ青になっていることに全く気づかなかった。


「……」


「ミリエル……」シミアはまだ何か言おうとしたが、抗うことのできない疲労感が猛然と彼女の全身を襲った。目の前がぐるぐると回り、脳内が真っ白になった。


彼女の体は糸の切れた木偶のように、力なく後ろへと倒れていった。


一双の柔らかな手が、しっかりと彼女を支えた。


ミリエルはシミアの少し茶の染みのついた唇と、疲労と薬効で赤らんだ頬を見て、ついに自分の感情を抑えることができなくなった。


「シミア……ごめんなさい……」彼女はシミアの力ない体を固く懐に抱きしめ、泣き声交じりの震える声で彼女の耳元で囁いた。「あなたの許しを請うつもりはないわ……私はただ……あまりにも、あまりにもあなたに、私一人だけのそばにいてほしかっただけなの……」


「今日だけ……今日一日だけでも、私のそばから離れないで。お願いだから」


シミアの体は制御不能に微かに震えた。ミリエルはとうにこの薬の「欠陥」について聞いていた。シミアの硬直した反応から、彼女は彼女の体と意識がもはや彼女自身のものではなくなったことを悟った。


シミアのあの無抵抗な、苦痛の中に一筋の朦朧とした表情が混じった様子を見て、ミリエルの内心は罪悪感の混じった巨大な狂喜に飲み込まれた。


彼女はごくりと唾を飲み込み、抑えきれない衝動が心頭に込み上げてきた。


(そうだ……私は間違っていない……)彼女は心の中で自分に言い聞かせた。


(シミアは疲れすぎている。彼女はいつも全てを自分の肩に背負いすぎている。私はただ彼女を助けているだけ……彼女が全ての警戒心を解き、私のそばで本当に何の気兼めもなく一度休めるようにしてあげているだけ……)


「これからあなたをベッドに運ぶわ。動いてはだめよ」


シミアの喉から、ほとんど聞こえない同意を示す音節が漏れた。


ミリエルは彼女を横抱きにした。その想像よりも遥かに軽い重さに、彼女の心中は痛んだ。彼女は慎重に、彼女を自分のあの柔らかい大きなベッドの上に置いた。


シミアの体は寝具に触れたその瞬間、まるで庇護を求める小動物のように、わずかに内側へと縮こまった。


ミリエルは彼女のあの無防備な寝顔を見て、内心この上なく葛藤した。


(……全部あなたのせいよ)彼女は自分の行為に、最後の、そして最も完璧な言い訳を見つけ出した。


(あなたがいつも私の気持ちを顧みないから。あなたがいつも他の女の名前を口にするから。私も……あれを使わざるを得なかったのよ)


彼女は自分の制服のリボンを解き、あの学生という身分を象徴する制服を滑らかな肩に沿って床へと滑り落とさせた。


そして彼女は躊躇いなく、あの彼女と彼女の騎士だけに属するベッドへと這い上がった。

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